kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

2023年07月09日 | ★★★☆☆
日時:7月7日
映画館:109シネマ広島



第1作目「レイダース/失われた聖櫃」を観たのは中学校の時だったから、今、ワタシが普段会話する人の半分くらいはまだ生まれてなかったことになる。自分も年を取ったわけだ。(そういう自分も大好きなマカロニ・ウエスタンや007シリーズの開始時は生まれてなかったのだが)

時代の変遷はオープニングでもいきなり実感させられる。最初の出てくるのはパラマウントのロゴではなく、ディズニーのシンデレラ城のロゴなのだ。

さて、時は1945年、ナチドイツ崩壊時にインディ・ジョーンズはトビー・ジョーンズの考古学者と一緒に2000年前の精密機械、アンティティキラ争奪戦に関わる。

ここで敵役となるナチ親衛隊の大佐役は嬉しいことにトーマス・クレッチマン。ドイツ版「スターリングラード」から「ヒトラー最後の12日間」「ワルキューレ」に至るまで21世紀にドイツ軍人役ならこの人である。ここ数年はでっぷりお腹が出てしまって、かっての精悍さがなくなったのは残念なところだが、インディを縛り首にしようとする非道さを発揮する。
砲弾飛び交う戦場で縛り首ってどっかで聞いたようなシチュエーションだなあ・・・。
いつものようにお気軽なアクションを展開し、20mm対空機関砲でドイツ兵をなぎ倒したおかげでアンティキティラはアメリカの手に。

さて、時は飛んでアポロ11号の3人の凱旋パレードで賑わう1969年、インディも70歳。大学の退官パーティのさなか、アンティキティラを狙う一団に襲撃される。インディ、アンティキティラをほぼ私物化しており、相変わらず手癖が悪い。

アンティキティラ自体は現実に実在しており、正確には「アンティキティラ島で発見された機械」と言われている。用途は天体の動きと暦を連動させた天文計算機だったらしい。
ただそれでは面白くないので、劇中ではさらに不可思議な機能が備わっている。実際のアンティキティラ島の機械になかなかの謎設定を付加するあたり、面白いプロットだと思う。

途中から今回のヒロインでトビー・ジョーンズの娘、ヘレナと一緒に、謎の一団(って顔ぶれからすぐにナチの残党と分かる)が追うアンティティキラの正体を探す探検の旅に出る。
トビー・ジョーンズと言えば、「ジュラシック・ワールド/炎の王国」の金持ちとか「キャプテン・アメリカ」の科学者とかどちらかと言えば敵側の人間って感じで、その娘となると何かと胡散臭い。

「いつもと一緒でいつもと違う」という続編ものの鉄則どおり、今回も「古代の人はなぜそんな面倒くさいことまでして隠した?」という謎解きがあり、インディシリーズお約束の「生き物いっぱい」のシーンもちゃんとある。

今回の敵役はマッツ・ミケルセン扮するフォン・ブラウン博士がモデルになったような数学者。劇中言及はされないが、たぶん欧州大戦の終了後、米軍のペーパークリップ作成でアメリカに連れてこられ、宇宙開発研究に従事していたという設定なのだろう。一学者に過ぎず、背後に強力な権力の裏付けがないので、これまでの悪役に比べるとちょっとパワー不足の感は否めないが、目的のスケールのデカさではシリーズ随一。ただの骨とう品泥棒ではない。

ただパワー不足なのは70歳になったインディも同様。「レイダース」のカーチェイスみたいな派手なアクションは、さすがに無理があるのでもはや展開されないし、得意技の鞭も1回しか振るわない。それに映画途中から体を張る役回りはヘレナに移る。

実はジョン・ウィリアムの音楽も同様。もちろんテーマ曲は健在だが、重いシーンでも肩の力を抜かせる軽妙なジョン・ウィリアム節が聞こえてこない。彼の音楽を聴くと「映画館で映画観た」って実感できたのに、今回はさみしい限り。

それに今回、ワクワクするような巨大メカが出てこない!

