太陽LOG

「太陽にほえろ!」で育ち、卒業してから数十年…大人になった今、改めて向き合う「太陽」と昭和のドラマ

#538 七曲署・1983

2018年11月22日 | 太陽にほえろ!


大病を克服したボス(石原裕次郎)の久々のアクションも見られた、1983年最初のエピソード。
ボスだけでなく一係全員の見せ場があり、また、西山署長を長らく演じられた平田昭彦さんの
「太陽」最後の出演作でもあり、タイトルにふさわしく七曲署総出の作品です。


建設会社の西井部長がホテルの窓から転落死した。
遺書はなかったが、肺がんであることを本人も感づいていたふしがあり、
一応自殺とみられたが、現場検証をした一係の刑事たちは、
他殺の線もあると睨んでいた。

痛ましい遺体を見て、苦い表情のトシさん(地井武男)、ボギー(世良公則)、ラガー(渡辺徹)。
何度も殺人事件を捜査し、遺体には慣れているはずの刑事たちでも、やはり見たくはないでしょうね。
平気な顔じゃないことにほっとします。

一方、ドック(神田正輝)とジプシー(三田村邦彦)は、西井が泊まっていた部屋を捜索。
壁に掛けられたスーツ、封を切られた煙草と、吸い殻のない灰皿、セットされた目覚まし時計…
現場のあらゆるものに注意を払い、死の真相を探る。
刑事っぽい!と改めてちょっと感動しました。

地検の田島検事が七曲署を訪れ、5年前の首都圏再開発の入札の際に、西井のいた建設会社の前川社長と、
政務次官の木村との間に不正があったという告発が西井からあり、その矢先の転落死なので、
真相を突き止めてほしいとの依頼があった。

捜査線上に浮かんだのが、西井の部下の久野(北村総一朗)だった。
ドックとボギーが、久野の写真にひげやカツラ、サングラスを描き加え、ほとんどいたずら描きに
見える写真のおかげで、久野が変装し偽名を使って同じホテルに宿泊していたことを突き止める。

久野をマークしていた山さん(露口茂)は、歩道橋の上で襲われそうになった久野を、
逮捕という形で刺客の手から守った。
拘留期間そして収賄の時効が目前に迫るなか、山さんの取り調べが始まる。



取り調べをしている山さんは、いつ見ても惚れ惚れします。
ちょっと笑っちゃうくらい。

そして、北村総一朗さん。今回もいい仕事されてます。
強気でしらばっくれていたものの、山さんの落としのテクニックの前に、
どんどん不安が大きくなり、焦りと怯えがふくらんでいく様子が秀逸です。

めずらしく外出の多いボスは、自分をつけてきた暴力団員風の男に、
もうすぐ久野が落ちそうだという話をわざと聞かせ、
久野が襲撃されるであろうことを予測し山さんに伝える。

案の定、取調室から休憩で出てきた久野と山さんが襲われた!
共犯者の車で逃げた男を覆面車で追うドックとラガー。
ハンドルを握るドック、ラガーが赤色灯をつけ、ヘッドライトがカパーンと開き、
「七曲署」の看板を背に飛び出していくセリカがカッコいい!

やがて反対から走ってきたジプシー&ボギーコンビの車とで挟み撃ちにし、
鮮やかな逮捕。

ボスは、自ら木村と前川の車の前に立ちふさがり、襲ってきた運転手をパンチ&ガンアクションで倒し、
駆けつけた若手4人…あれ?ジプシーの代わりにトシさんがw、木村たちに手錠をうつ。

三田村さんはスケジュールの都合かと思いきや、裕次郎ファンの地井さんが、ボスのアクションシーンに
立ち合いたくてむりくり変わってもらった…とかだったら和みます。

逮捕したあとになって、山さんから「久野が落ちた」との無線が入る。

「山さんのやり方を、今までもこれからも100%信じてる。それだけの話さ」
そんなボスの言葉に応えた山さん。

一係に戻り、吐かせる自信はあったのかとボスに問われ、うまそうに煙草を吸いながら
「いや自信はなかったですね。ただ、ぜひとも吐かせにゃならんと思っただけです」という山さん。
大人の会話をしていると、ビールやらつまみやらを抱えてみんなが帰ってきた。

