「政治はもちろん、経済・社会から世界の動向まで、鋭い視点で切り取り、時代の深層を抉り出す力、さらにそれを明解な分析と分かりやすくテレビで伝えることができる力。この双方を備えた、稀有なジャーナリストといっても過言ではない」
 
 
 まさに、べた褒め。恥の感覚を忘れた自画自賛と言ってもよい。我田引水、誇大広告、虚偽宣伝と評してもよかろう。以下、そう評する理由を述べる。

  岸井成格。一九四四年、東京生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、毎日新聞社に入社。ワシントン特派員、政治部副部長、論説委員、政治部長、編集局次長、論 説委員長などの要職を経て、〈記者のトップである主筆を3年間務めてきた〉(TBS)。いまもアンカー業の傍ら、毎日新聞特別編集委員(役員待遇)を兼ね る。

 TBSに加え、“毎日新聞の顔”と言ってもよい。事実、毎日新聞社の公式サイトは「情報番組などにコメンテーターとして出演するなど、毎日新聞の“顔”として多くの人におなじみの論客陣」のなかで岸井をトップで紹介している。

 新聞「記者」、それも論説委員長や主筆まで務めた毎日の“顔”にしては著書が少ない。単著は『大転換──瓦解へのシナリオ』(毎日新聞社)だけ。対談本を含めた共著が三冊。編著を入れても合計七冊しかない(国立国会図書館サイト検索)。

  問題は量より質だ。最新刊(二〇一三年三月刊)は、佐高信との対談『保守の知恵』(毎日新聞社)。なかで安倍晋三総理や閣僚を「タカ派」と断じて呼び捨 て、揶揄誹謗している。政治家に限らない。自称「保守の知恵」を語りながら、いわゆる「保守」陣営への罵詈雑言を重ねている。
 
 
岸井氏と佐高氏の恥ずかしい誤解
 
いまに始まった手法ではない。同書は、二〇〇六年発刊の『政治言論』(毎日新聞社)の続編に当たる。
同じ対談本で、相手はもちろん佐高信。
なかで佐高が
「偏狭なナショナリストが晋三の周りにはたくさんいる」「たとえば岡崎久彦なんていうのも入っているわけでしょう?」と訊く。