今回のインディ、目新しいところがほとんど感じられない。いずこも見たような設定とシーンばかりだし、クライマックスのくだりはTVの「ミステリーゾーン(トワイライトゾーン)」で全く同じ話があったほどだ。
しかし、よく考えてみたら元々「レイダース」のコンセプト自体がスピルバーグとルーカスの「昔、ラジオや映画館で楽しんだクリフハンガーものを現代に甦らせよう」だったわけだから、長年映画ファンをやっていると仕方ないのかも知れない。

物足りない部分もあるが、前作「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」よりは面白かったし、クライマックスの大仕掛けと伏線は個人的には好みだ。(まあどうやって帰れたのかは目をつむろう)
なので評価は

★★★☆☆(0.5★くらいはプラスしてもいい)

ところで、本作の重要なテーマは「時間の経過」である。
そこには70歳すぎでもまだまだ頑張れるというインディの姿もあるだろうし、その一方で裏メニューは「強い意志を持てば25年でも我慢できる」なのだろう(ちょっと違う)







題名:インディ・ジョーンズと運命のダイヤル
原題:Indiana Jones and Dial of Distiny
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ハリソン・フォード、フィービー・ウォーラー=ブリッジ、マッツ・ミケルセン、アントニオ・バンデラス
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ダークグラス

2023年07月03日 | ★★★☆☆
日時:6月23日
映画館:サロンシネマ



こちらは来館者記念の80年代風ポストカード。「恐怖倍増!戦慄の〇〇サウンド!」の惹句は欲しかった(笑)

聖地に蜘蛛は巣を張る」と同じ日に観たのがダリオ・アルジェント10年ぶりの劇場用作品「ダーク・グラス」。こちらも娼婦連続殺人事件を描いており、期せずして「恐怖の娼婦連続殺人二本立て!」

現代のローマ、コールガールをターゲットにした連続殺人が発生、主人公のコールガール、ディアナも犯人に狙われる。犯人から車で逃亡する際、中国人家族が乗る車と接触する大事故を起こしてしまう。この事故のせいで彼女は失明し、中国人家族も10歳の少年だけを残して両親は死亡する。
やがて二人は出会い、故あって共同生活を始めるが、そこに犯人の魔の手が迫る。

ダリオ・アルジェントの連続殺人ものといえば「サスペリアpart2」や「シャドー」「フェノミナ」を思い出すが、随所にらしさが散りばめられている。

今回、みんな真っ先に言うであろうが、嬉しくなるのがアルノー・ルボチーニの音楽。80年代のこの手の映画を彷彿とさせるサウンドだ。その世代にはすぐにわかるあのリズムですよ。逆に今の世代の観客には新鮮に聞こえるのだろうか。
劇中、この音楽がしつこいくらい流れ、かえってメリハリがないくらい(笑)

黒手袋も登場するし、ちょっと頭を抱えたくなるようなストーリー展開も健在。そこはアルジェント研究会の矢澤会長によると「現実世界からアルジェントの夢の世界への移行」だという。なるほど。

アルジェント好きが期待するようなビックリ仰天の殺しのテクニックはほとんど披露されないし、直接的に描かれる被害者も少ない。そんな光がどこから出ているのかと思うような極彩色で彩られた世界観も登場しない。最後に家も燃えない(笑)上映時間が短いせいとか予算とかもあるのか、その辺はちょっと残念。

今回印象的だったのは、何度も登場するシンメトリー構図の画面構成。アルジェントはこの構図を多用する人だっただろうか。

そういえば、ジャロとかイタリアホラーにはなぜか盲目の人がよく登場する。イタリア映画界の何かの暗喩なのだろうか。
観終わってから思ったのだが、本作「フェノミナ」の焼き直しのようでもある。連続殺人犯に狙われる女性というのはよくあるが、社会から疎外された主人公や〇〇〇〇な警察官をはじめとするサブキャラクター設定、犯人が判明する手がかりの設定、生理的な嫌悪感を醸す水攻め、クライマックスなど「フェノミナ」にそっくりだ。となると主人公と心を通わす中国人少年は昆虫かチンパンジーの役どころなのか?(笑)

ちょっと食い足りないところもあるので、
評価は★★★☆☆

ところで、一部のアルジェントファンには、とある重要な役でワタシが出演していたと見えるらしい(笑)







題名:ダークグラス
原題:Occhiali Neri
監督:ダリオ・アルジェント
出演:イレニア・パストレッリ、アーシア・アルジェント、アンドレア・ゲルペッリ、
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聖地には蜘蛛が巣を張る

2023年07月03日 | ★★★★☆
日時:6月23日
映画館:サロンシネマ



イランで起きた娼婦連続殺人事件を取り上げた映画。
よくこんな政治的に際どい映画を作れたなと思ったら、制作はデンマークやフランス、ドイツ、スウェーデンの合作で、ロケ地はヨルダン。監督のアリ・アバッシはテヘラン生まれ。

