銀メダル獲得、それはそれで確かに素晴しい事で、「良くやったね~」と賛辞の言葉が飛び交うのは当然でしょう。選手達には惜しみない拍手を送ります。
しかし、本当に「金メダル」は獲れないチームだったのでしょうか? あれが「なでしこ」の本当の『総力』だったのでしょうか? 私にはどうしてもそうは思えません。「なでしこ」の得点経過を振り返ってみます。
先ずはカナダ戦。2-1で勝った試合ですが、ここでゴールしたのは左サイドから右ゴールネットを揺らした川澄の芸術的なシュート。そして宮間が合わせたゴール。続くスウェーデン戦、南アフリカ戦は共に0-0のドロー。それでも決勝ラウンドに進み、対ブラジル戦では2-1と勝ちますが、シュートと呼べるものは28分、大野がクロス・バーに当てて入れた1本のみ。2点目は澤の早いリスタートからのゴールに向かうロングパス。この早いリスタートをアメリカは予測していなかった為なのか、大きなスペースが出来ていました。そこにたまたま大儀見しかいなく、ゴールへとボールを追い駆け、軽く転がしただけでのゴール。まるで空き巣狙いの様な得点。あれで得点したとされるのですから、まさにラッキーとしか言い様がありませんね。そんな大儀見の性格をよく表したプレイは22分にも有りました。川澄からのパスを受けたものの、周りをガッチリと囲まれどうしようもなくなっていた時の事。そのすぐ近くに宮間と大野がいて、誰がどう考えても二人のどちらかにパスをするべきであったのに、大儀見は自分が得点する事だけを考えたのか、無謀とも言える不可解なシュートをするも当然外れ、ゴール前のチャンスを自ら逃してしまったのです。覚えている人もいる事でしょう。
次のフランス戦は2-1。阪口のまともなシュートが有り、あとの1点はやはりたまたまゴール前にいた大儀見が飛んできたボールに足を出してゴ-ルとなったもの。最後のアメリカ戦は誰もがまだ記憶に新しいところ。大野が力任せ(?)に放ったシュートが決まって1点。ゴール前に双方の選手が入り乱れていたところ、アメリカの選手がクリア・ミスをしてボールがころころと流れたのが、これまた大儀見の目の前。労せず足を出しただけの得点シーン。
つまり、対カナダ戦から最後のアメリカ戦迄の7得点のうち、まともなシュートと云うのは川澄・宮間・坂口・大野の4本だけ。決勝ラウンドに入って大儀見が3ゴールした事になっていますが、確かに数字として記録されたものはそうなるのでしょうけれども、実質的には「おこぼれ」に預かっただけの話し。それでも得点は得点だ・・という声も有るのは解りますが、しかし、実のところどうなのでしょうか? 現実に試合の中で自らの力量でもぎ取ったゴールではないのです。
試合に勝つ事が何より。解ります、それはそうでしょう。しかしその為に、いつの間にか『大宜味はポイント・ゲッター』という幻想を抱いてしまった事に、佐々木則夫は気が付かなくなってしまっていたのです。そう、それこそが「なでしこ」の敗北を招いてしまったのです。決勝ラウンドに入ってからは、或いは「金メダル」の懸ったアメリカ戦では、間違いなく大儀見は外すべきだったのです。冷静に見ていれば、得点能力が極めて低いという事がはっきりと判っていた筈なのです。
佐々木則夫のもう一つの誤認識は澤穂希についてです。18年程のキャリアは、事、現在の試合に関して、引き合いに出す必要性が無いもの。今目の前にいるただ一人の選手として見るべきだったのです。確かに過去に実績は有ったでしょう。そしてそれを追い駆けてきた「なでしこ」もいたでしょう。が、それが不必要な共同幻想を生み出してしまっていたのです。現在の澤は、もう既に「昔の澤」ではないのです。そこを見誤っていた監督・佐々木則夫の過失は大きいものが有ります。
最後の最後迄、誤った指揮のもとで戦い続けた「なでしこ」達。それでもオリンピック銀メダルというのは、やはりとても素晴らしい事です。このメンバーでの試合は二度と見る事は出来ないでしょう。そう思うと、尚更この「銀メダル」の重さ、そこに懸けた「なでしこ」達の思いがより強く伝わって来る様な気がします。
出来れば、澤・大儀見を下げ、安藤・丸山が入っている「なでしこ」を見てみたかったという思いが未だに残っています。それが紛れもなく「金メダル」への道だったのですから。 でも、もう終ってしまったのですよね。今は只々、束の間の夢と元気を与えてくれた素晴らしい女性たち、「なでしこ」の面々に感謝の気持ちを表すだけです。
みなさん、本当にお疲れ様でした。貴女達のロンドンへの道は決して忘れません。
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