2022.09.11(日)
ここに日付を入れて、あ、と気づいた。
9月11日・・・。
21年前のあの日から、何が変わって、どう進んだのか。
私自身が忘れてしまっていることが多すぎて、それが少し怖い。
積んでおいた書籍。
時間ができたら読もうと半ば楽しみにしていたものに限って、案外おもしろくなかったりするもんだ。
そんな中からたまたま選んで、ここ数日読んでいたのが、ルシア・ベルリンの『掃除婦のための手引き書』(A Manual for Cleaning Women)。
(このタイトルがすごい。これだけで、なんの予備知識もなく購入してしまった。当時話題になっていたのはまったく知らなかったのです)
2004年に68歳で亡くなるまでは、一部のファンの間で愛読されていたにすぎなかったらしいが、2015年にスティーブン・エマーソン編集で短編集が出版され、アメリカをはじめ多くの国で評判になった。
日本で出版された本書は、原著43篇から24篇を選んで翻訳されたもの。本書のタイトル『掃除婦のための手引き書』はその中の一篇の短編のタイトルからきている。
数ページを読むか読まないかのうちに魔力のように引き込まれる。この力はなんだろう。
波乱に満ちた彼女の半生をもとに書かれたというが、土地の匂いも空気も、そこに生きる人間の性も、環境もまったく異なるところを生き抜いてきて、なお、そのアップダウンをテンポある文章と、突き放した視線と、それでも動揺する繊細な観察眼で、くるくる変化しながら、読み手を翻弄する。
裕福な家のお嬢さんだったり、子どもたちを抱えて掃除婦をはじめさまざまな仕事でかつかつの暮らしをしていたり、アルコール依存症で危ない橋を歩いていたり・・・。それでも「わたし」はどこかで説得力を持って、読み手の前に立っている。
そのリズムもテンポも、バックに流れる土地の音も、私にはほぼ馴染みのないものばかりで、それでもそこに暮らす「わたし」は、あるときは自分であったり、かつて出会った女性であったり、はたまた私なんかが一生出会わないであろう顔をもった女性であったりする。
翻弄されながら、最後の一文で、ふっと体の深いところをつかまれて愕然とする。
ごまかしのない目、相手に深く入り込んだかと思うと180度回転して突き放して、冷たく論じて、人生はそんなものかと思わせて、それでもユニークなその場限りの結論ではぐらかされる。
一つの土地に根を下ろして時を抱いて死に至る一生と、羽を育ててどこでも舞い降りていっとき根を下ろしたと見せかけてまた離れていく一生。その後者を鮮やかに、ごまかしを最小限にして広げて見せてくれる、質のいいびっくり箱のような短編集。
こんな短編集は初めて、と思いながら、残りの作品が日本でも出版されることを・・・。
『石子と羽男~そんなことで訴えます?』
https://www.tbs.co.jp/ishikotohaneo_tbs/
主人公二人の会話、微妙なやりとり、恋愛感情ナシの気持ちよさ。すべてよい。
中村倫也さんの軽妙で的を射た演技が魅力的。
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