2000年代、イランの聖地マシュハドで娼婦の連続殺人事件が発生、女性ジャーナリストがその事件を追う。
保守的な土地柄で女性でジャーナリストというだけでハードルが立ちはだかり、まず一人で宿泊することさえ拒否される。
犯人からの犯行電話を受ける同僚ジャーナリストとともに事件を追うが、被害者が娼婦で、さらには犯人が「街の浄化」を声明していることから警察の腰も重い。絶大な権力を持つ聖職者も彼女の訴えには耳を貸さない。

同時進行で犯人の犯行も描写される。犯人は妻子のある退役軍人だが、娼婦を悪とみなして殺意が抑えられず凶行を繰り返す。犯行のシーンがハリウッドとは違って、日本映画のそれっぽくってなかなか痛々しい。

主人公はいくつかの手がかりから犯人像を絞り込み、一か八かの囮調査に乗り出す・・・

この映画の見どころの1つは試練に立ち向かう女性像で、我々の感覚ではなかなかわからない女性差別に立ち向かう。追うべきは犯人だが、周辺環境全てが不利益に働く。

主演ザーラ・アミール・エブラヒミのキリッとした顔立ちが印象的で、特に口回りとアゴのラインはワタシ好み。
犯人も犯罪と自覚しながらも、信念がゆえ凶行が止まらない。時として只ならぬ狂気がにじみ出る。

実際の事件が元になっているので、一応、事件は解決するが、重々しいしこりが残る。それももちろん一方の側からの視点なので、もう一方の側から見れば正義の行いとされるのかも知れない。

宗教が犯罪を起こすわけではないけど、時として社会は犯罪を正当化してしまいかねないという描き方で、多文化についていろいろと思いを巡らせ、ちょっとアラビア語の読み方も学びたくなったので、
評価は★★★★☆。

ところで、原題は本事件の犯人スパイダーキラーから「Holy Spider」。タイトルバックでは街中の街路の明かりを蜘蛛の巣に見立てており、これに「聖地には蜘蛛が巣を張る」とした邦題は見事だと思う。







題名:聖地には蜘蛛が巣を張る
原題:Holy Spider
監督:アリ・アバッシ
出演:ザーラ・アミール・エブラヒミ、メディ・バジェスタミ

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モリコーネ 映画が恋した音楽家

2023年03月18日 | ★★★★☆

日時:3月1日
映画館:サロンシネマ

広島では上映期間2週間で終了ギリギリに平日休みを取って観にいったのに、2週間後に再上映。オイオイ。
何でも満席が出るくらい入りが良かったらしい。確かにワタシの時も平日午前中にも関わらず、まずまずの入り。

「ドキュメンタリーで2時間半もあるのに何でですかねー」とは劇場関係者の弁。

確かに映画音楽ドキュメンタリーでこの上映時間は長い(1時間半くらいだと思っていた)し、全編を通して音楽の基礎知識とか素養がないと置いてけぼりをくらうところが多々ある。

にも関わらずロングランしているのは、それだけ世の中にマカロニ・ウエスタンファンが多いから!・・・な訳がなく、やはりそのキャリアゆえなんだろうな。
映画人生が長ければ長いほど、どこを切り取っても聴いたフレーズ、見覚えのある場面に出会うことができる。

モリコーネ本人へのインタビューは深く、矜持と自虐が入り混じった職人としての生き様や、生涯学究の徒のような人生への向き合い方など感嘆しかない。
他の音楽家も同じような思いで仕事しているんだろうけど、モリコーネでしか語れない独特の風格がある。

他のインタビュイーの多彩さも魅力で、半分くらいは誰か分からなかったりするが、そんな中でいきなりエンツォ・G・カステラッリ親方が出てきたのはビックリ。カステラッリ作品ではモリコーネは少ないし、この文脈でカステラッリ親方に声がかかるとは思わなかった。
しぶとく元気で当時の空気感を語れる点では数少ない生き残りなのかも知れない(誉め言葉)

タランティーノなんか「いつも既存の音楽をつぎはぎしているんだから、新曲なんかいらんだろ」って言われながら、最終的にはオスカーをもたらしたわけだから、マカロニ的には感動譚であるわな。