ドックからグラスの代わりに瓶ごと渡され、やけに嬉しそうなトシさん。

飲み干すのが早すぎるボギー。

年明けすぐの事件を解決しなごやかな空気の中、
「今の話は内緒だよ」

このふたりがいれば、七曲署も安泰。そんなツーショットです。



「大捜査線」#2 男たちの挽歌

2018年11月05日 | 刑事・探偵モノ
初回で特に登場人物の紹介もなく詳細は不明ですが、
第四機動捜査隊は、隊長(山内明)、その中のひとつの班の主任が加納(杉良太郎)、
班員に沢木(神田正輝)、都築(本阿弥周子)というメンバー。

加納主任は30代半ばから後半?
都築と沢木は同期かそれに近い間柄のようで、
若いけどそれなりに経験は積んでいる20代半ばから後半という設定でしょうか。
ちなみに、都築は主任をお慕い申し上げている様子w

さて、第2話。香港映画ばりのタフなタイトルですが、意外にも沢木刑事(神田正輝)の出番が多い回です。
そして、演じるのが神田さんだけに、独特のほんわかムードが漂っています。



加納主任が天ぷらそばを食べ終わるころ、どこからか戻ってきた沢木。
「冷めてるぞ」という主任の言葉もかまわず、冷めてるというかのびてる天ぷらそばを食べだしました。

「毎日パトカーに乗ってばかりで曜日の観念がない。こんなことでいいのかなって時々思うんですよね」
ぼやきつつも勢いよくそばを啜っているので、まだまだ大丈夫そうです。

そんな折、団地の近くで暴走族がたむろしていて迷惑という通報が入る。
警ら中のパトカーが現場に着き、少し離れた場所から様子を見ていたものの、
「病気の孫が眠れない」という再三のおばあちゃんからの訴えに、
岡島巡査がパトカーを降り、立ち去るよう頼みに行く。

無線を受けていた佐藤巡査はそれを見送ったものの、直後に岡島巡査が暴走族のメンバーに
撥ねられ死亡してしまった。

城西署と四機捜では、暴走族メンバーのなかから岡島巡査を撥ねた者を探し出すべく乗り出す。
捜査の網にひっかかったリーダーと二人の若者のうち、ひとりは族のメンバーではなく、
たまたまリーダーと知り合い一緒にいた辺見(小野進也)だった。



佐藤巡査の目撃したバイクと同じくナンバー末尾19のバイクに乗る辺見を尾行し海までやってきた沢木。

「海はいいなあ」のんびり話しかけます。
たしか「大都会PART2」のジンも、容疑者に同じように語りかけてました。

孤児院出身で何度も少年院に入った辺見は警官を憎んでいた。
少年院を脱走し海に来た思い出話をし、沢木は沢木で「税金泥棒だといわれるけど、それは違う」と、
一歩間違えば命を落とす危険な仕事を、それでも身を粉にして働いている多くの警官の現実を訴える。

「今いちばん何がしたい?」沢木に問いかける辺見。
「そうだなあ、恋人と一日中こうやって砂浜にいることかな」
「恋人はいるのか?」
「いない」
「俺もいねえんだ」


……なんですか、友情育んじゃってますか。
のちに太陽で何度も相対する小野進也さんだけに、こんなになごむ絡みは貴重です。

しかし、族のリーダーは取り調べで、メンバーではない辺見を売り彼が撥ねたと証言。
辺見の無実を信じる沢木が任意同行を求めると、辺見は沢木に心を開いていただけに怒りも大きく、殴りかかってくる。
ゴリさんを苦しめた小野進也相手で(ごちゃ混ぜ)沢木もボコボコですが、なんとか取り押さえます。

黙秘を通す辺見だが、加納主任の説得に沈黙を破り、無実を訴え釈放される。
自由の身になった辺見だが、口封じのため暴走族のメンバーに囲まれ人目のない原っぱへ連れていかれる。
辺見を尾行していた沢木が駆けつけ、車に乗せて助けだそうとする。

お、沢木のカーアクションか?!と期待したのも束の間、まさかの泥濘にはまってスタック。
パチンコでフロントガラスに石をぶつけられ、バットでガラスを割られ絶体絶命。
「俺を差し出せ、それで済む」
沢木を助けようとする辺見。そんなことできるかと、拳銃を抜く沢木。…銃持ってたんかい!

