アングル:2030年中国W杯あるか、FIFAと「相思相愛」
だが世界のサッカーファンが、W杯中国大会はすでに実現済みと考えたとしても、無理もないのでは
ないだろうか。
テレビを通して世界中の視聴者が目にするロシア各地のスタジアムで表示される広告には、これまでの
独スポーツウエアや米清涼飲料に加えて、ほとんどの人には判読不能な中国語で書かれたメッセージや
見慣れないロゴが躍っている。
今回のロシア大会には、自国チームは出場していないものの、中国から大勢のサッカーファンも訪れている。
同大会の開始前、中国では4万枚を超えるチケットが売れた。これはドイツの売れ行きの3分の2に相当し、
英国での販売を上回る。
中国では習近平国家主席の下、サッカーが急成長しており、中国ブランドは自国の視聴者に訴えるため
W杯を利用している。同時に、多くの中国企業は新たに市場を開拓するための手段としてW杯を見ている。
ロシアで中国家電大手「海信(ハイセンス)」(600060.SS)の副ゼネラル・マネジャーを務める
エリ・ラビ氏は、FIFAワールドカップのスポンサーになることは、海外でのブランド構築戦略の
一環だと話す。「ハイセンスの未来は中国の外にある。中国では、テレビ市場のシェアで首位を占め、
非常によく知られたブランドだが、10年前に世界市場に進出すると決めた」
「ますます多くの中国ブランドやファンが、サッカーに魅了されている」と、PR・コンサルティング会社
ヒル・アンド・ノウルトン・ストラテジーズのアンディ・サザーデン氏は今年のW杯についてこのように
述べた。
W杯への中国の関心は、前任者の汚職スキャンダルを受けて減少した収入をジャンニ・インファンティノ
FIFA会長が埋め合わせる一助となっていると、調査会社ニールセンスポーツのグレン・ロベット氏は
指摘する。同社は、FIFAに入る後援金を調べている。
ニールセンスポーツの試算によれば、FIFAは今年の予算編成において、スポンサー収入が予想を
2億ドル(約220億円)上回り、16億5000万ドル(約1820億円)に達するという。
「今回のW杯への中国企業による投資が増加したことで、FIFAは当初のスポンサー収入予想を
上回ることができるだろう」とロベット氏は言う。
「FIFAにとって、中国市場の重要度は増している。中国でサッカーへの関心が高まっていることを
考えると、ワールドカップに関わる中国ブランドが増えているのは当然のことだ」
本記事について、FIFAはコメントしなかった。
<将来の開催国>
FIFAは先月、2026年W杯について、米国・カナダ・メキシコの共同開催とすると発表。
2022年の次回大会は中東カタールで開催されることがすでに決まっている。
FIFAも中国も、2030年大会を中国で開催する意向については確認しないだろうが、
習主席は昨年、インファンティノFIFA会長に対し、いつかW杯を自国で開催したいと伝えた。
これに対し、インファンティノ会長は「将来、多くのプロジェクトで協力」できることを願うと応えた。
FIFAは、世界人口の6割がサッカーに関わることを目標としており、同人口の2割を中国が占めて
いることを考えれば、同国との協力は鍵となる。
前出のハイセンスは、FIFAがW杯のスポンサー企業として認める5社に含まれる。ハイセンスのほか、
中国企業はスマートフォンメーカーのVivo(ビボ、維沃移動通信)と蒙牛乳業の計3社が選ばれている。
認知度の上で、他の2社バドワイザーとマクドナルドとは比較にならない。
ほかにも、メンズウエアのブランド「大帝」は先月、FIFAの地域スポンサーに、
また、不動産開発大手の大連万達が7社あるFIFAパートナーの1つに選ばれている。
ロシア大会ではこうした中国企業の広告が目立った特徴となっている。
「サッカーは世界でもっとも人気のあるスポーツだ」と、大連万達のスポーツ事業の責任者ヤン・ヘンミン
社長は北京で語った。「サッカーには人々やコミュニティーを団結させるユニークな力がある。まさに
それこそ、わが社が今年だけでなく2030年のW杯までFIFAのパートナー企業になった理由だ」
「FIFAと協力することは、中国や世界中の人たちに真の発展と変化をもたらす」と同社長は語った。