映画 ジャンヌ・デュ・バリー 国王最後の愛人
ベルサイユを見に行くのは大変だから観光の代わりにお手軽に映画で見ておこうとして見に行ったが、深みのある映画であった。ヨーロッパの映画によくあるヒトの一生を二時間にして見せる。しかも庶民の出身から国王の愛人になりお決まりの宮廷内の女の闘争、最後はフランス革命に巻き込まれるところまでが二時間であるから、観客は体力をつけて臨まないといけない。
千七百年台後半の話であるからまだ三百年経っていないのに、理解できないことが一杯でここの予備知識が事前に入っているともっと楽しめるのだが。例えば国王の愛人になるのに、伯爵か侯爵かの夫人にならないといけないようである。男女の関係は社会制度によってとんでもなく変わってしまう。それは宗教や階層によるのだろうが、フランスの王様に生まれなくて幸せと思う。庶民というのも幸せでないから、どうもこれについては決定的にこれが幸せというのがなさそうである。この幸せは極めて個人的なものであるようである。(主人公の女性は果たして国王を愛することができて幸せであったのか)
わが国でも将軍の側室に八百屋の娘さんがなったということもあるそうだが、その時はきっとどこかの養女になったから行ったはずで、それを常識にしているからフランスの話を聞くと頭が混乱してそのあとの筋が追えなくなる。
それから当然ポンパドール夫人のように身の回りに詩人や学者を集めてサロンを作るとばかり思って見ていたが、宮廷を追い出されて修道院に幽閉される。(多分出里がいけないことが原因であろうが。)ここも予想に反した展開で頭が混乱する。それならフランス革命時には、命が助かるかと思いきやそうでもない、それでさらにこちらは混乱する。フランスに関する知識があれば楽しめたと思う。
見どころは、国王(権力)を愛して成り上がろうとして近づいたが、途中で本当にこの孤独な国王に同情し国王そのヒトを愛するようになる過程であろう。そこ見せ場だからじっくりやってほしかったが、すこし端折った感じであった。
時代によって男女の愛は異なっても、女同士の意地悪合戦は時代教養美醜と関係なく起こるものというのもサブテーマである。
映画の題は「国王を愛した最後の愛人」としないと、「国王の愛人」だけでは国王の権力を愛した女性を連想させるのでいけない。この女性は権力を愛したが、その最後には確かに孤独な国王に同情し愛情を持った人である。この愛情に言い知れぬこの女性の(国王もであるが)孤独がある。現代の都会に住む人々の人生の最大のテーマである。
狂言回しとしての執事ラ・ボルトの役の俳優さんは、表情としぐさで(もちろんセリフもあるが)全編に出演されていて見事である。脇役ながらこの映画の見どころになっている。久しぶりにいい映画を見た。
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