太陽LOG

「太陽にほえろ!」で育ち、卒業してから数十年…大人になった今、改めて向き合う「太陽」と昭和のドラマ

#530 検問突破

2018年10月31日 | 太陽にほえろ!


信用金庫の職員・上田が射殺され、前科のある前島という男に容疑がかかった。
前島のアパートに踏み込んだボギー(世良公則)とラガー(渡辺徹)だったが、
あと一歩のところで逃げられてしまう。

前島が上田から現金輸送のスケジュールを聞き出し襲おうとしていることをつかんだ一係だったが、
輸送車はすでに出発していて、刑事たちが行方を掴んだ時には、前島と共犯の西山が一足早く輸送車を
襲い逃げるところだった。

前島に裏切られ、刑事たちに捕らえられた西山の自供で、行員の上田を仲間に引き入れ情報を引き出した後
殺したのは西山で、前島は西山にそそのかされて計画に乗ったものの、強引なやり方に腹を立て、
金を独り占めして逃げたことがわかった。


非常線に引っかからない前島を探し、24時間体制で働く一係の面々。
時計は午前3時半を指している。
「最初にボギーさんが前島を逃がさなければこんなことにはならなかった」と愚痴るラガーに、
「おまえ、それを言うな。あいつだって逃がしたくて逃がしたんじゃないんだから」とたしなめるドック(神田正輝)。
そこに同期メシを食べてきたボギーとジプシー(三田村邦彦)が戻ってくる。


あら?聞こえちゃったかな?
なんとなくぎこちない雰囲気で、交代に出ていくトシさん(地井武男)、ドック、ラガー班。

そんな空気を察したのか、お茶を入れようとしてお湯がないことに気づき、給湯室にいくジプシー。
気配りの人です。

しかし、その間にかかってきた偽のタレコミ電話を受け、ボギーはなにも言わず自分の車で出かけてしまう。
給湯室は遠かったんでしょうか。
ボギー、せめて書置きを。
午前3時半、まともな判断ができない時間帯ではあります。


一方、パトカーを奪って検問を突破しようと刑事を呼び出した前島は、たまたま電話を受けたのがボギーで、
パトカーではなく自分の車で来たもんだから計画が丸つぶれ。
ボギーを殴りつけ(2度目)、拳銃を奪い手錠で拘束する。

みんなからバカにされ続けてきたと世の中への不満を漏らす前島に、自分もその気持ちはわかるというボギー。
最初に前島に殴られ逃がしてしまったとき、みんながダメな奴だと思ってるに違いないと拗ねてました。

そんなボギーだからこそ、前島も心を許したのかもしれない。
この車と警察手帳で検問突破して大好きな海まで連れて行くから、気のすむまで眺めたら自首しろ。
ボギーの言葉に態度を軟化させる前島。

ところが一係では、タクシー会社にも応援を要請してヘイチ号の動きをつかみ、
前島が自首しようとしたまさにそのとき、トシさん、ドック、ジプシー、ラガーの姿が!

信じかけたボギーに裏切られたと思い逆上する前島。
ボギーは、前島に銃を向ける仲間を非難する。

心配してようやく探し当てて駆けつけた仲間にしてみれば理不尽な抗議ですが、
ボギーの気持ちもわかります。

そして前島にもちゃんと伝わりました。
ボギーに向けていた拳銃の引鉄を引くことなく、前島もまたボギーとの男の約束を守ったのでした。


「ボギー、おまえいい男だな。…顔じゃないぞ」

額から流血しているボギーにハンカチを差し出すドック。
あんなに激しく非難していたのに、そういわれてまんざらでもないボギー。好きなシーンです。
そして、このときドックが差し出したハンカチがやけに小さくてツボでした。女物か?


【本日の持ち歌】
ボギーの趣味で、演歌専門のカラオケスナック?に連れてこられ、うんざりしているドックとラガー。

そのわりにボギーが電話を受けているあいだに、けっこう乗り気で曲を選んでましたw

事件が起きなきゃ歌っていたであろう3人。
何を歌うつもりだったんでしょう。聴いてみたかったですね。


#537 赤い憎悪

2018年10月22日 | 太陽にほえろ!
不動産会社に勤めるOLの恵子(島村佳江)が帰宅途中にひき逃げされ重傷を負う。
明らかに恵子の命を狙った犯行とみられたが、犯人も動機も不明だった。

恵子の所持品から、多摩刑務所に服役中の竹内(高橋長英)宛の手紙が見つかる。
多摩刑務所に竹内を訪ねたジプシー(三田村邦彦)は、公判を傍聴した恵子の方から竹内に
文通の申し込みがあり、今では婚約までしていると聞き驚く。

さらに調べが進むなか、実は3年前に竹内がもう一人の男と起こした銀行強盗の際に
射殺した職員の婚約者が恵子だったとわかった。




固い表情を崩さず、真意の読み取れない恵子。
25歳だそうですが、当時の25歳はこんなに落ち着いていたんでしょうか。

ジプシーは、以前自分が逮捕し死刑判決を受けた男が刑を執行されたと聞き、受刑者の父親に会いに行く。
「憎しみというのはときに親子の情よりも強い」
父親の言葉に、恵子が3年前に竹内に殺された婚約者・正之の復讐をするために
竹内に近づいたのではないかと思い至る。

