kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

ファミリーツリー

2012年05月30日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:5月29日
映画館:シネツイン新天地
パンフレット:A4変形600円。監督、ジョージ・クルーニー他のインタビューがなかなか面白い内容。当然のことながら、ハワイ文化のコラム入り。

「ハイスクール白書」「アバウト・シュミット」「サイドウェイ」と中年男の悲哀を描かせたら、天下一品のアレクサンダー・ペイン監督。その新作となれば、とにかく見に行かなくては。

舞台はハワイ、主人公の働きざかりの弁護士マット・キング(ジョージ・クルーニー)は妻が事故で昏睡状態となってしまい、ギクシャクしていた娘2人との関係を見つめ直すことになる。一方、自分が先祖から引き継いだハワイの広大な土地の売却問題も抱えており、こちらも悩ましいところ。さらに、全く思いがけなかったところから家庭内不和が発覚し・・・

と、文字にすると堅いヒューマンドラマかドタバタコメディのようだが、そこはペイン監督。中年男の笑うに笑えない、でもおかしい愛情あふれる悲喜劇になっている。

まず、ジョージ・クルーニーがいい感じで、痛い目にあってもガツンと怒れない、ちょっと頼りない父親役。
ちょっと身勝手だけど家族思いの17歳の長女やおしゃまさんの10歳の次女、ダメンズなんだけど気のいい長女のボーイフレンドなど彼を取り巻く人々の描写も優しい。

さらに、口の悪い義父役がなんとロバート・フォスター、親戚がボー・ブリッジス、事件のキーパーソンがマシュー・リラードと中年以上の配役もツボを押さえている。

豊かな登場人物に加え、ハワイアンの音楽と全体にユルい展開で、人生のトラブルも大問題には見えない。(決して、そうではないのだが。)

自分の境遇とは全く違うのだが、等身大のいろんな問題を抱える主人公に「そうなんだよな~。分かるよ、その心境。男ってダメだよなあ・・・」って共感させてしまうところがペイン映画のいいところ。

ハッピーエンドとは言えないし、物事が解決する訳ではないのだが、何かささやかなんだけど心温まる救いがあるのもいいところ。

「サイドウェイ」のように泣けはしないけど、やっぱり自分の周りをもう一度、ぐるりと見渡してしまうそんな映画です。






題名:ファミリーツリー
原題:The Descendants
監督:アレキサンダー・ペイン
出演:ジョージ・クルーニー、シャイリーン・ウッドリー、アマラ・ミラー


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シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム

2012年04月14日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:4月12日
映画館:ワーナーマイカルシネマ
パンフレット:A4版変形700円。外見はともかく、中は凝ったデザインで、さらにインタビューもある充実の内容。

元々、シャーロック・ホームズもガイ・リッチーも好きなので、前作「シャーロック・ホームズ」も観ているのだが、実はあまり記憶にない。CATVで放送していても、断片的にしか思い出せない。

そんなこともあって、今回はなかなか劇場に足を運べなかった。1日だけ早く観に行ったウチの奥さん曰く
「ドンパチやりすぎ・・・疲れた。」

無駄にドンパチする映画じゃ嫌だな・・・と危惧しつつ観た今回の作品は、ガイ・リッチーらしさが前面に出ていて、完全にワタシ好みの作品だった!

前作は「よく出来たホームズ映画」だったが、今回はちゃんと「ガイ・リッチーの映画」になっているのだ。(もちろん、ホームズ映画として、モリアーティ教授を筆頭にマイクロフト・ホームズやモラン大佐も重要キャラクターとして出てくるのはお約束。)

【以下、ネタばれあり】
ガイ・リッチーらしさ 
その1 時間経過を崩した編集。
「ロック・ストック・アンド・トゥー・スモーキングバレル」や「スナッチ」で見せためまぐるしい編集が、前作ではそれほど印象的ではなかったが、今回は復活。特に兵器工場からの脱出のくだりは、見応え十分。

その2 郷土愛
郷土愛っていうのも変だけど、ガイ・リッチーの映画って、どこを切り取ってもイギリスらしさが満ちている。風景もそうだし、音楽もそう。今回もジプシーが重要なキャラクターで出てくるあたり「スナッチ」を彷彿とさせるし。

