">東医宝鑑 内景篇(内科)
胞 (3)
処女の月経不順の場合
女が十四才で衝・任が盛んで、血は自ら順行するものだが、万一適令期に月経が不順だと
紅花当帰散・血極膏・三神丸・牡丹皮湯・通経丸を使い、また四物湯に蓬朮・桃仁・
牡丹皮・玄胡索・紅花の酒で焙ったものを加えて使う。
紅花当帰散 処女の月経不順と瘀血がつもって腰腹が痛むのを治す。
処方 赤芍薬二両、劉寄奴一両二銭半、紫葳・当帰尾・牛膝・蘇木・甘草各五銭、
白芷・紅花・桂心各三銭半、を粉末にして二銭づつ酒で調服し、紅花は酒で
飲むのが最も良い。
三神丸 処女の月経不調と腹痛を治す。
処方 橘紅二両、玄胡索醋製・当帰の酒で炒ったもの各一両、を粉末にして、酒糊で
梧子大に丸めて、艾醋湯で一〇〇丸呑み下す。
牡丹皮湯 処女の経閉と咳嗽発熱を治す。
処方 当帰・牡丹皮一銭半、白芍薬・生乾地黄・陳皮・白朮・香附子各一銭、
川芎・柴胡・黄芩各七分、甘草四分を水で煎じて服用する。
通経丸 処女の月経不順と血癖を治す。
処方 桂心・青皮・大黄・乾薑・川椒・蓬朮・乾漆炒・当帰・桃仁・紅花各五銭、
を粉末にして、先に二両を醋熬膏にして残った粉末を入れ梧子大に丸め醋湯
で五〇~七〇丸呑み下す。
月経不順で醋がおきる場合
衝脈・任脈がみな胞中からおりてきて、血の海となるが、血が渋滞して順行しないと癖と
なって痛む。任脈に病がおきると男子は七疝となり女子は癖聚となる。
月経が順行せず血がふさがって癖になったときは、帰求破癥湯・増味四物湯・四物調経湯
・立効散・地黄通経元・無極丸・桃仁の煎じたものを使う。
帰求破癥湯 月経の不通と腹中塊があって疼痛をおぼえたときに使う。
処方 香附子醋炒一銭半、三稜・蓬朮の醋煮・赤芍薬・白芍薬・当帰尾・青皮各一銭
、 鳥薬七分、紅花・蘇木・官桂各五分を水で煎じて服用する。
四物調経湯 月経が止まりかたまりがあって痛む症状を治す。
処方 香附子醋炒一銭、当帰・川芎・白芍薬・の酒炒・柴胡・黄苓・枳殻各七分、
熟地黄・陳皮・白朮・三稜と蓬朮の醋炒・白芷・茴香塩水炒・玄胡索各五分、
青皮・縮砂・紅花・甘草各三分、生薑三片、葱白三茎を入れて水で煎じて服用
する。
増味四物湯 血癖の疼痛を治す。
処方 四物湯に三稜と蓬朮の醋炒・乾漆炒・官桂各一銭を加えて水で煎じて服用
する。
立効散 長年の積血に依り腹中がいつも疼痛する症を治す。
処方 青皮・陳皮・鳥薬・乾薑・香附子・蓬朮・三稜を各等分に醋煮したものを焙って
乾かし、粉末にして空腹時に陳皮湯で二銭づつ服用する。
地黄通経元 血癖で臍下にかたまりが出来て痛むときに使う。
処方 熟地黄二両、虻虫炒・水蛭糯米を同時に炒って米を取り出したもの、桃仁各
五〇を粉末にして梧子大に蜜で丸め、空腹時に温酒で七〇~八〇丸呑み
下す。
千金桃仁煎 血癖・血積・月経不順を治す。
処方 桃仁・大黄・朴硝各二両、虻虫五銭を末にして好醋二升半と銀石器に入れて
弱火で一升半になるまで煮詰め、桃仁・大黄・虻虫いれて一千回以上かき回し、
次に朴硝をまぜて熱いときに梧子大に丸め、夕飯は食べずに、夜中におきて五
丸を温酒で呑み下すと悪物が出るが、出ないとまた飲み、鮮血が出たら止める。
無極丸 月経がとまり、血塊があって痛むときに使う。
処方 錦紋大黄四両を一両は酒で煮、一両は童便で、一両は塩水で煮ること各七回、
再び合わせ七回蒸し七回晒して粉末にし当帰・熟地黄各一両半を濃く煎じた汁で
糊をつくり梧子大に丸め紅花湯で三〇丸呑み下す。