東医宝鑑 内景篇(内科)四
二六、大便(10)
<風痢>
風痢は風を嫌う。鼻がつまり身体が重く、また水にようなものが下がるときは蒼朮防風湯を使う。
風痢には食廩湯、胃風湯、露宿湯を使う。
露宿湯 風痢に血がまざっているとき使う。
処方 杏仁の皮尖七個、苦木瘡の手のひらぐらい一つ、鳥梅一、草果一、酸石榴皮半分、青皮 二、甘草一寸、薑三片を入れて水で煎じて、一晩露にあて翌る朝空腹時に服用する。
<寒痢>
寒痢は便の色が鴨溏に似て、腸が鳴り痛む。理中湯に詞子・肉豆蔲を加えて使い、良くなった症は黄連補腸湯を使う。
黄連補腸湯 大腸が冷え青白色の便を下すとき使う。
処方 黄連四銭、赤茯苓・川芎各三銭、酸石榴皮五片、地楡五銭、伏竜肝二銭、 に剉作して水で煎じて服用する。
赤石脂散 冷痢の赤白と腸骨を治す。
処方 肉豆蔲煨一両、縮砂五銭、赤石脂・甘草灸各二銭半を作末し、毎二銭を栗米飲で調下する。
<湿痢>
湿痢でお腹が脹り、黒豆汁のような便が下り、また赤と黒がまざるのは危険な症である。当帰和血散・加味除湿湯・戊己丸を使う。
加味除湿湯 下痢が黒豆汁のようなときに使う。
処方 半夏・厚朴・蒼朮各一銭二分、藿香 、陳皮・赤茯苓各七分、木香・桂皮・甘草各五分、薑三片、棗二を入れ空腹時に水で煎じて服用する。
戊己丸 湿痢を治す。
処方 黄連・呉茱萸・白芍薬を等分に作末して、麵糊で梧子大に丸め、空腹時 に米飲で五〇~七〇丸呑み下す。
<熱痢>
熱痢は暑痢と同じ。大体、痢疾は伏暑に依ってなる症で、背が冷たく、顔に垢がついて顔色は悪く、口がかわき、いつも水を飲むのはみな暑症である。酒蒸黄連丸を使うのが良い。
扁熱(身体の一部に熱がある症)で便が赤くなるのは、暑症だが、軽症には黄苓芍薬湯を、重症には導滞湯を使い、良くなったのには黄連阿膠湯を使う。
熱痢には黄苓芍薬湯が最も良い。
下痢のひどいときは食廩湯を使う。
下痢で水ばかり飲むのは熱があるためで、白頭翁湯を使う。
熱痢には鳥梅丸と寧胃散に当帰を加えたものを使う。
鳥梅丸 熱痢で腹痛と血が下る症を治す。
処方 黄連一両半、鳥梅肉・当帰・枳殻各一両を作末し醋糊で丸め、米飲で空腹時に七〇丸呑み下す。
寧胃散 赤白熱痢を治す。
処方 白芍薬銭半、黄苓・黄連・木香・枳殻各一銭半、陳皮一銭、甘草灸五分を水で煎じて服用する。
<気痢>
気痢は大便に泡があって痛むのが特徴で、茱蓮丸・気痢丸・牛乳湯を使う。
気痢丸 気痢で大便が泡のような症に使う。
処方 詞子皮・橘皮・厚朴各一両を作末し、蜜で梧子大に丸め空腹時に米飲で三〇丸呑み下す。
牛乳湯 気痢を治す。
処方 華撥二銭を切って牛乳半升に煎じ、半分に減ったら空腹時に服用する。