山さん(露口茂)はかつて逮捕した男の忘れ形見・高田加代子(千野弘美)を、お手伝いとして迎えて面倒を見てきた。
妻亡き後、養子の隆にとって加代子は姉であり母でもあり非常に懐いている。
そんな加代子は、恋人の三浦から「東南アジアの無医村に一緒に行ってほしい」とプロポーズされるが断っていた。
七曲署管内で若い女性が横断歩道で車道に突き飛ばされ怪我をする事件が発生。
目撃者の話では、加害者は16、7歳のツッパリ風の少女だという。
似顔絵を頼りに加害者を探す一係の刑事たち。
ドック(神田正輝)とラガー(渡辺徹)がそれらしい少女をみかけ近づこうとした矢先、
少女が歩道橋から若い女性を突き落とし、少年の運転するバイクに乗って逃げてしまった。
少し前に城北署管内でも似たような事件があり、被害者には社会的に地位のある父親と仲の良い娘という
共通点があった。
バイクのナンバーから、オサム(梨本謙次郎)という若者が浮かび取り調べるが、
仲間を売るわけにはいかないと口を割らない。
トシさん(地井武男)とブルース(又野誠治)は、オサムの仲間たちから話を聞こうとしたが
少年たちは刑事に反発して暴れだし、しかしあっというまに(主にブルースに)ぶちのめされるw
又野さんのアクションは、監督からも速すぎると言われたそうですが、たしかに速くて切り取れません。
若者の1人が叫んだ「人殺し」という言葉から、少女の父親は刑が執行された死刑囚で、それゆえに
少女は警察を恨み、父親と仲の良い若い娘を妬んで犯行を重ねたのではないかと推理した山さんは、
条件に該当する死刑囚を洗い、娘を特定する。
「貴様がかばっているのはホリカワエミだな」
仲間が警察に拷問されしゃべったと早合点したオサムは、逆上し食ってかかるが山さんに抑えられる。
「座ってろォ。…誰がしゃべったわけでもない。そんなことは調べりゃすぐわかるんだ。警察を甘くみちゃいかん」
ずっと観ていると、一係の刑事たちのかっこよさに慣れてしまっている部分があるのですが、
それでも何気ない場面で「おお…!」と思う瞬間があります。
このシーンの山さんとドック、めっちゃ男前じゃないですか?
直後にふたりがアイコンタクトをとるのも良いです。
一方、「犯罪者の父親のことは気にしない、忘れたほうがいい」と言った恋人の言葉に、
それでも「父親を忘れたくない、父のことを思う自分の気持ちを分からない人とは一緒になれない」と
別れを決意した加代子。
それを知った山さんは、「犯罪者の娘ということにこだわってるのは君の方なんだよ。三浦くんじゃない」と諭し結婚を勧める。
その二人のやりとりを、オサムを心配し七曲署内に来ていたエミがじっと見ていた。
偶然エミと署内で言葉を交わしたボギー(世良公則)とブルースは、すぐあとにエミの写真を見て驚く。
山さんと加代子がエミの目には仲のいい父娘に映ったのではないか。
だとしたら、加代子の身が危ない!
案の定エミは加代子の後をつけ、踏切内に突き飛ばそうとして加代子に逃げられると、
近くの公園に加代子を追いつめナイフで斬りつけた。
現場に急行したドックたちが駆け寄ろうとするのを制した山さん。
加代子は同じ犯罪者の娘としてエミに語りかけ、エミは泣き崩れる。
自首としてエミの身柄を預かる山さん。
加代子は山さんに、三浦と無医村に行くと告げる。
その晩、加代子がいなくなることを知って泣いて抗議する隆。
自身も寂しさを感じながらも彼女の幸せを願い息子をなだめる山さん。
父を逮捕した刑事と、その養子の隆、その二人の生活を助けてきた加代子。
「高田くん」「山村さん」という呼びかけが示す通り、
疑似父娘という関係ではなく、あくまで個々の人間として一つ屋根の下で暮らしてきたふたり。
それでも過ごしてきた年月が、この“家族”に離れがたい絆を育んできた。
それが伝わる切なくも温かい別れでした。
【走るボギー、止まるドック】
本編で印象的なのが、オサムの勤めるガソリンスタンドを訪ねたドックとボギーが、
逃げるオサムを追いかける場面。
バイクで逃げようとするオサムを追う覆面車。走り出した車の助手席の窓に飛び込むドック。
以降ドックの助手席飛び乗りは恒例になっていきます。
途中で転倒し自転車を奪って逃げるオサム。ボギーは通りかかった少年から自転車を借りて追いかける。
延々2分近く、ボギーの自転車での追跡が続きます。
「昔は超特急のはじめちゃんと呼ばれていたんだ」というだけあって、かつて走ってすぐにバテてしまっていた
ボギーとは思えないほど、力強くペダルをこぎ続けるボギー。
ドックも手放しで絶賛するほどのチャリンカーです。
オサムの自転車を蹴り倒しw、なおも逃げようとするのを取り押さえたところに、覆面車の鼻先をボギーとオサムが
座り込んでいるギリギリのところに突っ込んで停めるドック。
何気なくやってますけど、よく考えたらけっこう危険ですよね。
ドックだからまあ大丈夫だろうという妙な安心感はありますが…。
車でもスキーでも、あっというまにスピードを上げ、その勢いのままギュッと止まれるドックの技術に惚れます。
出典は不明ですが、「走るシーンを撮るときに、普通は勢い余って先まで走って行っちゃうんだけど、
ドックは予定の位置でピタッと止まる。かといって力を抜いて走っているわけでもないから不思議」という
太陽スタッフのコメントを読んで、子ども心になんかスゴイと感心したのを思い出しました。