密教と呪術が動かした日本史(武光誠著 リイド文庫 平成19年初版)
4,5年前は、ドイツから多くの観光客が高野山へ観光にお見えになった。最近ちらほらとドイツからまたお客さんが戻ってきている。想像するにドイツのテレビで高野山の特集をして大ヒットしたのではないかと思っている。ドイツは産業革命で他国に先を越されたので、せめて思想だけは勝とうとしたのか思想哲学に関しては先進国である。そのドイツのヒトが魅了されてはるばるやってくるのだから、密教と呪術に関しては知っておく必要があると思って読み始めた。密教が世界で残っているのは、チベットと高野山だけだという。チベットは足の便が悪いからどうしても見学するなら世界中で高野山しかなさそうである。
この本の冒頭 空海さんも若いころ修行したという「求聞持聡明法」の真言が紹介されている。(この真言は結構長いものでなかなか覚えきれない。)この真言を百万遍唱えるとどんなものでもすべて記憶することができる能力をもてるという。もし昔これを唱えておけば、大学入試の際には役立ったはずであるから惜しいことをした。首席合格首席卒業間違いなしである。百万遍は努力すれば何とか3年もあればできそうであるが、唱える場所や食べるものにまで独特なものがあるそうなので修行はあきらめざるを得ない。密教僧は、衆生救済のためにこのような修行をやるのだそうである。体力根性の要る修行である。
この本によると人々が呪術を信用しなくなるころ(多分室町時代のいずれかの時期だろうと想像されるが)僧兵の軍団を養ったという。多分傭兵に使ったのだろう。それまでは、呪術をいわば商売にしていたと想像される。京都で政争が起こるたびに儲かる。うまく勝つ方の依頼だけを受ける必要があるから時代を見る目は必要であったと推察される。良く儲かったと見えて運慶一派の出張所が高野山にあって、そこから美術品を購入している。(バチカンもそうだけど、どうやら成功した教団は美術品収集に向かうようである。)僧兵の軍団は比叡山でも養ったが比叡山の方は、荘園や琵琶湖の水運や京の金融に巨大な利権を持っていたために信長に焼き討ちされてしまった。高野山は利権が小さかったのと山の中まで軍隊を動かすのが大変なので、そんな目に会わずに済んだ。
この本を想像を逞しくして読むとここまで読めた。これから以降はわたしの想像だけど、島原の乱のあと高野山は大変であった。何しろ戦争がなくなったので僧兵の貸出先がなくなるし、人々は昔ほど呪術に興味がなくなった。そこで、高野聖という宣伝マンを日本中に派遣してお参りをすればどんなにいいことが起こるかをコマーシャルして、観光業として見事に復活した。旧国鉄がJRになって復活したということとは段違いの業態変化をして復活した。この案を出して実行した人は空海と同じくらい凄い人だと思う。歴史大河ドラマで主役にして放送してもらいたいものである。
最近は、遠くドイツにまで宣伝して成功を収めている。
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