これが神田さんがオートマチック拳銃を使うきっかけになったドラマだと聞いていたので、
よし、いよいよ!と思ったら、威嚇だけして撃ちませんw

そこに加納主任登場!
出てきただけで、さっきまで暴れていた族のメンバーたちが静かに…。
遠山の金さんか!!
なぜか律儀に一人ずつバイクで突っ込んでくるメンバーを次々撃ち倒し、戦意喪失させて制圧する金さん、もとい加納主任。

岡島巡査の位牌の前で事件解決を報告する刑事たち。
泣き崩れる母親にかける言葉が見つかりません。



その帰り…と思われる車内でなぜか服装が違う沢木が、ぽつりとつぶやく。
「俺が死んだら、故郷(くに)のお袋が悲しむだろうな…やだなぁ」

沢木刑事は、ホントに普通の神経をもった善良な青年です。
のちに彼が殉職するそうで、それを思うとこの一言が沁みます。

「君は人のために死ねるか」
エンディングテーマが、曲だけ聞いてたらちょっと笑えちゃうんですが、
たぶん見続けているうちに泣きながら聴く日がでてきそうです。

加納刑事が発する言葉は、語り口は冷静ながら情熱を秘め、存在感にも有無を言わせぬものがあり、
さすが主任、さすが杉サマ。

ですが、当方では今後も沢木刑事を中心にお送りいたします。

「大捜査線」

2018年11月04日 | 刑事・探偵モノ


ついに「大捜査線」のDVDを買ってしまいました。
ドックこと神田正輝さんが、杉良太郎さんと1980年に共演した刑事ドラマです。

当時、おばさま方を中心に絶大な人気を誇っていた杉サマ。
再放送もされたのでしょうが、私がこの番組の存在を知ったのは、
ドックが登場し、神田さんの過去の作品をさかのぼって観だしてから。

ところが、この番組は再放送を観る機会がなく、近年ネット上で
杉サマしか出てこないOPを観てじわじわ笑うしかありませんでした。

まあ、杉サマって圧が強そうで苦手だし(実はまともに見たことがありませんでした)、
杉サマのためのドラマみたいな評価がほとんどなので、無理して観なくてもいいかと思っていました。

しかし、太陽のDVD特典映像で神田さんがこの番組のことに触れていて、
「大捜査線」を降板して「太陽」に移る際、杉サマから
「俺を見捨てていくんだな」と言われたという話に、
冗談とはいえ、天下の杉サマが若手に対しそんなしょんぼりしたことを言うのが意外でしたし、
そう言わしめる神田さんのおじさまキラーっぷりを観てみたくなりました。

奇しくも今期の日曜劇場で、杉さんと神田さんが敵対する立場で共演しています。
そんなタイミングで思いがけずお手頃価格で中古DVDを入手できたのでさっそく鑑賞です。

まだ4話までしか観ていませんが、杉サマ演じる加納主任は危惧していたほど圧が強くなく、
むしろ物静かな印象。
たしかに中心は杉サマですが、神田さんほか本阿弥周子さん、山内明さんなど渋めの役者さんがまわりを固め、
案外ふつうに第四機動捜査隊の活躍が描かれています。



それにしても、80年の作品とは思えないほどなんだか古臭い作劇です。
体感としては「大都会闘いの日々」と同年くらいの雰囲気。
とはいえ、今となっては多少の古さもなんのその。とりあえず最後まで楽しみたいと思います。