マカロニ野郎としては一部とは言えスクリーンでマカロニが観れるだけで感激で、実質的に映画は中盤で終わったようなものなのだが。

監督が「ニューシネマパラダイス」「海の上のピアニスト」のトルナトーレということで自作の話題が多いかと思いきや、その辺の控えめな配分も好感が持てます(笑)

ということで評価は★★★★☆

にしても、「ガンマン大連合」の指揮シーンは観たかったぞ(笑)







題名:モリコーネ 映画が恋した音楽家
原題:ENNIO
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:エンニオ・モリコーネ

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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

2023年03月08日 | ★★★★★
日時:3月3日
パンフレット:990円どうやら初版には目玉つき


どんな映画かいうと、「ラ・ラ・ランド」にモンティパイソンを足して、80年代の砂漠系近未来B級SFものと「未来惑星ザルドス」をまぶして、「マトリックス」を添え、私が日頃寝てるときに見る夢を混ぜたって感じ。

要するに何でもアリで、大混乱する映画です。
ただ、作者の思いだけぶちまけて観客置いてけぼりではなく、ちゃんと笑わせるところは笑わせて、最後にはほんわかまでさせるというウルトラCを達成してます。伏線が活きている脚本も、お下劣系から鬼畜系まで含んだ独特の笑いのセンスも好きです。
宇宙が人類発生にあまりにも都合よく出来ていて、それは今いる宇宙は無限に産み出される宇宙の1つに過ぎないからである(=マルチバースが存在する)という考え方が好きで、こういった多元宇宙とか並行宇宙が舞台の作品はだいたい気に入ってます。だって、いろいろ夢想するの楽しいもん。

そのマルチバースの調和を取り戻すため奮闘するのがミッシェル・ヨー。彼女、「スタートレック/ディカバリー」でも並行宇宙でムチャクチャな活躍してました。
マルチバースで何をしても絵になるのが彼女のいいところ。1つの映画でこれだけの顔を見せたら、そりゃ主演女優賞にもノミネートされるわな。

すっかりいいおじさんになったキー・ホイ・クアンもいいのだが、ジェイミー・リー・カーティスもいいですよ。こないだ「ハロウィン」を観ましたが、あれから40年近くずっと第一線で活躍していることも、コメディエンヌぶりもステキです。
なのだが、2人以上にジェームズ・ホンの登場がいい。「ゴーストハンターズ」から30年くらい経っているはずなのに全然変わらない(笑)

ということで評価は★★★★★。
ぜひアカデミー賞を取ってほしいです。







題名:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
原題:EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONCE
監督:ダニエルズ(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)
出演:ミッシェル・ヨー、ステファニー・スー、キー・ホイ・クワン、ジェイミー・リー・カーティス
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2022年ベスト映画

2023年01月04日 | 年間ベスト3
今年は劇場鑑賞数が過去最低かも知れない。これぞという劇場公開作も少なくなったし、土日はミリシア活動に精を出していたからかも。1週間10日とか1日36時間とかにならんかな・・・

そんな中、今年のベスト映画
「シェイン/世界が愛する厄介者のうた」
Pogues大好きのワタシにとって、色んな意味で楽しくてツラかった映画。Poguesが好きだった若き日々は二度と来ないと痛感させられた。

クライ・マッチョ
荒野に立つ美しい枯れ木を眺めるかのような作品。

ベルファスト
今年は珍しくアカデミー賞ノミネートの作品を数多く見たのだが、その中で一番良くて好きだった作品。モノクロ画面が心に沁みます。

ブレットトレイン
やはり、こういうバカ映画は年1本は劇場にかからなくてはいけない。
ちなみに着ぐるみ殺し屋は最初、マシオカの役だったというのを面白いルートで教えてもらった。

ニューヨーク1997
とうとう、この作品までリバイバルで観られるとは!

