太陽LOG

「太陽にほえろ!」で育ち、卒業してから数十年…大人になった今、改めて向き合う「太陽」と昭和のドラマ

#463 六月の鯉のぼり

2018年04月30日 | 太陽にほえろ!
ひき逃げされ、顔がわからないほどひどい状態で発見された男性。
酔っ払って歩いているところを撥ねられた単純な事故に見えたが、
身なりと所持品の貧しさにくらべ靴だけが新品だったことに注目する長さん(下川辰平)。

ドック(神田正輝)は、被害者側にも秘密があり、実は巧妙に仕組まれた計画殺人ではないかと
俄然張り切る。

やたら推理小説風に大ごとにしたがるドックから、
「気持ちに弾みがほしいんだ。弾みがなくなったら刑事をやめちゃうよ」といわれ、
心配するスニーカー(山下真司)。




一係の長い歴史の中でも、6人体制のこの時期は試練のときだったと思います。
しかし、なんでしょう、この安定感。
個性はバラバラ。でも、お互いにそれを認め、補い合い尊重している。
この6人とボス(石原裕次郎)、スコッチ(沖雅也)が揃った80年後半のメンバーは、
なんというか職場としてバランスが良く、盤石の頼もしさを感じます。


長さんとスニーカーが踏切に阻まれ逃がしそうになった容疑者を、線路の向こうで取り押さえるスコッチ!
久々の復活ですが、走る電車越しの遠景なのにこのヒーロー感。


地方から出稼ぎで上京してきたものの、都会の誘惑に負け、酒やばくちで借金をして偽名で職場を転々としていた男が、
心を入れ替えて家族のために貯めたお金を狙われて殺されてしまった。

東京出身のドック以外は、みんな被害者の境遇になにかしら身につまされる部分はあるようす。
山さん(露口茂)は、被害者の身元の確認と遺品を届ける役目を長さんに頼み、ドックを同行させる。

「こどもの日には帰る」という夫の約束を信じ、毎年節句を過ぎても鯉のぼりを揚げて
息子とともに帰りを待っていた妻。
家族のために貯めたお金と、息子への土産を受け取り泣き伏せる姿と、
縁側の向こうに広がる山の濃い緑、はためく鯉のぼりが目に沁みます。



東京に戻る電車の中で、靴がだめになったから新しく買わなきゃとぼやくドックは、
一つの事件で一足は履きつぶすという長さんの言葉に感化され、自分ももっと足で稼ぐと宣言。

地道で着実な捜査が身上の長さんと、アイデア勝負で面白がりなドック。
ある意味もっとも対照的なコンビですが、ふしぎとしっくりまとまっています。
根っこの部分でのやさしさが似ているのかもしれません。

「大都会PARTⅡ」#46 霊感聖少女

2018年04月23日 | 刑事・探偵モノ
犯人逮捕の際、外で見張っていたはずのジン(神田正輝)は、荷物が多くて困っていた老婆を
タクシーに乗せてあげていて、そのすきに容疑者の一人を取り逃がしてしまった。

現場にいた徳吉(松田優作)と宮本(苅谷俊介)は気にするなと慰めてくれたが、
課長(滝田裕介)からは交番勤務の方が似合うんじゃないかと嫌味を言われ、
黒岩(渡哲也)のとりなしでようやく課長のお小言から解放されるものの
固い表情のままのジン。



その晩、一人で飲みに行ったスナックでは「教師か税務署の人?」と言われ
ますます自信をなくしていたところ、霊感があるという少女から「警察の人」と
言い当てられて、彼女の予知を聞かされたジンは、翌日その話の通りに強盗の現場に居合わせ、
犯人の一人を逮捕する。

その後も少女の予知の通りに動きお手柄を立てるジンだが、黒岩はその少女は容疑者の身近な人間で、
予知という形で犯行を食い止めたいのではないかと推理する。


いや、どう見ても少女の予知が具体的過ぎて怪しいんですが、まったく疑っていないジンさん。
素直すぎる…。


トクさんに代わって取り調べを担当。犯人に故郷や母親の話をして見事に落とすジン。
調書を書く場面で、さらさらと縦に波線を引いてるだけという神田さんの雑な芝居がひそかにツボです。


やはり少女は犯人グループの一人の妹だったことが判明。
「刑事になって何年になる」
黒さんに叱責されますが、実際そんなに経ってないですよねw
少女からは、誰にも言わないと約束したのにと罵られ踏んだり蹴ったりです。

それでも、彼女が兄を心配する気持ちは本物だと信じ、少女に兄を探させることを黒さんに頼むジン。
黒さんは、そんなジンを信じて任せてくれる。

リーダー格の男に殺されかけていた兄を間一髪で見つけ出したジン。
宗方医師(石原裕次郎)の手術で一命をとりとめ、少女からはありがとうと感謝される。


諸先輩方は、宗方先生が手術室から出てきたら容体を訪ねる前にまず煙草を差し出すのですが、
「煙草」「マッチ」と、いちいち所望されてしまう気の利かない感じが新人ぽくて好ましいです。