その3 映画へのオマージュ
先の「シャーロック・ホームズ」では残念ながらマカロニ描写はなかったが、今回、ジプシーと馬で国境越えをするシーンなどまさしくウエスタン調。寂寥とした山中で5人が馬で横一列に並ぶあたり、まんま「野獣、暁に死す」。(だと思いたい。)音楽でもモリコーネの「真昼の死闘」が使うあたり、うれしくなってしまう。
マシンガンにガトリング銃をバリバリってあたりをセッティングから細かく見せてくれるのも、重機関銃好きにはうれしいし、ポスターアートにもあるようにモーゼルが出てくるのもうれしい。(さらにこれがストーリー展開上、ほとんど意味がない割にスペックを事細かに説明してくれる。)

それ以上に今回は007への目配せがアリアリ。暗殺事件を皮切りにわずかな証拠からヨーロッパ中を駆け巡るプロット自体が007だし、雪深いアルプスにある城塞なんて「女王陛下の007」。整形して要人とすりかわりテロを起こすのは「007/サンダーボール作戦」、チェス対決は「ロシアより愛をこめて」を思い出さずにはいられない。まあ、ジェームズ・ボンドが先か、ホームズが先か判断しづらい部分もあるけど。

が、今回一番感じたのは「荒鷲の要塞」へのオマージュ。列車内の銃撃にあるような狭い空間での重機関銃の連射や雪中の工場の描き方、アルプスの城塞、「馬が苦手」というセリフなど「荒鷲の要塞」を思い起こさせる描写が満載。これだけならまだしも、最後にすりかえられた手帳を確認するシーンなどどうしても「荒鷲の要塞」を思い出さずにはいられない。
原作のアリスティア・マクリーンはイギリスの名冒険作家だし、そう思えば巨砲「リトル某」を発射するシーンも「ナバロンの要塞」から引っ張ってきたと思えなくもない。(って、激しい妄想だったりして)

ということで文句なしの高評価。(って、その根っこはやっぱりよくできたドンパチ(笑))





題名:シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム
原題:Sherlock Homes A Game of Shadows
監督:ガイ・リッチー
出演:ロバート・ダウニー Jr.、ジュード・ロウ、ノオミ・ラパス、ジャレッド・ハリス


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ヒューゴの不思議な発明

2012年03月20日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:3月18日
映画館:バルト11
パンフレット:A4版600円。インタビュー満載の充実した内容。特にスコセッシのインタビューは一読の価値がある。

この映画の予告編を初めて観た時、「またこの手のファンタジー映画かい。」とぼやき、さらにその監督がスコセッシと分かった時には「スコセッシも何がどうトチ狂ったんだ。この映画は観にいかんだろうな。」と思ったことをよく覚えている。

スコセッシと言えば、「タクシードライバー」であり、「カジノ」であり、「レイジング・ブル」であり、そして「グッドフェローズ」である。殴られて殺されてナンボの世界だ。

しかし、日本公開が近付くにつれ、耳にする評価は良いものばかりで、アカデミー賞にもノミネート。となれば、行った方が良いだろう。本来なら3Dなのだが、時間の都合上、2Dで観ることになった。

【以下、ネタばれあり】

1920年代のフランスで時計職人の父親が残した自動書記人形「オートマタン」とそれが描き出した一枚のイラストを巡る少年ヒューゴの冒険を描く。オープニングからスコセッシらしからぬ、CGによるパリが描かれるが、そこからヒューゴの日常を1シーン1ショットで見せるあたり、安心して観ることができる。

ヒューゴは駅に居候兼時計管理の強制労働まがいの生活を強いられているのだが、この駅のメカメカしたディテールが良い上に、駅構内にはオモチャ屋やカフェ、クリストファー・リーが経営する古本屋まであって、しかも機械いじりをして1日を過ごせるのである。なんと至福な空間だろうか。ヒューゴの悲惨さがいっそ実感できない。(笑)

ヒューゴはオートマタンの修理に自分と父親のつながりを見出そうとする・・・って、この辺の展開は、偶然だろうが先日観た「ものすごくうるさくて ありえないほど近い」に似ている。

彼は吸血鬼でキリングマシーンの少女・・・もといクロエ・グレース・モレッツの協力を得て、オートマタンの描いた絵からいまや生きる希望を失い隠居生活をしていた伝説の映像作家メリエスにたどり着く。(まあ、予告編ですでに半分わかっているのだが。)

