日台間の草の根交流の拡大
2018年7月25日 WEDGEInfinity 岡崎研究所
7月7日、台湾の高雄市で第4回「日台交流サミット」が開催され、台湾のTPP参加への支持を含む、日台間の
交流拡大を謳った宣言が採択された。「日台交流サミット」は、日台の地方議員の交流を目的とするものであるが、
頼清徳・行政院長(首相)や陳菊秘書長(官房長官)も参加した。台湾の行政院の発表によれば、頼行政院長の
発言の概要は以下の通りである。
台湾と日本はともに地震頻発国として、災害救援、緊急対応、地震や台風などの自然災害の軽減において、
積極的に協力し得る。日台が、「新南向政策」(台湾の東南アジア重視政策)の対象国への関与、
二国間友好関係の強化、国際社会の平和と繁栄の支援において、共同の取り組みをすることを呼びかける。
トランプ米大統領のインド太平洋戦略、安倍総理のインドおよび東南アジアへの積極的な関与、蔡英文総統の
「新南向政策」を踏まえ、台湾と日本が将来、「新南向政策」の対象国において産業と経済発展の分野で協力を
進展させることに期待する。
日本政府と日台友好議員連盟が、TPP11加盟交渉の第2ラウンドの席に台湾が着くことを支持してくれることを
希望する。それは、台湾と日本が経済的発展の促進において協力する更なる機会をもたらすだろう。
謝長廷(元行政院長)の台北駐日経済文化代表処駐日代表への任命以降、台日関係は着実に緊密化している。
昨年、両国は32の友好協定を締結し、台湾側から14人の市長・県長が訪日、日本側からは23人の市長・県知事が
訪台した。また、646万人の民間人が相互に往来した。その数は、今後増える一方であろう。
利害の一致と国民感情の後押しも
今回の「日台交流サミット」には、日本の地方議員323人を含む、過去最多となる計500人以上が参加した。
日台間の交流の拡大をよく示す事例であると言える。
頼行政院長は、日米のインド太平洋戦略が台湾の「新南向政策」と方向性を同じくすることを指摘し、
日本が「新南向政策」への関与を深め、さらにTPP11への台湾の参加を支援することに期待を示している。
中国への経済依存が問題となっている台湾としては、当然の立場である。日本としても、台湾経済の対中依存軽減、
台湾の孤立化阻止は、インド太平洋戦略にとって重要であることは、理解していないはずがない。
こうした利害の一致に加え、草の根交流を通じた両国民の相互の良好な感情がある。
頼行政院長は、「日台交流サミット」においても、2月の花蓮地震の際の日本の各界からの支援に感謝を改めて表明し、
最近の大阪地震や西日本の水害へのお見舞いを述べた。
日台関係は利害の一致と国民感情の後押しを受け、経済関係を中心にますます緊密化すると思われる。
最近、中国は台湾の若者をターゲットに、学校交流などを通じて台湾人としてのアイデンティティを薄め、
中国に親近感を持たせるよう工作しているという。日本政府の政策としてどうこうする類の話ではないが、
経済関係に加え日台間の若者の交流がさらに盛んになれば、台湾への心強い支援になろう。
それはひいては日本自身のためにもなる。日台間の草の根交流の拡大ぶりを見ると、自然発生的にそういう
流れになると期待される。
出典:‘出席第四屆台日交流高峰會 賴揆:盼增進合作交流 造福國際社會’,2017年7月7日、中華民国行政院
https://www.ey.gov.tw/Page/9277F759E41CCD91/6642a92e-f670-43a0-bdd2-d76eeaceb84c