月命日に正之の墓に花を供える人がいることを知ったジプシーが、彼女の婚約者に対する愛情と
犯人たちへの憎しみの深さを知り、自分の推理を恵子に話す場面で「まさゆきさん」を連呼する原昌之さん。
若干複雑な気分だったのではと推察します。

ジプシーの推理通り、恵子は死刑を免れて無期懲役になった竹内に自分を愛させ、その自分をいまだ捕まっていない主犯の男に殺させて
愛するものを失う悲しみを与えようと、時間をかけて計画し実行してきたのだった。

そんなことをしても正之さんは喜ばないと恵子を説得し、釈放を要求して医務室に立てこもった竹内に対して
本当の気持ちを手紙に書くよう促す。

竹内が手紙を読んで真実を知ったころ、恵子は婚約者との思い出の傘を橋の上から川に投げ入れ、復讐にピリオドを打つ。
復讐のために近づいたとはいえ、恵子は竹内が本気で自分を愛していたことをわかっていたし、
竹内も恵子を恨まず許してくれと慟哭する。

恵子を演じた島村さんの抑えた演技が、複雑な心境の変化を繊細に表していて印象的でした。
竹内役の高橋長英さんも、出てくると嬉しい役者さんです。
凶暴性を秘めつつも愛情に目覚めていく男の哀れさを表現していて魅力的でした。


【本日のツーショット】

めずらしい山さんとトシさんの張り込み。主犯は恵子がこれまた復讐のために入社した不動産会社の社長でした。
「さすがだな、トシさん。俺もそう思う」
渋い声でトシさんを称える山さんですが、なにげに自分も上げてないですか?


「ぼやくなぼやくな。捜査があるじゃないか」

前にも同じような場面がありましたが、ほかでも観た気がすると思ったら、一昨年の大河『真田丸』の真田兄弟もこんな感じでした。
兄弟味が増していくこのふたりについては改めて検証したいと思います。


貴重なボスとジプシーのツーショット。短い在籍期間のなかで、他の刑事と比べるとボスとのラストの絡みが少なかったジプシー。
煙草の煙を吹きかけられても、三田村さんにとっても大事なワンシーンになったのではないでしょうか。



#534 俺の拳銃が無い!

2018年10月09日 | 太陽にほえろ!
自動車整備工場で売上金が行方不明になり、社長から疑われた少年院出身の守は、腹立ちまぎれに社長を突き飛ばし
当たり所が悪く死なせてしまった。

そのまま逃げた守の行方の手がかりを求め、少年院仲間の三郎を訪ねたラガー(渡辺徹)。
「自分が必ず説得して自首させる」という三郎をひそかに尾行し守の居場所を突き止めたが、
三郎たちに見つかり暴行を受けて拳銃を奪われてしまう。




ラガーが三郎に任せると約束して見送ったあと、すかさず尾行を始めた時、
「あ、追うのね」とちょっと意外でした。ちゃんと刑事なんだねと。



前科者の守が疑われてもしかたないというボギー(世良公則)に、高校時代に給食費を盗んだと疑われたことがあり、
人から疑われることがどんなに悔しいか、疑われたことがある者にしかわからないと訴えるラガー。

天真爛漫に見えるラガーに、そんな過去があったとは。

しかし、刑事ラガーは三郎を裏切る形で守を捕らえようとして失敗。
さんざん痛めつけられた上に拳銃を奪われてしまい、自分がとった行動を悔やみ
傷が癒えない体で夢中になって三郎たちを探す。

病院を抜け出したラガーを呼び止めず、車で後をつけ見守るドック(神田正輝)。

「運転中は前を見て」…スコッチに注意してほしい大胆な脇見運転です。



「おまえがサブに恥ずかしいと思うのは、人として嫌われたくないからじゃないのか。
刑事っていうのは嫌われ者じゃなきゃいけないんだ。お前がサブを追ったのは刑事として正しいんだ」

俺だって最近わかったんだけど、とラガーの行動を肯定するドック。
ラガーもようやく落ち着きを取り戻す。

しかし、三郎と守は赤ちゃんの乗った車を奪い逃走。
身代金目当ての誘拐かと思いきや、赤ちゃんが乗ってることに気づいた時点で車を乗り捨て、
赤ちゃんの居場所を知らせてから逃走。

サラ金を襲い金を奪うも、途中で鞄を取り違えて金をとり損ね、やけになってブティックに立てこもってしまう。

自分が人質になるからと、丸腰で三郎たちのもとに向かうラガー。
隙を見て、山さん(露口茂)から借りてふくらはぎに隠し持っていた銃で三郎たちを取り押さえる。

「裏切者!絶対許さないからな!」
三郎の言葉が突き刺さるものの、ラガーは覚悟のうえでした。
「いつかわかるさ、裏切られて助かったんだってことが」
山さんの力強くも温かい言葉に励まされます。

何年か経って彼らにも伝わる時が来れば…と思ったら、取り調べの最中に感謝されるラガー(早っ!)


警察官になった理由はそれぞれでしょうが、そもそも人間に関心がなければ選ばない仕事でしょう。
事件解決のためにはあえて嫌われ者にならなければいけない場面も出てくる。
でも、刑事だって人間だもの。人を裏切れば自分も傷つく。

末っ子ラガーが直面した葛藤を、かつて同じような痛みを感じ乗り越えてきたであろう兄さんたちが
それぞれのやり方で寄り添っているのが印象的でした。

このころはまだスッキリしてる…と思ったラガーが、上着を脱いでブティックに向かった時、
思いのほか身体は肉付きが良かったのも印象的でした。