ただ、この前後のストーリーのつながりが、原作があるといえ、いささかいびつでしっくりと腹の底に落ちてこないのは残念。

さて、後半は映画研究者の協力を得て、メリエスの復活へとつながっていく。メリエスだけでなく、黎明期の映画への愛情があらゆる形で表現され、映画好きはこの辺で涙せずにはいられない。以前、USJに「映画の歴史」みたいな上映があったが、二日酔いで観たときには感動のあまり涙がボロボロこぼれてしまったことがあるが、ちょうど、その感覚がリフレインされたって感じだ。

スコセッシの伝記や評論本を読むと、映画監督としてだけでなく、映画史の研究者としての彼の熱意が語られることが多い。それであるだけに、映画研究者が処分されたと思われていたメリエスのフィルムを発見し、レストアして、本人をゲストにした上映会を開催するというエンディングは、スコセッシの願望や執念がよく伝わってくる。

ホント、パリで本屋とか映画関係のショップをなんか行くと、「ここ地下室に何があるんだろう?何が残されているんだろう?」と秘かに興奮せずにはいられない。

最後の最後は、またスコセッシらしい1シーン1ショットで幕となる。映画ファンにとっては至福のようなひととき。(なのだが、The EndとかFinって出てほしかったのは贅沢か?)

子供向けのファンタジーとかアドベンチャーかと言えば、それはNO。やはり映画好きの大人のおとぎ話なのだ。邦題も「ヒューゴの映画的奇跡」なんて方がしっくりくる。スコセッシは自分のこども向けにこの映画を撮ったそうなので、やはり映才教育が行き届いているのでしょう。(笑)






題名:ヒューゴの不思議な発明
原題:HUGO
監督:マーティン・スコセッシ
出演:エイサ・バターフィールド、クロエ・グレース・モレッツ、ベン・キングズレー

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Sentenza di Morte (死の宣告)

2012年03月15日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:3月3日
その他:マカロニ大会での上映

マカロニ大会も第12回ともなると主催者や関係者の技術力も大幅にアップ。未公開作品を日本語字幕付きで見ることができます。

さて、玉石混交のマカロニ・ウエスタンの世界において、橋にも棒にもと言われる未公開作品群。そんな中、傑作と名高いのが本作。

マカロニ・ウエスタンにしては珍しいオムニバス作品で、前年に公開された「世にも怪奇な物語」のヒットを受けて製作されたというのは、NEKOさんの見事な読みです。

主人公が兄を殺した4人を追う典型的な復讐譚。この4人の仇がリチャード・コンテ、エンリコ・マリア・サレルノ、アドルフォ・チェリ、そしてトーマス・ミリアンという豪華な顔ぶれ。さすがに豪華すぎて4人が一堂に会する場面がないのは、マカロニならではです。(笑)

ストーリーは単純なんだけど、ヒネリが効いていて、「下手な鉄砲だけを数撃って、ヒットしない。」つまらない作品とは大違い。

作品の予算もデカく、マカロニ大会のパーティーでもその話題で持ちきり、「カメラワークが斬新!」「マカロニ5本くらい撮れそうなエキストラ数!」「雨のシーンがある!」「夜の場面がある!」と大盛り上がり。
って、今の映画にしたら、普通のシーンなんですけどね。(笑)

エンリコ・マリア・サレルノのエピソードなど出来が良すぎて、「ありゃ、サレルノが監督の後ろで恐い顔をして、これ聞こえよがしに嫌みを言って、プレッシャーをかけていたんだ。」などと噂が出る始末。

文字通り、白眉なのが、トーマス・ミリアンの怪演で、コントラストの強い画面づくりととも相まって、もはや怪奇映画。まあ、どのエピソードも強烈すぎて、「起承転結」が「起結結結」なパワーバランスになってしまっていることが、かえって問題だったりします。

製作当時、マカロニ・ウエスタンというフレームでは何をやってもよかったことが実感できます。現在、リメイクしても充分に通じる内容なんですが、複数の仇を追う設定がきっと「キル・ビル」のパクリなんて言われてしまうんだろうな。(笑)







原題:Sentenza di Morte (死の宣告)
監督:マリオ・ランフランキ
出演:ロビン・クラーク、リチャード・コンテ、エンリコ・マリア・サレルノ、アドルフォ・チェリ、トーマス・ミリアン