アマプラ配信ものでは
「リーチャー」(オリジナルシリーズ)
「アウトロー」「ジャック・リーチャー」でトム・クルーズが演じたジャック・リーチャーが主人公のシリーズ。主人公は原作どおりでっかい人になり、多くの登場人物と重なり合う事件がうまいこと映像化されている。

「シエラ・デ・コブレの幽霊」
これをさらっと配信するアマプラってこわいですね。

ワースト映画
トップガン:マーベリック
内容的には悪くないんだけど、居心地の悪さゆえあえてワースト認定しました。
普通のミリタリー映画なら全然アリなんだけど、「良かった!感動した!」という世の中の風潮にはやはり違和感があった。
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ブレット・トレイン

2022年09月22日 | ★★★★☆


謎のアタッシェケース強奪を依頼され、新幹線(なのか?)に乗り込んだブラピがいろいろ仕組まれたトラブルに巻き込まれるインバウンド・アクション映画。

スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」とか「コンティニュー」とか個性豊かな(というか行き当たりばったりな)殺し屋がバトルロワイヤルする映画って好きなんですよ。

なのでいいですね。誤った方向で誇張されまくった日本(らしき国)で殺し屋大乱闘(笑)
東京発京都着の新幹線「ゆかり」は夜行特急だし、富士山は岐阜か滋賀あたりにあるし、新幹線の中には着ぐるみキャラクターが常駐しておもてなししてくれるし、今はなき食堂車にはバーカウンターがあって大吟醸が置いてあるし、ヤクザの本拠地には鳥居があるし、ツッコミどころというよりもうこういった世界観だと楽しむのが一番。

最初、ちょっとストーリーが分かりにくいきらいもありますが、殺し合いを繰り返すうちに徐々に全体像が見えてくる。なんだかんだと引き込まれます。(伏線が見事という評価もありましたが、これは伏線とは言わん。)

配役的には暴力系アメコミ映画の常連の顔ぶれが良くて、こういった肩の力の抜けた映画にはハマリ役のチャニング・テイタムとライアン・レイノルズのカメオ出演がいい。そしてサンドラ・ブロックがいつもながら素敵。
あとで分かったけど、「スーサイド・スクワッド」「ザ・ボーイズ」のカレン・フクハラも可愛い!

もう「デッドプール2」「キックアス」「フリーガイ」「ザ・ロストシティ」がごっちゃになってどれがどれだがわからない!!(笑)

ワタシの映画評価の星は星になった人の数という説もありますが、
そういった面でも★★★★☆。







題名:ブレット・トレイン
原題:BULLET TRAIN
監督:デビッド・リーチ
出演:ブラッド・ピット、アーロン・テイラー・ジョンソン、ジョーイ・キング、真田広之、マイケル・シャノン、サンドラ・ブロック

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トップ・ガン/マーベリック

2022年06月05日 | ★★☆☆☆
日時:6月2日
映画館:サロンシネマ

周囲での鑑賞率がやたら高い本作、ワタシも2日前に席を確保して土曜日に観に行ったが観客の年齢層もやたら高い。皆さん、青春プレイバック(笑)

前作から実に36年、コロナでの公開延長を差し引いても30年以上前。前作を鑑賞した当時、ワタシは高校生だった。

【以下、ネタバレあり】

映画の中も同じように年を取り、米海軍のエースパイロットだったマーベリックことトムもそのスキルを最大限活用し、やりたいことだけやる気ままな海軍ライフ。
そこに艦隊司令官にまで昇りつめた旧友のアイスマン(バル・キルマー)からの直々の指名で特殊ミッションにあたる若手パイロットたちの教官を命じられる。特殊ミッションとはならず者国家のウラン濃縮プラントの爆撃破壊だった。

ちょっと待てい。戦争状態にない国に対して、米海軍はそんなことしてもいいのか?

そんなことは脇に置いてストーリーは進む。プラントは谷底の地下深くに建設されており、2段階攻撃が必要とされる爆撃作戦の特訓は過酷を極める。

ちょっと待てい。どうやったらそんな面倒くさいところにプラントが作れる。建設道路も通れないところにどうやって掘った?(劇中で説明されたと時は思わず失笑した。)

そんなことは脇に置いてストーリーははどんどん進む。
前作で事故死したパイロット、グースの息子も登場させ、前作への目配せを随所に盛り込みつつ、その一方でトムはジェニファー・コネリーとの恋愛にも忙しい。前作では若き美男美女のラブロマンスだったが、今回はイケメン壮年と美熟女(子持ち)のラブロマンス。プラント攻撃同様、観客のターゲット層もよく研究されている。おそるべしブラッカイマー。

何とか特訓も終え、いよいよミッション開始。露払いとして、いきなりトマホークミサイルでならず者国家の空港施設を破壊。

ちょっと待てい。米海軍は何の警告もなしに敵施設に猛爆撃を加えてもいいのか。飛行するF-18の頭上をミサイルの群れが追い越していく映像はなかなかカッコいいのだが、空港施設も無人ではなかろう。