ほっとしたせいか涙ぐむジンに、「俺、そういう刑事好きだぜ」と肩をたたく宗方先生。

車で待っていた黒さん、トクさんに報告してハンドルを握るジン。
助手席のトクさんは霊魂を信じると言い、後ろの席から黒さんがそれを茶化す。

ふたりとも、この事件でジンが失敗や葛藤を乗り越えて、それでもなんとか彼の信じるやり方で
事件を解決できたことを喜んでいるのが伝わってきます。

新人というのは、失敗したり出来なかったりして迷惑も心配もかけるけれど、
だからこそ先輩たちにとっても必要な存在なんだと、自分が社会に出てベテランと言われる年代になって
改めて感じます。

トクさんの話に笑いながら運転するジンの横顔が急にすこし大人びて見えて、あんなに自信無げだった冒頭の場面とは別人のようです。


そんなジンに自分の煙草を吸わせるトクさんの表情がなんともいえず優しくていいですよね。


ドラマではあるけれど、ちょうど神田さんの新人時代と重なっていて、裕次郎さん、渡さん、優作さん…
みんなが役柄と同様、厳しくも温かく見守っている雰囲気を感じられて、とても好きなエンディングです。



#514 ドックの苦手

2018年04月14日 | 太陽にほえろ!
「健全な精神は健全な肉体に宿る。今日も元気だサラダが美味い」
ピクルスが苦手なラガー(渡辺徹)、キウイが苦手なロッキー(木之元亮)とサラダを食べているドック(神田正輝)は、
苦手なものなんかないと豪語。呼び出しのポケットベルですら大好物と言い、
「今日も元気だ事件が美味い。電話(善は)急げ」と電話をかけに行き、ふたりを呆れさせる。


冒頭からドックの調子の良さ全開で始まった本エピソードは、宝石強盗が人質を取って休日の中学校にたてこもり、
刑事が身分を隠して潜入するという緊張感のある設定ながら、ドック編らしく笑いも随所にちりばめられた作品です。


強盗に撃たれたガードマンの証言から、主犯は前科を隠して警備会社で働いていた神原(片桐竜次)と判明。
共犯の大町(堀礼文)、さらにタレコミをしてきたと思われる藤田(中村好男)も捜査線上に上がってきた。

ドックとラガーは、藤田の働く運送会社を訪ねる途中でトラックに乗り込んだ神原たちを発見、追跡するが逃げられてしまう。
藤田の母校の中学校が近くにあるとわかり念のため訪ねると、理科室から神原たちと思われる声が聞こえてきた。
実は、そこはドックの母校でもあり、人質にされている理科の吉松先生(今福将雄)は2、3年とドックの担任だった。



「じゃ、簡単にくじ引きで決めようか」

少し前に吉松先生を訪ねてきたという男子生徒3人の行方がわからず、彼らが人質にとられているかどうかで
救出作戦も変わってくるため、誰かが教え子を装い中に入ることになった。

ふつうに考えれば、実際に教え子のドックが行くのが妥当でしょう。できるだけ嘘が少ない方がばれる確率が低いし、
理科室の様子や先生のことを知っていた方が有利です。
でも、銃で武装した犯人たちのなかに丸腰で入っていかなくてはならない。下手をすれば殺されてしまう。
決して楽な任務ではありません。

さきほど理科室を訪ねたラガーは除外、ジプシー(三田村邦彦)とロッキーがそれぞれ名乗りを上げるなか、
ドックが軽い調子で提案。運を天に任せた結果なら、みんな納得せざるを得ない。
マッチを3本用意し、短いのが貧乏くじ。先にふたりに引かせるが長かった。やれやれ言い出しっぺかと結果を受け入れ、
「名刑事にとっちゃ軽い仕事だ。ばいちゃ!」と、ペン型の発信機だけ身に着けさっさと行ってしまうドック。

ジプシーは、ドックが捨てたマッチも長いままだと気づき、最初から自分が行くつもりだったんだと、
ロッキーやラガーも愕然とする。


この後の展開を見ても、やはり自分が行くというドックの判断は適切だったと思います。
吉松先生が思い出してくれたことで、卒業生の医者だと信じてもらえた。
刑事に見えないというドックの雰囲気もおおいに役に立っています。

吉松先生の話から、藤田は中学時代も卒業後も、何度もグレながらも先生を頼ってきたことがわかる。
今回の強盗のことも相談され、警察に密告するよう勧めたのも先生だった。
同時に、ドックが中学時代からテニスやスキーで授業をさぼっていたことも明るみにw
そのくせ成績は良かったそうで、先生にしてみれば不良よりもある意味厄介な生徒だったかもしれません。