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ものすごくうるさくて ありえないほど近い

2012年03月12日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:3月11日(3.11に9.11の映画を観る。)
映画館:ワーナーマイカルシネマ

ワタシはこういった父親ー男の子の映画にとても弱い。「ライフ・イズ・ビューティフル」しかり「リトル・ダンサー」しかり。自分の小僧もそろそろ小学校を卒業するとあっては、必然的に涙腺も緩もうというもの。

9.11テロで父親(トム・ハンクス)を亡くした少年オスカー(トーマス・ホーン)は父親の遺品の中から1本の鍵を見つける。人生の楽しみ方を教えてくれた父親が、きっと何かを残してくれているに違いないと信じて、鍵の合う鍵を探してニューヨーク中を訪ね歩く。やがて、祖母のマンションで間借りする老人(マックス・フォン・シドー)と巡り会い・・・

メディアでも絶賛されているようにオスカー少年役のトーマス・ホーンが素晴らしい。透明感のある繊細な雰囲気がすごく良くて、それでいて現実的な存在感がある。

父親を亡くした悲劇とその存在に何とか近づこうとする中であがく姿が痛々しく、9.11テロがいかに多くの人の心に傷を残しているかが分かる。

一人の少年がニューヨークで見知らぬ人を訪ね歩いて大丈夫なのか?と心配になるが、そこは映画。ちゃんと素晴らしいオチも用意されている。さらに最近のハリウッド映画にしては珍しく、あまり余計な説明を加えず、観客の判断に委ねている部分も多い。

マックス・フォン・シドーと母親役のサンドラ・ブロックも良くて、二人ともいい年の取り方をしているよな。

ウチの小僧は主人公と似たような年頃。
まあ、こんなに賢いことの半分も言えないだろうし、行動も起こせないだろうな・・・って、案外ワタシが死んでみたら、そうでもなかったりして。

中学校にあがろうとする今はスポーツが好きで、プラモデルに本に映画に夢中だったワタシとは大違い。自分の子どもがそっち方面に全然、興味を示さないまま大きくなるなんて、全く想像もしてみなかったが、自分のやりたいことがあるのなら、そっちに全力投球してくれる方がいい。

ところで、このタイトル、なかなか秀逸で、パロディのネタとして使い勝手がいいのだが、もうちょっとヒットしてもらわないと、言った相手に分かってもらえないよな。(笑))






題名:ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
原題:EXTREMELY LOUD AND INCREDIBLY CLOSE
監督:スティーブン・ダルドリー
出演:トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、トーマス・ホーン、マックス・フォン・シドー

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法と秩序

2012年02月25日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:2月23日
映画館:広島市映像文化ライブラリー

フレデリック・ワイズマンのドキュメンタリー映画特集の1本で、1969年のカンサス・シティの警察を描くモノクロ映画。

警察に持ち込まれるのは、夫婦ゲンカ、暴行、売春婦の摘発、酔っぱらい、迷子などなど、実に様々。(しかも、事件のほとんどが黒人の低所得者層絡み。))間近でカメラが回される当事者は文句も言わないし、当然、モザイク処理もされていない。

三面記事のような事件ばかりだが、その生々しさが面白い。取り調べを受けているチンピラが「おまえらがデスクワークしている間、ヴェトナムに行ってたんだ。」とかみつくと、刑事の方が「オレは朝鮮戦争で戦っていたんだ!戦場のことをお前が言うな!」と逆ギレする展開、リアルだ。

考えてみれば、この時代の大ニュースにならないドラマチックでもない事件の映像って、あまり目にすることがない。映画もこの頃まではスタジオ撮影が中心だから、カメラが屋外に持ち出された1969年の本当の街角の映像なんて、ある意味、新鮮に映った。(近いところで言えば、「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」か。)

警官も60年代とあって、乱暴と言わないまでもやることが手荒だし、安月給に愚痴をこぼし、内輪で口論まで始めるあり様。警官の制服やパトカー、事務所のディテールなんかいいなあ。(ミスター、最高にいいよ。)