そんなことは脇に置いて、いよいよプラント施設への2段階爆撃を敢行。もちろん際どいところで作戦は成功し、プラント施設は華々しく吹き飛ぶ。

ちょっと待てい。プラント施設には技術者や科学者、建設労働者など民間人はいないのか。

そんなことは脇においておいて・・・いやいやもうおいてはおいたらイカンだろ。
映画だから荒唐無稽な話は全然構わない。それが映画のいいところなのだが、それを米海軍が全面的にバックアップしていることにはさすがに違和感があるぞ。

ワタシ自身戦争映画は大好きだが、実は前作もそんなに好みではなく、むしろ同時期に公開された、アカがアメリカを占領する「若き勇者たち」の方が大好き、後年公開されたパロディ映画「ホットショット」の方が大好きなクチだったが、今回も前作に引き続いて苦手感を拭いきれなかった。

全編に感じられる「やったもの勝ち」感・・・
力のある側が力づくで勝利する映画はやっぱり面白くない。対等な勝負だったり、敗者の苦々しさだったり、逆に力ある側が貧しく弱き者たちから反撃されたりする方が映画は面白いし、そこが人生にも通じるところがあるんだな。

もちろん、米軍全面協力(と命知らずトム)による撮影、そこにデジタル技術もフル活用して、息を飲むライド的な映像と音響効果はやはりスクリーンで観る映画を実感させてくれる。

で、クライマックスは感動と噴飯の紙一重の展開。
ちょっと待てい。普通、飛行場はそんな近くにはないし、敵地では10キロ歩くのも大ごとだぞ。
とはいえ、そこに持っていく伏線の張り方なんかは感心するのだが。

Imdbのランキングが8点以上とはちょっと信じがたいが、
ワタシの評価は★★☆☆☆。

ところで、エンドクレジットの「トニー・スコットに捧ぐ」にはさすがに涙。






題名:トップ・ガン/マーベリック
原題:TOPGUN MARVERICK
監督:ジョセフ・コシンスキー
出演:トム・クルーズ、ジェニファー・コネリー、マイルズ・テラー、バル・キルマー、エド・ハリス


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ライダーズ・オブ・ジャスティス

2022年05月23日 | ★★★★☆
日時:5月9日
映画館:八丁座

マッツ・ミケルセンのデンマーク軍兵士は海外に派兵中、妻が電車事故で亡くなった知らせを受ける。帰国した彼の元に現れたのはオタクなITエンジニア。事故に遭った電車に乗り合わせており、さらにその列車に裁判で証言することになっていた過激派組織の元メンバーもいて、同様に亡くなったことに疑問をいだいていたのだ。さらにハッカーや画像処理の専門家といった仲間の協力を得て、過激派組織の一員が列車事故直前に下車していたことまで突き止めていた。
事故の背景を知ったマッツの復讐心に火が付き、過激派組織を追い詰めていく・・・という「狼よさらば」「狼の死刑宣告」「デス・ウィッシュ」などに通じる自警団(ヴィジランテ)映画。

マッツはいつもは物静かな男なのだが、暴力衝動を抑えられない一面があり、これが原因で一人娘ともぎくしゃくしている。過激派組織をぶっ殺すとなると市街地で銃撃戦はもちろんのこと、組織のメンバーを無警告で後ろから撃つことも厭わない。議論がかみ合わないと味方でも平気でぶん殴る。

一方、彼をサポートするITエンジニアメンバーも何かしら心に傷を負っており、マッツの復讐戦に関与したものの、当然、あたふたと振り回されて死にそうな思いをすることになる。さらにそこにウクライナから来た男娼も絡んでくる。

面白いのは、このように復讐を仕掛ける側がみんなどこかにコンプレックスがあり、お互いが補完しあっていく点。自警団映画ではあまりなかった視点だ。

しかし、物語が進むうち、事態は全く思いもよらない方向に転んでいく。マッツの復讐はどうなる?

