『声をかくす人』
2011年 アメリカ映画
監督 ロバート・レッドフォード
出演 ジェームズ・マカヴォイ/ロビン・ライト
http://www.koe-movie.com/index.html
南北戦争終結後のアメリカ。
指導者として力を発揮すべく待たれていたはずのリンカーンが南軍の残党に暗殺される。
劇場での暗殺を企てた首謀者は逃亡先で射殺されたが、共謀者たちは捕えられ、軍事裁判にかけられる。その裁判の進行がこの映画の大きな流れ。
その共謀者の中にひとりの女性メアリー・サラットが含まれ、彼女は一味が出入りしていた下宿屋の女主人で、彼らの陰謀を知っていたという疑いをかけられている。
彼女は「私は無実です」という主張はするが、それ以外はいっさい話さない。「声をかくす人」はそこからきているのか。
疲れた表情で流れにまかせるような柔らかな物腰と、静かだけれど揺るがない目の光が、終始、こちらを見据える。
民間人でありながら軍事裁判にかけられ、国をひとつにして突き進むべく、なんとしても全員を極刑に処すべしという国家の策に翻弄された女性は、結局、この国で最初の女性の死刑囚となり、大勢の人民の前で絞首刑に処せられる。
元北軍の軍人であるフレデリック・エイキンは、自らの意志で彼女の弁護を引き受けたわけではないが、不当な裁判の進行や、胸に秘めたサラットの真実を垣間見るにつれ、孤軍奮闘で裁判に臨むことになる。
彼女が守りたかったのは、逃げた息子の命、とこの映画では解釈する。
メアリーはエイキンに尋ねる、「あなたには、自分より大切なものがある?」。その目の翳りのなさが胸を突く。
エイキンはただただ「真実」を追う。そして、法廷で、「憎しみの感情で彼女を裁いてはいけない」と訴える。けれど、戦いの末に得た不安定な国情と、敵憎しの感情が渦巻くそこでは、彼の言葉はあまりに小さく、力をもつことはない。
メアリーが守り抜いた息子はのちに人民裁判にかけられ、無罪放免となる。息子が母の行為をどう感じていたのか、母が自分を守るために犠牲になった裁判の進行を逃亡先で知っていたのかどうか・・・。そのあたりは不明。
ただ、遺品をエイキンに渡し、「あなたのほうが良い息子だったから」という言葉をもらす。
母の愛とか強さとか、そういうemotional な部分の深い感動もあるけれど、希望のない理不尽な状況で毅然としていられるメアリーの崇高な精神と、法廷でも、また身近な人からも理解されない自分の使命を迷わず貫こうとするエイキンの姿に、「歴史上のこと」では括れない普遍のメッセージを受ける。
大きな流れはいつだって「正当」の匂いをさせて私たちの前に立ちふさがる。でも、それが真実であるとは限らないことを、さまざまなところで思い知らされる。そういうことを、「事」が終わったあとではなく、まさに進行中に見破ること、疑うことができるんだろうか・・・。流れに逆らうこと、せめて流れから抜け出すこと・・・、そういう生き方ができる時代なんだろうか・・・。
そんなことを思う。
メアリーは「戦士」でも「英雄」でもない。「ただの南部出身の母親」なのだ。
その母親が背負わされた不幸な最期を、なんのてらいもなく正攻法で描いた映画だと思う。
ジェームズ・マカヴォイとロビン・ライトがいい。
仕事の都合で早めの昼食をとりながら、ひさしぶりに予算委員会の中継を見る。
民主党の増子議員の質問に答える原子力規制委員会の田中委員長、安倍総理、東電社長・・・。
どんな言葉をきいても、結局、対処できない「ゴミ」が増えていくという事実への明確な回答はない。
「将来、技術が進んで・・・」なんていう空疎な言い訳も飛び出していたな。
島外への避難や、避難所への移動をためらう、伊豆大島の高齢者のかたがた。
「三原山の爆発の際に(避難所で)ひどい目にあったし・・・」と話す方も。
ほんの2、3日なんだし・・・とついつい思ってしまうけど、お年寄りにはかたい床も、慣れないトイレも、大きな問題なんだろうと想像できる。
震災のとき、何日も何か月も避難所生活を強いられて亡くなられた方も多い。どんなに大変だったろう。そういうことをまた思い出す。
http://www.tokyo.jrc.or.jp/kyoryoku/gienkin/gien.html
どういう形の支援がよいのか、試行錯誤開始です。
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