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『終末のフール』 伊坂幸太郎

2016年01月05日 22時09分00秒 | ■読書
「伊坂幸太郎」の連作小説『終末のフール』を読みました。


砂漠に続き「伊坂幸太郎」作品です。

-----story-------------
限りある生を、人はどう生きるのか。
「8年後に地球が滅亡する」と発表されてから5年。
世界中が大混乱に陥る中で、人々はどう生きるのか? 
仙台の団地に住む人々を主人公に、愛や家族、人間の本質を見つめる傑作連作集。

八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。
そう予告されてから五年が過ぎた頃。
当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にある。
仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちも同様だった。
彼らは余命三年という時間の中で人生を見つめ直す。
家族の再生、新しい生命への希望、過去の恩讐。
はたして終末を前にした人間にとっての幸福とは?
今日を生きることの意味を知る物語。
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8年後に小惑星の衝突により地球が滅亡することがわかり人類がパニックに陥った5年間が過ぎ… なんとなく平穏な状態が戻ってきた地球が舞台、、、

あと3年しか生きることができないという状況下、仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちが、自分の人生を見つめ直す物語(短篇集)で、以下の8篇が収録されています。

 ■終末のフール
 ■太陽のシール
 ■籠城のビール
 ■冬眠のガール
 ■鋼鉄のウール
 ■天体のヨール
 ■演劇のオール
 ■深海のポール
 ■解説 吉野仁



『終末のフール』は、10年前に長男「和也」を自殺により失い、その後、ギクシャクしていた関係を続けていた「香取」の家族… 父との諍いで息子の死の2ヶ月前に家を出て、不和が続いていた娘「康子」が実家を訪ねてきたことを機会に家族の絆を取り戻そうとする物語でした。

家族三人の絆は、きっと取り戻せたんだと思います。


『太陽のシール』は、10年間子宝に恵まれていなかった優柔不断な性格の「桜庭」と妻「美咲」の間に今頃になって妊娠が発覚… あと3年で地球が滅亡するとわかっていて、産むべきなのかどうかと二人は悩む物語でした。

双子だったようですね… 短い期間かもしれませんが、きっと四人で幸せな人生が歩めるはず。


『籠城のビール』は、過剰なマスコミ報道のせいで被害者だった妹「暁子」や母親を失った兄弟「虎一」「辰二」が、元アナウンサーの「杉田玄白」への復讐を果たそうとする物語でした。

しかし彼等はとんでもない肩透かしを食らう… 「杉田」家族は心中しようとしており、「杉田」を殺すことは「杉田」を喜ばせるだけと気付いた二人は復讐を断念。

無事に逃げられたかな… 二人が人生をやり直せることを祈ります。


『冬眠のガール』は、残された時間を死んだ父の書斎の本を読みつくすことに使う少女「美智」の物語でした。

両親が亡くなってから4年… 全ての本を読みつくした彼女は、中学時代の同級生に出会い、恋愛の話が出たのをきっかけに「恋人を見つける」という新しい目標を立てて候補者を考える。

素敵な相手はみつかったのかな。


『鋼鉄のウール』は、16歳になった「ぼく」が何年か振りにキックボクシングジムに行き、ジムの会長と元王者「苗場」はずっとトレーニングを続けていたことを知り、再び、キックボクシングを始める物語でした。

当時の憧れだった「苗場」とトレーニングを行うことで、きっと生き方を学んだんでしょうね。

「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」という「苗場」のセリフが抜群に格好良かったです。


『天体のヨール』は、妻の「千鶴」を5年前に失い、社長をしている会社の社員には逃げられてしまい、首吊自殺を決意したもののロープが切れて自殺に失敗した「矢部」が、たまたま電話をかけてきた大学時代の友人「二ノ宮」と再会し、生きること(死ぬこと)の意味を考える物語でした。

「二ノ宮」「みんなが真に受けたから落ちることになったんじゃないの?」ってセリフは、科学者っぽい人物の、科学者っぽくない発言で印象的でした… でも、考えた末に「矢部」が選んだのは死だったのかな。

『冬眠のガール』「美智」には、どうやら素敵な相手がみつかったようでしたね。


『演劇のオール』は、カメレオンアクターと賞されるインド出身の俳優に憧れ役者を目指して上京したが、夢破れて故郷へ帰って来た「倫理子(りりこ)」が、演じる事で人々をを助けようとする物語でした。

「早乙女さん」の孫娘の演技、「亜美ちゃん」の姉の演技、「勇也」「優希」のお母さんの演技、「一郎」の恋人の演技… それぞれの役回りを演じていた或る日、「早乙女さん」が脚立から落ちてケガをしてしまうが、それをきっかけに「倫理子」の相手役が一堂に会すこととなる。

みんなで家族を演じることになったのかな… というか、家族になったんでしょうね。


『深海のポール』は、一緒に暮らしたくないと思っていた父親が隣家の火事が飛び火して家を失い同居することに… レンタルビデオ店店長の「私」は、ハリウッド超大作の影響でマンションの屋上に大きな櫓を建て始めた父親を疎ましく思うが、次第に打ち解けて行く物語でした。

人生って、その意味を考えて立ち止まったり、戻ったりするんじゃなくて、登るしかない、、、

「死に物狂いで生きるのは、権利じゃなくて、義務だ」なんですよねぇ… できることをやるしかないですね。


8篇の登場人物が微妙に絡み合っていて、それぞれの作品で主役になったり脇役になったりして登場するのが「伊坂幸太郎」作品っぽかったなぁ… 設定はハチャメチャですが、バラエティに富んだ短篇集で愉しめました。



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