東医宝鑑 内景篇(内科)
虫(2)
四、蛔虫
心臓の疼痛が静まったと思うと、また痛みまた止む。なにを食べても嘔吐し、また煩悶して
蛔虫を吐くが、これを蛔厥という。 蛔厥は吐く症で、食べると吐き、また発作する症は蛔が
食臭を受けて動くから吐くので、これには鳥梅丸が良い。
患者に寒がありながら発汗する症は、胃中が冷えるからなので、必ず蛔を吐く。先に理中湯(処方後述)
に鳥梅三個を入れて煎じて服用したあと鳥梅丸を使う。
蛔厥は胃が冷えるので生まれるが、長い虫で胃が冷えると吐く。
冷薬は使わず、理中湯に炒川椒・檳榔を加えて煎じた水で鳥梅丸を呑み下すと効く。
経に「虫が心臓を貫通すると死ぬが、心腹が痛んで堪えられず、青汁と黄緑水を吐き、よだれ
を出しながら虫を吐き、痛症が発したり止んだりするのは蕪荑散・化虫丸を主剤に使う」と言った。
小児の虫痛には霊礬散を使う。
蛔厥で心痛する症は安中散・化虫散・迫中取積散を使う。これを治さないと虫の子母が生きて
尽きない。小児の口鼻中から黒虫が出はじめると難治である。
鳥梅丸 蛔厥の心腹痛を治す。
処方 鳥梅一五、黄連七銭半、当帰・川椒・細辛・附子炮・桂心・人蔘・黄柏各三銭
、 を作末し、醋に鳥梅を漬けて肉を取り、薬末に入れてつき、梧子大に丸め米飯
で一〇~二〇丸呑み下す。
蕪荑散 蛔が心臓をかんで痛むときに使う。
処方 蕪荑・雷丸各五銭、乾膝を炒って煙がなくなったもの一銭を作末して温水で二
銭調服し、小児は半銭を調服する。
化虫丸 蛔厥で腹が痛むときに使う。
処方 胡粉炒・白礬の半生半枯のもの・檳榔・苦練根各五銭、鶴虱三銭を作末し、麵
糊で梧子大に丸め、、大人は二〇丸、小人は五丸づつ淡米飯に香油二~三滴
を入れて呑み下す。
化中散 蛔厥で心腹が痛み、よだれを流すときに使う。
処方 雷丸二、檳榔二、鶴虱二銭、使君子肉七、を作末し、軽粉一を入れ、二つに分
けて服用するが、服法は猪肉一両を切って皀角汁に漬けて一夜おいてから
早朝弱火で香油をぬって焼き、先の薬末を肉片にふりかけて空腹時にかんで食
べる。
霊礬散 小児の蛔厥心痛を治す。
処方 五霊脂二銭、柿白礬五分を作末にして毎二銭を水で煎じて服用する。
安中散 虫痛を治す。
処方 化中丸の材料を細末にして毎一銭づつ米飯で調服する。
迫中取積散 虫積を治す。
処方 蕪荑・雷丸・錫灰・使君子・檳榔・黒索牛子頭末・大黄・鶴虱・木香を各等分に
作末して、蜜で麻子大にまるめ、茶漬けで二〇~三〇丸を呑み下すか、または
蜜水または砂糖水で一匙を調服する。