ワタシは英語ができないが、生々しい会話はニュアンスも含めて、理解したかった。警官の聴き取りに対してバアさんが「このバーニーがね、よく酔っぱらうのよ、そう、いつも、酔ってんの。このバーニーは」と何度も同じことを繰り返すさまなんて近所のオバチャンそのものだし、その感覚をネイティブとして楽しみたかった。

フレデリック・ワイズマンは他にも多くのドキュメンタリー映画を撮影している。アホな娯楽映画に損したと思うくらいなら、これらドキュメンタリー作品でアメリカの時代の息吹を感じたい。






題名:法と秩序
原題:LAW and ORDER
監督:フレデリック・ワイズマン

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ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル

2011年12月21日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:12月20日
映画館:シネツイン新天地
パンフレット:A4版変形700円。インタビュー・プロダクションノートは充実しているが、脚本や音楽のスタッフ記述がないという驚きの内容。

ワタシ「ウチの小僧と「ミッション:インポッシブル」見にいきたいよね。」
ウチの奥さん「話が分からないって。」
ワタシ「そんなことないよ、味方が犯人。」
ウチの奥さん「そういう意味じゃない。」

【以下、ネタばれあり】

いつも身内から犯罪者を輩出し、組織体質が問題視されるIMF。今回のチームメンバーはジェレミー・レナーって、どう見たってコイツが犯人じゃないか!

そんな勘繰りは早々にひっくり返され、今回の悪役は「広島・長崎は原爆から見事に復興できたのだから、人類が進化するためには全人類も同じ体験をすべきだ。」と主張して米ソ・・・もとい米露核戦争を引き起こそうとする、最近には珍しい一本気なキ○ガイ科学者さん。しかも、ホワイトグレーの三揃えが似合う堂々たる風格で、元特殊部隊員。真面目に文章にすると笑えますね。

しかし、M:Iに限らず最近の映画に多い「結局は金」というセコイ悪党に比べると、かなりの重量級なので、見ているほうも楽しくなる。

悪党に限らず、今回、上手いと思ったのは、サブキャラクターの絡ませ方。IMFメンバー各人にそれぞれ背景と伏線が用意され、役割分担して行動しているあたりがいい感じだ。これまで「どこが、スパイ大作戦?」と思うくらいトムの一人舞台の作品もあったもんな。

特にジェイミー・レナーの役どころと活躍ぶりが際だっていて、もし続編が出来るなら続投してほしいくらいなのだが、逆に見た目はともかくとして、トムを食ってしまいそうなので、次はオープニングで殉職させられるでしょう。(エミリオ・エステベスみたいに・・・)

ギミック的にもほどほどの荒唐無稽さを保っており、ロシア中を駆け巡っているであろう特殊貨車なんてなかなか斬新。こういう設定、大好き。指令電話のネタもヒネリが効いて、おかしかった。

その一方でブルジュホテルのくだりは演出的に一部もたついたところがあり、う~ん、監督か編集の手腕なのかなあ・・・。

途中、謎のキャラが出てきて、これがシリーズ第1作のマックスことヴァネッサ・レッドグローブの再登場を思わせるのだが、残念ながらワタシの思い込みに終わってしまった。ヴィング・レイムズを出すなら、彼女を出せよ。

M:I-3」の時にも書いたが、巨大な敵をトリックでだまして事件を解決するという「スパイ大作戦」の醍醐味を今回も見ることはできず、最後には力技で解決。大作映画ではそんな展開は望めないのだろうが、やはりちょっと残念だね。




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ダーティーハリー&フレンチ・コネクション

2011年11月10日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:10月30日(ダーティーハリー)、11月6日(フレンチ・コネクション)
映画館:バルト11

「ダーティーハリー」と「フレンチ・コネクション」という70年代を代表する刑事映画を2週連続上映。いいなあ~。「朝十時からの映画祭」来年もやらんかね。

さて、派手な映画が好きだった若い頃から比べると、年をくって、映画をちゃんと観ることができるようになったような気がする。当然、刑事映画の見方も変化してくる。

まず、イーストウッドの代名詞である「ダーティーハリー」。際だったハリーのキャラクターについては、もはやワタシがどうこう言うことではないだろう。

目が行くのスコルピオこと、アンディ・ロビンソン。この役をやった後、友人をなくしたという話を聞いたことがあるが、当時、こういったサイコな悪役というのは衝撃的だったろうな。(実際には、ゾディアックというモデルがいたわけだが。)

