やっぱり「ニッポン」はこんな扱い。
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ハンニバル・レクター博士と言えば、映画史上屈指の
知的変態として名高い人食い野郎です。
本作は、このおっさんがいかにして、かようなロクでもない衝動を持つに至ったかを描く、まぁ最近つとに増えた”ビギニングもの”の一種です。
さて、実はわたくし「羊たちの沈黙」は人生ベスト5に入れるほど好きな映画ですが、「ハンニバル」「レッド・ドラゴン」は色々あってまだ観てなかったりします。
そこんとこ踏まえたうえで読んで頂ければありがたいかと。
で、いきなり結論ですが、
ハンニバルシリーズだと思わなければ面白かったです。
基本的なストーリーは”復讐劇”。
戦争で家族を失い、一人残った妹を壮絶にむごい経緯で失った少年レクター君。妹を
あんなんしといてのうのうと生きてる兵士は許せねぇと長旅開始、日本と中国をミキサーにかけたような叔母の家に転がり込みます。
そこで
剣道を仕込まれた彼は
ポン刀片手に右往左往。ターゲットの元・兵士どもを片っ端から片付けていきます。
この辺の流れは
「ニッポン」描写のトンチキ具合を除けば良く出来ていて、上記の叔母やレクターを疑う刑事(2人とも戦争被害者)などもうまく絡んでます。
殺人描写も、”人食いハンニバル”の片鱗を見せる悪趣味っぷりでなかなか良し。ギャスパー・ウリエルの涼しげな笑みが不気味さを底上げします。
が。
コレを”あの”ハンニバルの秘められた過去、と説明されてしまった途端、もの凄い違和感が頭の中に渦巻きます。
「羊たちの沈黙」のハンニバルは、人食いという異常衝動を「異常」と自覚しながらも、異常な自分を否定せず、むしろそんな自分を楽しんでさえいるようなキャラでした。
彼が「人を喰いたい」と思うのは「喰いたいから」であり、圧倒的な知性を持つ男がそういった衝動を持つ、このアンバランス性こそ彼の魅力だと思いました。
そこに「戦争被害者」という安易な設定がくっついた途端、「それじゃ仕方ないな…」みたいな同情心が芽生えてしまいます。
いくら復讐の中で”快楽殺人”に目覚めていったとは言え、それじゃダメなんですよ!
ハンニバルは、悲劇によって生み出されたキャラではなく、
ただそうやって生きてきた、超然とした人物であって欲しかったんです!
主人公をただの殺人鬼と見れば楽しめますが、ハンニバルとは見れないんですよっ!!
…えー我ながらだいぶキモい思い入れを綴っておりますが、実際レクター博士のファンはがっかりする部分が大きいんじゃないでしょうか。
復讐が済んだあとも殺人衝動を持ち続ける根拠がよく分からないですし、ホプキンス演じる老レクターにはイマイチ繋がらない印象です。
R15にしては残酷描写が控えめでしたので、そういうのが苦手な人は入門用としてどうぞ。
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