おしゃべりな医者を演じつつ、不自然に聞こえない言葉とタイミングで必要な情報を送るのは、さすが自称名刑事です。
途中医者にしては度胸が良すぎると、刑事じゃないかと疑われ持ち物を調べられる。
「デカ?ばかなこと言わないデカ」
この状況でダジャレが出るのもドックならでは。


けっきょく刑事だということがバレて痛めつけられ両手を縛られてしまう。
圧倒的に不利な立場になっても、ドックは、おそらく生徒たちの救出活動は進み理科室も仲間が包囲しているだろうと信じ、
中学時代に吉松先生から教わったモールス信号を使って先生に助けを求め、強行突破の瞬間を待つ。

「そいつらがそこまでお前のことを思ってくれるか?よく考えてみろ。その石っころで何が買える。
これほどまでにお前を思ってくれる人の心が、その石で買えるか!」

吉松先生を頼りながらも、先生が痛めつけられても神原たちに抵抗できず、あげくに盗んだ宝石の分け前をもらおうとしていた藤田。
卒業後も藤田を気にかけ必死にまっとうな道に進ませようとする先生の気持ちを汲んだドックが、後輩に投げかけた言葉。

強行突破の瞬間、その言葉に背中を押され、藤田も神原たちの逮捕に協力する。
勇気を出して神原たちとの関係を絶った藤田と、思っていた以上に自分が教えたことを覚えていて逞しく成長していた西條、
教え子たちの姿に吉松先生も教師冥利に尽きるようす。


現場の指揮を執った山さん(露口茂)をはじめ、仲間たちとドックの見事な連携で無事に事件は解決。

誰にも負担をかけずに自分が危険な役目を負うために使ったくじ引きのトリックを、
今度は解決祝いにステーキをおごる人を決めるために、大胆にもボス(石原裕次郎)に仕掛けるドックw
「みんなで、ごちそうさま~!!」

ジプシーもしっかり乗ってるし、ロッキーは礼が深すぎて笑えます。

もちろん、ボスはお見通し。

「こんな手でひっかかると思うか?」
全部短いマッチをドックの顔に向けて放るボス。
でも、たぶんこの日はステーキおごってくれたんじゃないかな、と。
そんな気がします。

#501 ある巡査の死

2018年04月08日 | 太陽にほえろ!


ラガー(渡辺徹)が毎日一緒にジョギングをしている君原巡査(美木良介)は、本庁の警視正を父に持ち、
自身も優秀でエリートコースが約束されていたが、出世よりも一巡査として派出所勤務を希望していて、
同僚の吉野(横谷雄二)も一目置いていた。

その君原巡査が、管内で起きた銀行強盗事件の現場で、ラガーを庇おうとして犯人に撃たれ死んでしまう。
遺体に対面した父である君原警視正が、「つまらん死に方をしおって」と吐き捨てるのを見過ごせず、
ラガーは食ってかかる。

その後、なぜか捜査本部が本庁に移り、ラガーには「本庁の意向」として謹慎1ヶ月がボス(石原裕次郎)に
言い渡される。


「自分の責任だと言ったな、ラガー。だったらその責任を自分の手で償え。それがデカってもんだろう」
辞表を出そうとしていたラガーの胸の内を察したボスの言葉。痺れます。

「おまえのやったことはなにひとつ間違ってない。君原警視正につっかかったことも含めてだ。
おまえが罪に問われるなら、俺も同じ罪に問われたい。俺は初めからそう思ってる」

くわ――!ボス――!!(私の叫びw)

「本当ですか!?」
ボス、山さん、長さん、ゴリさん、ドック、ロッキー…目線で問いかけると、みんな力強くうなずいてくれる。
感激屋さんのラガーは泣きそうです。


離れた席に座るジプシーだって!(ちょっと秀さん入ってますけど)

「捜査を続けます!」
飛び出していくラガー。先輩たちもボスの言葉に熱くなってそれに続く。
すべてを自分で引き受ける覚悟をしたボスの横顔に向けて山さんがひとこと。
「ボス、処罰されるときは私も一緒です」

くわ――!山さ――ん!!


強盗に使われた改造拳銃と同じ銃を持った男を逮捕したラガーとドックは、その男から、銃の入手先が
竜神会のサブであること、サブがよく会っていた暴走族のリーダー寺沢が、強盗事件のあと姿を消していることを聞き出す。

資金繰りに困った竜神会が、寺沢に強盗をやらせたものと思われる。そうなると、口封じのため寺沢が消される可能性が高い。

ラガーは暴走族のメンバーに、リーダーの命を守るため、居場所を教えるよう説得する。
殴られ蹴られ、大けがを負いながらも説得を続けるラガーの姿に、メンバーたちはようやく心を開き、
ついに居場所を告げるのだった。


【本日のジャージ】

ラガーの着ているジャージがドックのおさがりっぽい(#428参照)のもさることながら、
長さんのジャージ姿(PUMA)がなんとも微笑ましかったので、〆はこちらで。