さらに、映画としてもバランスよくスコルピオの描写に力が注がれる。スコルピオが犯罪を準備し、実行に移していく様が細かく描かれるされるが、ハリーの方はなんか力技っぽい。実際、ラストに橋上でカッコよく、バスを待ち受けるハリーがどうやって、あそこにたどり着けたのか、永遠のナゾだ。(笑)マカロニから受け継がれた「荒野にたたずむ思わせぶりなガンマン」としての姿がそこにある訳だが。

ラロ・シフリンの印象的な音楽もスコルピオが登場する場面でしか使われない。ハリーの登場場面にはほとんど、音楽なし。

ダーティーハリーシリーズを思い返すと、意外なほど、シリーズもののフォーマットや前作を踏襲していないことに気づく。ハリー・キャラハンというキャラクターは一緒だが、ドラマは毎回、違う切り口・テーマだった。第1作はハリーのキャラクターであり、第2作はありえない悪役軍団であり、第3作はユニークなコンビだった。

シリーズものが続けられる要因として「いつも違う、いつも一緒」があげられるが、ダーティーハリーは「いつも一緒みたいで、実はいつも全然違う」だったんだね。



次に「フレンチ・コネクション」。主演のジーン・ハックマンはこの頃から全然変わっていない。多少、髪のボリュームが変化した程度。(TV吹替え版ではロイ・シャイダーの羽佐間道夫の声がカッコよすぎて、ルッソ刑事の方が好きだった。)

こちらは麻薬課刑事のコンビがフランスからのヘロイン輸入と対決する。が、彼らの活動のほとんどは張り込みと尾行と張り込みと尾行、時々疾走。日常生活や署内での活動は気持ちほどしか描かれない。捜査の途中経過など説明不足かと思えるくらいだ。(実際、開幕早々殺されたのが、捜査官だったかどうかは、ついに説明されない。)

人間味あふれる日常生活が描かれるのは、ヒゲのシャルニエことフェルナンド・レイやトニー・ロー・ビアンコ、マルセル・ボズフィの方。プレゼントをもらったり、うまいものを食ったり、際どい取引にやきもきしたり、取引の成功を祝ったりとリア充な毎日を送っている。

だからこそ、報われない仕事を腹立ちまぎれにこなすポパイの存在がかえって際だつのだろう。

あと、寒い寒いブルックリンにあった冬物ファッションがカッコイイ。若い頃にはダサくしか見えなかったものが、ちょうどファッションが一回りした感じだね。

改めて、この2本の映画を観ると、当時の刑事の原動力が正義心とあわせて何かに対する怒りだったように思う。法体系の不備や官僚主義、金持ちに対する怒り・・・
そういったものがにじみ出ていて、ともに暴力刑事でありながら、親近感が持てたんだろう。

という訳で、これらの映画にもろ刺激を受けた、とても分かりやすいマカロニ・ポリス・アクション「超犯罪ハイクライム/死神の骨をしゃぶれ」なんかがまた見たくなるのです。
題名:ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル
原題:MISSION:IMPOSSIBLE GHOST PROTOCOL
監督:ブラッド・バード
出演:トム・クルーズ、ジェレミー・レナー、サイモン・ペグ







題名:ダーティーハリー
原題:DIRTY HARRY
監督:ドン・シーゲル
出演:クリント・イーストウッド、ハリー・ガーディノ、アンディ・ロビンソン

題名:フレンチ・コネクション
原題:The French Connection
監督:ウィリアム・フリードキン
出演:ジーン・ハックマン、ロイ・シャイダー、フェルナンド・レイ、マルセル・ボズフィ

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007/危機一発(007ロシアより愛を込めて)

2011年10月30日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:10月19日
映画館:バルト11

今回の「朝十映画祭」で最も楽しみな1本。

ワタシはマカロニ・ウエスタンに戦争映画が大好きだが、007も大好き。

007映画の中では「007/サンダーボール作戦」や「007/私を愛したスパイ」が好きなのだが、この作品はシリーズで最高傑作の1本と評価が高い。

確かに「なるほどな。」と思わせる点が多々あって、1つはその軽さ。元々、この事件はスペクターの仕掛けた罠なのだが、そこに国家公務員のボンドが飛び込む動機は冒険心であり、女なのだ。義務感や国家への忠誠は、ここではもはや感じられない。

