EMERALD WEB≪拝啓 福澤諭吉さま≫

政治・経済・生活・商品情報などさまざまな話題で情報を発信してます。

韓国の米軍タウン、ソウル中心部で消滅へ 。龍山の米軍基地移転で朝鮮戦争以来の歴史に幕

2019-09-09 12:14:08 | 軍事・兵器・訓練演習・自衛隊

韓国の米軍タウン、ソウル中心部で消滅へ

龍山の米軍基地移転で朝鮮戦争以来の歴史に幕

 

 【ソウル】ソウルの下町・龍山(ヨンサン)にある米軍タウンは米国人のオアシスだったが、

その終わりが近づいている。さび付いたゴールポストが、閉鎖されたハイスクールを見下ろしている。

見た目がよく似た平屋の米軍住宅の前庭では、芝生が茶色く変色している。ようやく2人並んで歩ける

程度の細い歩道は、ひび割れが目立ち始めた。


 77歳の退役軍人のジョン・ノウェル氏は「私の故郷が目の前で死んでいく」と語った。ノウェル氏が

龍山に引っ越してきた1965年当時は、ソウルの街路を牛車がのんびり進んでいたという。

 今年末までに、2万人以上の米国軍人・家族のほぼ全員が龍山の駐屯地内の宿舎から出ていく。

彼らは110億ドル(約1兆1650億円)を投じて新たに建設されたハンフリーズ基地に移動する。

ソウル南方約40マイル(約64キロ)に位置する同基地は、米国の海外軍事基地として最大規模だ。

ハンフリーズ基地


 韓国が龍山の米軍基地に別れを告げようとしている今も、朝鮮半島は依然として、1950~53年の

朝鮮戦争からの大規模な米軍駐留を正当化する軍事的緊張に直面している。

 朝鮮戦争の終結を公式に宣言する和平協定は調印されていない。北朝鮮は、8月に短距離ミサイルの

発射実験を繰り返したように、挑戦的姿勢を継続している。最近行われた米韓合同軍事演習は、

北朝鮮による突然の攻撃への備えを強化するのが目的だった。北朝鮮との核交渉は、行き詰まったままだ。

 

龍山基地の閉鎖は、韓国の首都ソウルの中心部にある小さな米国人の街に幕を引くことを意味する。

ハンフリーズ基地への移転は、各地に散らばっていた米軍基地を1カ所に統合する動きの一環であり、

米軍を北朝鮮の砲撃の射程範囲内から遠ざけるものだ。


 龍山に置き去りにされた人々の中には、基地移転で苦難に直面している者もいる。

 龍山近くのカントリーミュージック・バー「グランオールオプリー」の壁には、セオドア・

ルーズベルト氏の肖像画がかかっており、米ドル紙幣に覆われた南部連合旗が掲げられている。

バーのオーナーのキム・サムスクさん(78)は「常連客をたくさん失った」と語る。キムさんは

朝鮮戦争で戦った米国軍人の夫と死別した。彼女は、バーが閉店に追い込まれるかもしれないことを

懸念している。


 長い間、韓国における欧米文化の中心地の役割を担ってきた龍山の周辺地域は、米兵向けの店が多く、

いかがわしい雰囲気を持つ。かつてはマヨネーズなど、基地から持ち出された米軍物資の闇市が栄えて

いたほか、米兵が多く訪れる売春宿があった。


 しかし、この地域は、韓国経済が活況を呈し、繁栄がもたらされて国際的な認知度が上がるに伴って

浄化された。龍山は、タコベルのブリトー、スーパーボウル(アメリカンフットボールのプロリーグ

優勝決定戦)のパーティー、ドクター・スースの絵本などの独占地としての地位が色あせていく様子を

見守ってきた。


 龍山は、ニューヨークのセントラルパークの3分の2ほどの広さの地域だが、現在は高層マンションと

光り輝くオフィスビルに囲まれている。基地から何ブロックか離れると、米国の中東料理チェーン

「ハラルガイズ」やパンケーキチェーン「オリジナルパンケーキハウス」で食事ができる。

 

 米国を感じることのできた龍山が韓国の歴史の中に埋もれていくなか、別の部分が文字通り立ち

上がりつつある。

 梨とキュウリで知られる静かな海辺の町、平沢(ピョンテク)にあるハンフリーズ基地は、龍山基地の

ほぼ7倍の広さを持つ。このためには、かつて小規模な前哨基地だったところを地理的に造り変える

必要があった。基地の土地は、洪水を防ぐために8.5フィート(約2.6メートル)かさ上げされた。

また、ニューヨークからセントルイスまでの距離に匹敵する1000マイル(約1600キロメートル)近くの

通信ケーブルが敷設された。基地の人口は、じきに4万人を超すとみられている。

 ハンフリーズ基地


 ハンフリーズ基地に勤務するスコット・テーラー陸軍大佐は、「目標は龍山にあったものを再現する

ことだ」と話す。

 同基地には12階建ての新築アパート群があるほか、バーベキュー用グリルや野球場も設置されている。

5つあるショッピングモールの1つでは、サプリメント専門店の「GNC」でビタミンのサプリメントを

買うことも、アウトドア用品店「ティンバーランド」でハイキングの本を買うこともできる。

ファストフードチェーンの「チャーリーズ」ではフィリー・チーズステーキのサンドイッチ、

「マンチュー・ウォク」では米国の中華料理の定番「ツォ将軍のチキン」にありつくことができる。


 このところ問題含みとなっていた韓国との同盟関係にとって、龍山からの移転は歓迎すべき動きと

なっている。韓国が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄すると通告したことは、

これを北朝鮮、中国、ロシアに対する米国の抑止力を阻害する動きとみなす米国をいら立たせるもの

だった。またトランプ大統領は韓国に対し、米軍駐留費の負担増額を繰り返し要求している。


 それでも世論調査によれば、韓国人の3分の2以上が米軍の駐留を支持している。韓国に駐留経験の

ある米国人は韓国を第2の故郷と考えている。

 龍山は来年中にも韓国に返還される見込みだが、ごく一部は引き続き米国が管理する。

在韓米大使館はこの敷地への移転を計画している。計画が完了すれば、外交関係の施設と米軍管理の

ドラゴン・ヒル・ロッジが移転することになる。同ロッジのレストランでは(米メーン州産の)

メーン・ロブスターが提供され、利用客は米ドルの現金で支払うことができる。

 

一方、韓国側は、合わせて115年にわたり日本と米国の管理下にあった龍山の利用方法について議論を

続けている。一部の地元住民は龍山がソウル中心部にあることから、高級住宅向けの一等地の不動産に

なると主張しているが、韓国当局者は別の構想を持っている。

 金賢美(キム・ヒョンミ)国土交通相は昨年、メディア向け会合の席上、「龍山公園として生まれ

変わるだろう」と語った。提案には公園内の人工湖や龍山地区を通る新たな地下鉄の建設などが

含まれていた。

 

 龍山で50年以上を過ごした米退役軍人のノウェル氏は、基地の閉鎖を米国の小さな工場の町の消滅と

重ねている。「そう、いずれも過ぎ去った時代だ。それだけのことだ」


北朝鮮を抑止するための最も古く、最も戦略的な米国の基地が閉鎖 


  
 人気ブログランキング