【歴史戦】「徴用工」写真は戦後撮影、「筑豊炭田の日本人」
2019.4.3 21:24
自身が昭和36年に福岡県で撮影した炭坑内の男性の写真パネルを手にする写真家の斎藤康一氏=東京都新宿区(奥原慎平撮影)
いわゆる徴用工問題をめぐり、長崎市の端島(はしま)(通称・軍艦島)で過酷な戦時労働を
強いられた朝鮮人だと韓国で流布している写真が、実際は戦時徴用とは関係がなく、昭和36年に
福岡県内の炭坑で撮影されたことが3日、分かった。撮影者が産経新聞の取材に明らかにした。
(奥原慎平)
天井の低い坑道に横たわりながら、ツルハシを使って掘り進む男性が被写体となった写真は、
日本写真家協会名誉会員の斎藤康一氏(84)が撮影した。斎藤氏によると、昭和36年夏、
筑豊炭田(福岡県)を取材で訪れ、炭坑内で採掘している男性を撮ったという。写真は週刊誌
「新週刊」(36年10月19日号)=廃刊=などに掲載された。
戦後16年が経過していたため戦時徴用はあり得ず、斎藤氏は男性について「日本人だった」と
証言した。
韓国メディアや韓国の書籍は、軍艦島での強制労働に動員された朝鮮半島出身者の実態を
裏付ける資料として、この男性の写真を多用している。戦時動員した日本の加害性を訴える目的で
設立された韓国・釜山の国立日帝強制動員歴史館もパネル展示した。
最近では韓国紙・朝鮮日報が昨年12月16日付(電子版)で「強制連行」について報じた記事で
男性の写真を掲載し、「採炭作業を行う朝鮮人」と報じた。
いずれも斎藤氏に無断で使用された。斎藤氏は2017年7月に軍艦島を舞台とした韓国映画
「軍艦島」の公開後、関係者を通じて自身の写真が誤用されていることを知ったという。
当時、映画の広告映像は米ニューヨークのタイムズスクエアで上映され、映像製作に関わった
韓国の大学教授は誤りを認めた。
斎藤氏は「自分が撮影したのは懸命に働く日本人だ。韓国側は自分たちの主張に都合の
いいように扱っている。抗議する気にすらならない」と語った。
徴用工問題に詳しい九州大の三輪宗弘教授(経営史)は「韓国側では朝鮮人が過酷な労働を
強いられたというイメージが先行し、十分な検証もせずに(写真に)飛びついてしまったのだろう」
と話している。
韓国側が「強制連行」の証拠として主張する写真資料をめぐっては、韓国教育省が3月21日、
小学校教科書に徴用工として掲載した写真の人物が日本人だったと認め、訂正する方針を
明らかにした。
産経新聞は平成29年4月12日付朝刊「軍艦島 荒唐無稽な印象操作」の記事で、この男性の
写真を収めた『目で見る筑豊の100年』(郷土出版社)の説明に基づき「明治中期の筑豊の炭坑の
様子を写したものだという」として掲載した。その後の取材で撮影者が斎藤氏だったと判明した。