登場人物の描き方もさることながら、ストーリー組み立ても面白く、不幸な事件の発端は人を思う行為だったり、その逆だったりする点。世の中は思いがけないところでリンクしており、それがどのような影響を及ぼすかは誰にもわからない。劇中でも遡って考えても何も生み出さないことが言及される。今、目の前にあることがすべてという視点は禅に通じるなあ。

大量に人が死んだ後のエンディングなのだが、なぜかハッピーエンディングにほのぼのさせられる。

たぶん映画館で見る初めてのデンマーク映画でもあり、自警団映画としても面白かったので★★★★☆

ところで、タイトルの「ライダーズ・オブ・ジャスティス」(正義の騎士団)はデンマーク原題でも同じ意なのだが、実は過激派組織の名前。しかし、マッツ一味もコインの裏表だという意味も込められているあたりに製作陣の意図が見える。






題名:ライダーズ・オブ・ジャスティス
原題:Retfaerdighedens ryttere/Riders of Justice
監督:アナス・トーマス・イェンセン
出演:マッツ・ミケルセン、ニコライ・リー・カース、アンドレア・ハイク・ガデベルグ

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オペレーション ミンスミート

2022年05月05日 | ★★★★☆
日時:5月1日
映画館:八丁座



第二次世界大戦中、イギリス軍が実施した「英国軍将校に見せかけた死体にニセ機密書類を持たせ、わざとドイツ軍の手に入れさせることでかく乱する」ミンスミート作戦の映画化。

第二次大戦中のイギリスの諜報戦と言えば、本作の原作となっている「ナチを欺いた死体: 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実」とか劇中にも登場するジョン・マスターソンの著作「二重スパイ化作戦」やマジックギャングによる偽装作戦「スエズ運河を消せ」などなかかな面白い本が多い。総じてイギリス人の謀略って・・・です。とは言えまさか本作が映画化されるとは思わなかった。

この手法そのものはかなり以前から公になっていてワタシが小学生の頃に読んだスパイ本にも書かれていたと思うし、「砂漠の戦場エルアラメイン」のパンフレットにも記載されていた覚えがある。

映画前半は偽装した死体をいかに本物に仕立て上げるかの作戦編、後半はその死体をいかにナチに信じ込ませるかの実施編。まさに「スパイ大作戦」そのまんまの展開だが、「アルゴ」のように第一線の現場に出向くわけではなく、生真面目に作戦を追ってもドキュメンタリー番組にしかならないので、盛り上げるために男女のロマンスなど交えている。面倒くさい話ではあるが、映画なので目をつむろう。

割と細部にも凝っており、007の原作者イアン・フレミングの登場はもとより、二十委員会とかダブルクロスといった専門用語が頻発されて嬉しくなってしまう。アナログな作戦展開も現代の目で見ると新鮮。ちなみに原作本で一番良く覚えているのが「死体にブーツを履かせることがどうやっても出来なかった」くだりなのだが、残念ながら映画では採用されず。

キャスティング的にはこの手の映画に王道のコリン・ファースが主役だが、もはや貫禄がありすぎて作戦に不安感を覚えないのが難。むしろ現代のオタク像を投影したかのような空軍将校、マシュー・マクファデンに好感。こういったオタオタした登場人物は昔の戦争映画にはいなかったので、すごく現代的だと思う。
ジェイソン・アイザックスは作戦の最高司令官にあたるゴドフリー提督を演じているが、「他人の提案はとにかく反対」型の官僚役はこの人の伝統芸の域に達しつつあるな(笑)
タバコをプカプカふかす当時の働く女性たちも素敵です。

この映画、演出は平坦で映画としては退屈な部類に入ると思うが、素材への真面目な取り組み方は印象が良い。この手の映画の常としてエンドクレジットで作戦の評価が出るが「イギリスが行った欺瞞作戦の中では壮大なものの1つ」と過大評価していない。よくある「この作戦が何十万人の兵士の命を救った」とか「大戦の趨勢を決した」と誇大広告な言い回し、好きじゃないんですよ。そうそう、戦争の流れはそんなことでは変わらない。
あと、最後に作戦で使用された路上生活者の死体のその後についてもちゃんと言及されたあたりはちょっと涙。

地味な映画ではあるが、個人的な趣味と思い入れもあって★★★★☆。

ところで007の原作本を読んでいると当事者しか知らないようなリアルな描写が散見されて「フレミングはやはり現場の人だな」と思わせる。「死ぬのは奴らだ」のクライマックス、ボンドは海中から敵の船に磁力爆雷を貼り付けるのだが、磁力が強くて引っ張られるのを引きもどすという描写などは現場を知る人しか書けないな。






題名:オペレーション ミンスミート
原題:Operation Mincemeat
監督:ジョン・マッデン
出演:コリン・ファース、マシュー・マクファデン、ジェイソン・アイザックス

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