隠れ家-かけらの世界-

今日感じたこと、出会った人のこと、好きなこと、忘れたくないこと…。気ままに残していけたらいい。

「私の中のあなた」

2010年03月21日 17時04分52秒 | 映画レビュー
私の中のあなた (2009年,アメリカ)

監督・脚本  ニック・カサヴェテス
出    演  キャメロン・ディアス/アビゲイル・ブレスリン/アレック・ボールドウィン/ジェイソン・パトリック/ソフィア・ヴァジリーヴァ/ジョーン・キューザック


 
 長女の病と死を大きなテーマに、この家族の歴史は彩られている。娘を救うために、命を長らえるためにすべてを捧げる母親。
 協力を惜しまずにいながら、戸惑いも感じつつ、息子ジェシーともう一人の娘アナ(まさに keeper の次女)に暖かい視線と愛を注ぐ父親。
 母の必死な思いは観ている者の心を打ちつつ、空回りの空気を感じてこっちが戸惑う。なぜ? 賢い母はキャリアを捨ててまで娘を守ろうとしているのに…。
 あとでわかるんだけど、実は守られている娘ケイトがもう自分の死をちゃんと受け入れはじめていたのだ。
 「姉病気のために身体を提供するのは、もうイヤだ」と親を訴える裁判を起こした11歳の妹アナ。
 実はその裁判は姉のケイトから依頼されたものだったということ。ケイトはもう、生きながらえることではなく、死を受け入れようとしていたというわけだ。
 その真実は映画の流れを観ていれば十分に予想できる。アナの凛とした表情、ケイトの前でも動揺しない強い態度。
 でも予想された結末であっても、二人の中に流れる深い信頼は十分心をうつ。
 家族の歴史のバックに流れる往年のキラキラ輝くポップミュージックの優しさ、ケイトの笑顔の美しさ、テイラーとの初恋のきらめき、アナの意志的な目の表情。
 すべてが美しい。終わりを知っている者が見れば、すべての光景、言葉が美しい。

 最後の夜、「もういいのよ」と母に優しく言うケイト。
 母ははじめて泣く。こらえきれずにはじめて泣く。
 ベッドの上に崩れ落ちる母を、死を前にした娘が優しく包む。今までずっと母が守る人だったのに、そこには母を守る娘の姿があった。
 そうして、娘は旅立っていった。
 ケイトも、ジェシーも、そしてアナも、いつの間にか母を越え、現実を受け入れ、強くなっていた、という家族の物語…。そう思ってもいい映画かもしれない。
 悲惨で過酷な治療の時間、死までの道のり…。
 家族はそれぞれに新しい道を歩き始めていることを伝えて、エンドロールが流れる。

 物語は美しいけれど、現実はいかに過酷でせつないものだったか。それを乏しい私の感性で想像して、やりきれなくなる。



 原題は、『My Sister's Keeper』。姉の病気を救うために遺伝子操作されて生まれた妹の話、といえば、この原題はビックリするくらいリアル。
 それに対して、『私の中のあなた』はちょっとなあ、と。
 タイトルにこだわる私としては…。

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