廃止フロンガス 中国から大量放出。 オゾン層回復遅れ懸念。
2019.05.30 NHK サイカル Journal
オゾン層を破壊することから国際的に全廃したはずのフロンガスの一種が、中国から大量に放出
されていることが、国際研究グループの分析で分かりました。オゾン層の回復の遅れが懸念
されています。
ところが、世界の観測データを見ると2012年ごろから大気への放出量が増加に転じていて、
イギリスのブリストル大学や国立環境研究所などは、特に濃度が高い傾向にある沖縄県の波照間島と
韓国のチェジュ(済州)島のデータから、大気の動きを分析して放出源を推定しました。
国立環境研究所
その結果、中国の山東省と河北省を中心に大量のフロンガスが放出され、地球全体の増加量の
少なくとも4割から6割を占めることが分かりました。
下記図:| NAME-HB反転における派生CFC-11フラックスの空間分布。 a、2008〜2012年の平均排出量。 b、2014〜2017年の平均排出量。 c、2008〜2012年から2014〜2017年までの排出量の変化。 他の反転の等価プロットは、拡張データ図Fig7に示されています。黒い三角形と円は、それぞれ五山駅と波照間駅を示しています。 ハッチングされた領域は、観測値の感度が低いドメインの領域を示し(拡張データ図2)、したがって、そこから得られる放射は高い不確実性を持ちます。 その結果、メインtexで引用されている値には、ハッチングされていない領域の放出量と放出変化のみが含まれます。
研究グループは、全廃前に製造されたフロンガスの放出量が急に増えるとは考えにくく、
まだ製造が続いていた可能性が高いとしています。
また、アフリカや南アメリカなどは観測データがないため、中国以外にも放出源がある可能性は
否定できないとしています。
オゾン層は、有害な紫外線を遮って生態系を保護する役割があり、フロンガスの国際規制によって
2060年代には破壊が深刻になる前の水準に戻るという予測もありますが、今回明らかになった
大量放出による回復の遅れが懸念されています。
研究に加わった国立環境研究所の斉藤拓也主任研究員は「今回の結果を国際的な枠組みの中で
進められている調査に役立ててほしい」と話しています。
この研究結果は、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」に掲載されています。
※掲載された論文はこちらから(※NHKサイトを離れます)
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1193-4