ソウルの中心で親日を叫ぶ…「徴用工判決は歴史歪曲」韓国人研究者が国連へ
朝鮮人労働者は「奴隷」との韓国の通説に反論…国連でも主張へ
本当に「奴隷」だったのか?
韓国での「徴用工」のイメージは「奴隷」「強制連行」「給与は無いか少額」「日本人との待遇差別」
「ナチスによるユダヤ人強制労働と同じ」という事でほぼ固まっている。これらのイメージを
当たり前の前提条件として報じているメディアが大半だ。
今回の集会の主催者の1人である、落星台経済研究所の李宇衍(イ・ウヨン)研究員は、
こうしたイメージ・定説に疑義を呈している。李研究員によると、このイメージが固まったのは
在日朝鮮人の歴史学者で、朝鮮大学校に勤務していた朴慶植(パク・キョンシク)氏による一連の
研究だという。
朴氏は1942年に日本の労働科学研究所が行った調査をまとめた「半島労務者勤労状況に関する調査報告」
から、北海道のある炭鉱の賃金分布に注目した。それによると、賃金が50円未満の日本人は17.6%に
留まるにも関わらず朝鮮人は75.0%に上り、朝鮮人の大半が安い賃金で働かされていたという。
朴氏はこのデータを根拠に「民族差別」だと主張していた。
しかし、李研究員はこの主張を真っ向から否定する。李研究員は日本国内46か所の炭坑や鉱山での
労働者の賃金データを分析して、日本人労働者と朝鮮人労働者との待遇の差や、朝鮮人労働者の賃金の
実態について検証した。
李研究員の論文「戦時期日本へ労務動員された朝鮮人鉱夫の賃金と民族間の格差」によると、
1939年以降の「募集」、1942年2月以降の「官斡旋」、1944年9月以降の「徴用」という動員の
形態の違いに関係なく、日本人と朝鮮人には同じ賃金体系が適用されていたという。
その賃金体系は、熟練度によって給与が増減する仕組みだった。炭坑や鉱山での勤続年数が長ければ
熟練度は上がり、より多くの鉱物や石炭を採取できる事から、給与も上がるのだ。
では、朴氏が「民族差別」の証拠としていた北海道の炭鉱では、日本人と朝鮮人の熟練度、
つまり勤続年数の違いはどうだったのだろうか?李研究員によると、この炭坑では日本人の57.2%が
勤続2年以上だったが、朝鮮人の89.3%は勤続年数が2年未満だった。つまり、日本人の大半が
熟練労働者であり、朝鮮人のほとんどは非熟練労働者だったのだ。日本人の大半が高給で、朝鮮人の
ほとんどが比較的薄給だった理由は、民族差別ではなく、熟練度の差だった事が分かる。
実際に、日本人と朝鮮人で熟練度の分布がそれほど変わらない別の炭坑では、給与の分布でも日本人と
朝鮮人に大きな差は無かった。
李研究員は朴氏の研究について、「資料に関する一方的解釈」「全体を概観せずに、一部分のみを
抜き出し、予断を入れ込み、早まった結論を出した」と痛烈に批判している。
「日本人との差別」という韓国での定説に疑問符を付けた形だ。
「手元にはほとんど金が残らなかった」という元朝鮮人労働者の証言もある。
しかし、この点についても李研究員は強制的な貯蓄や食費、その他の雑費を差し引いても、賃金のうち
平均43.5%が自由に使用できたと主張する。稼いだ金の一部を朝鮮半島で暮らす家族へ送金していた
労働者も多かった。こうした貯蓄や送金は、日本近海の戦況が激しくなった1945年3月から
4月以前には、きちんと支払われ、送金も行われていたという。韓国では定説になっている「奴隷」の
イメージとは相当距離がある。
「奴隷」イメージが韓国最高裁判決に影響か
李研究員は「国家総動員という総力戦の状況で何より重要な事は増産であった。そのためには労務者に
誘因(インセンティブ)を提供しなければならない。戦時下の貨幣の増刷と戦時産業に対する
支援により企業は豊富な資金を持っている状況で、金銭的な理由で生産能率と関係なく朝鮮人を
差別する理由は無かったはずである」と分析している。
こうした「奴隷」イメージは、日本製鉄(旧新日鉄住金)に賠償支払いを命じた2018年10月の
韓国最高裁判決にも影響を及ぼしたと李研究員は語る。「判決の根拠として、4人の原告が月給を
受け取れなかった事が上げられている。大法院が「奴隷」「強制連行」、「賃金無し」などの
定説通りの歴史認識に引きずられていた。しかしそのような歴史認識は事実と違う。歴史歪曲を
根拠にした判決で、根本的に問題がある」
日本製鉄に賠償支払いを命じた韓国最高裁 2018年10月
国連で「差別は無かった」主張へ
李研究員は7月、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で日本の民間団体「国際歴史論戦研究所」が
企画したシンポジウムに参加する予定だ。テーマは、世界遺産となった長崎県の「軍艦島」で
朝鮮人労働者に対する差別的取り扱いがあったのかどうか。シンポジウムでは「朝鮮人を意図的に
危険で劣悪な作業に配置し、差別したという通説は事実と異なる」などと主張する予定だ。
シンポジウムへの参加が韓国で報じられると、ネット上には、「韓国入国禁止にしろ」
「本当に韓国人か?」「売国の極致」などと書き込まれたが、李研究員は気にした様子もない。
むしろ「定説への反論が出てくれば、それに対して根拠を持って反応が出てこなければならないが、
韓国は知識社会が薄く、私がこのように批判しても、反論がない。このことこそが問題」と語る。
そんな李研究員に、いわゆる徴用工を巡る問題の解決法も聞いてみた。
「問題は韓国が処理しなければならない。朝鮮人の労働者の歴史的な事実について韓国政府は
きちんと調べる必要がある。それと同時に日本政府と交渉すべきで、日本は仲裁や国際司法裁判所
への提訴に固執しない方が良い」
韓国では極めて少数派である李研究員の意見を韓国政府が聞くとは思えないが、韓国政府の選択肢は
少なくなってきている。日本政府が求めている日韓請求権協定に基づく仲裁手続きに応じるのか、
6月18日の期限までに韓国政府から回答があるのかが注目される。