あと、ディテールへのこだわりとエスピオナージュものとしてのストーリー展開のバランスだろう。
次作「007ゴールドフィンガー」以降、ひみつ兵器をはじめとしたギミックに重きが置かれるようになり、スパイ映画=ひみつ兵器という図式が出来上がってしまう訳だが、ここではまだ現実的なアイディアのレベル。

しかし、チェス大会会場やスペクターのテロ養成所、ソ連大使館の地下など、妙な金のかけ方が楽しい。(悪の首領=シャム猫の構図はここから始まっている。だから、シャム猫を飼うのがワタシの夢さ。(笑))

ストーリーも善悪二元論ではなく、英国・ソ連・スペクターという三つ巴の構図が話を面白くしている。(ただ、スペクターの存在について、説明不足の感はある。ブロフェルドの第一の目的は金儲けなのだ。)

ワタシたちの世代が思うスパイ映画っぽさは、まだ本作ではあまり見えない。そういった「らしさ」は「007ゴールドフィンガー」と「007サンダーボール作戦」が1つのひな型となっているのだが、その大きな要因はゴールドフィンガーやスペクターに代表されるような分かりやすい敵役と殺し屋、そしてケン・アダムのちょっと未来的なプロダクションデザインなのだと思う。(あと、カクテル・レセプションとカジノ。)

実生活とは縁のない世界で、現実離れしていくことが、007映画が成功していく秘訣だった訳だ。

ボンドの活躍もここ数年停滞しているが、21世紀のスペクター、クアンタムが陰謀をたくらむ日が早く来てほしいものだ。(ただ、現実社会の方でもっと悪質な陰謀をやっている連中が多いから、フィクションの方も悪事を考えるのが大変だ。)

ところで、ロバート・ショーとウォルター・ゴテル、今年は随分、顔を見ているな。






題名:007/危機一発(007ロシアより愛を込めて)
原題:From Russia with Love
監督:テレンス・ヤング
出演:ショーン・コネリー、ダニエラ・ビランキ、ロバート・ショー

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ほら男爵の冒険

2011年10月15日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:10月14日
映画館:広島市映像文化ライブラリー

第二次世界大戦下、1943年のドイツ、おとぎ話「ミュンヒハウゼン:ほら男爵の冒険」を宣伝省(というかゲッベルス)肝いりで、映画化(しかもカラー!)したのが本作。戦時下であるにも関わらず、エキストラとして国防軍にまで動員がかかったとか、かからなかったとか。

18世紀、ほら男爵ことミュンヒハウゼン男爵は従者と共にロシア、トルコ、ベネチア、果ては月へと、刺激と女を求めて大冒険する様を描く。

製作年代的に戦意高揚の意図があるかと思いきや、期待(?)とは裏腹にプロパガンダ色など無く、娯楽映画として純粋に面白くて、楽しい!(終わりが見えない戦争から国民の目をそらすという意図なら大成功だ。)

高性能長距離ライフル、透明リング、超高速伝令といったひみつ兵器まで携え、ヨーロッパ中を駆け巡る冒険譚は、まるで60年代のスパイ映画のよう。フィルムの劣化により発色は悪いし、特撮技術こそ初歩的なものの、出来の悪い007もどき映画より、よっぽど良くできている。

エカテリーナの宮廷でのパーティーシーンも「山猫」には及ばないが、派手な衣装やセットなどものすごく金がかかっているのが一目瞭然。さすが、宣伝省肝いり。

このミュンヒハウゼンが冒険を求め続けるかぎり、不老不死というのがいいし、逆に最後に「人生ですべてが欲しい。あとは余生が欲しい。」と言って映画に幕をするというのもいい。「首をはねられるまで、首はつながっている。」なんてセリフもキザでカッコいい。

絶えず人生に刺激を求め続けるカッコよさ、学びたいよね。

ところで、文頭で書いた国防軍の話。何で読んだか思い出せないのだが、ミュンヒハウゼンが砲弾に乗っかているスチルは見覚えがあるんだよな。どの本だったっけ?






題名:ほら男爵の冒険
原題:MUNCHHAUSEN
監督:ヨゼフ・フォン・バキ
出演:ハンス・アルベルス、ブリギッテ・ホルナイ、レオ・スレザーク

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