kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

アジョシ

2011年10月12日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:10月7日
映画館:バルト11
パンフレット:B5版600円。ウォンビン、キム・セロン、イ監督インタビュー掲載。

「アジョシ」とは韓国語で「オジサン(というよりオッサン)」の意らしい。(亜女子でも腐女子でもない。念のため。)

【以下、ネタばれあり】

このアジョシ、黒スーツ、ボサボサ長髪というむさ苦しい格好で質屋を経営しているが、実は世捨て人になった元特殊部隊員という設定。

近くに住む女の子は彼を慕うが、ダンサーをしている女の子の母親が麻薬絡みのヤバイ仕事に手を出したばかりに、子供ともども犯罪に巻き込まれる。女の子が臓器売買組織に連れ去られたと知ったアジョシは彼女を助けに向かう・・・というお話。

元々、2つの暴力組織が対立している上、警察の麻薬捜査班まで絡んでいるから、映画は内戦状態。アジョシの行く先々で暴力と死体のオンパレードとなる。

話を面白くさせるため、利害関係者がやたら多いのだが、展開があっちこっちに行ってしまうのはちょっと難。さらに台詞を不自然にひねりすぎてて、「このシチュエーションでお前、何言うてるねん。」と思うこと、たびたび。

殺しと暴力のシーンは韓国らしくなかなか残酷で痛々しく、血の量もおびただしい。ただ、パク・チャヌク映画ほどのインパクトは残念ながら、持ち合わせていない。そこが監督の力量の違いか?

それでもラストの大殺戮は「キル・ビル」を彷彿とさせる楽しさ。まず拳銃から殺しに入り、一通り雑魚を処分した後、残りはナイフで取りかかる効率の良さ(?)。しかも、ざっくざっくと切りつけて、何度も何度も急所を刺す!(この手法がちゃんと軍事教本にあるらしい。)

最後はどんぐり目のストイックなタイ人殺し屋と対決するが、この辺はまるで「男たちの挽歌2」のよう。このタイ人殺し屋、演技を押さえろと指示されたそうだが、目元と表情からして、すでにオーバーアクト。(笑)

まあ、最後は死体の山を築いて、ハッピーエンド。(かな?)登場人物の死亡率で映画の面白さを計るワタシにとっては、なかなか高得点です。

ところで、現役の破壊工作要員が存在する韓国って、隣の国なのに、まだ休戦中にすぎないってことを実感させられますね。






題名:アジョシ
監督:イ・ジョンボム
出演:ウォンビン、キム・セロン

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X-MEN ファースト・ジェネレーション

2011年07月10日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:7月9日
映画館:バルト11

「ナチの残党が米ソを衝突させて、第三次世界大戦勃発を画策」って、なんて心躍るシチュエーションなんだろう!アメコミは守備範囲外のワタシだが、「キューバ危機」というフレームとSRー71(っぽい飛行機)が飛ぶポスターは吸引力バッチリだ。

そのスタンスが裏切られることなく、ミュータント(超能力者)+スパイ映画という21世紀にあって夢の取り合わせが絶妙のブレンドで展開する。

「X-MEN」の前日たんにあたる訳だが、そこが上手く作用して、「いい奴、悪い奴、困った奴」の三つ巴構成がストーリーに緊張感を持たせることに成功している。(もちろん、、ワタシは悪い奴ことヘルファイヤクラブと困った奴ことナチハンター、エリックのパートが大好き。)

ストーリーだけでなく、カジノ「ATOMIC」の裏に隠されたひみつ基地とかひみつ兵器、クルーザー船潜水艦といったギミック類がまんま60年代でホント、うれしくなってしまう。

配役的にも西部劇(ジョナ・ヘックス)、戦争映画(イングロリアス・バスターズ)、本作とどんどん現代劇が似合わなくなるミヒャエル・ファスベンダーに、切ない恋模様を演じるジェニファー・ローレンスがいい。(ミスティークはこれまでのシリーズでも悪い女だけど、どこか哀しいところが好き。)

中でも、ケビン・ベーコンはナチの収容所所長も007の悪役も雰囲気的に全然違うのだが、白いスーツ姿でソファにくつろぎながら、美女をはべらせて、酒を楽しむという、絵に描いたような60年代黒幕を楽しそうに演じている。3人つなげてケビン・ベーコンに行こう!

さらに、チョイ役で出てくる顔ぶれが豪華で、レッドデビルなアザゼルは顔が分からないがジェイソン・フレイリングだし、「博士の異常な愛情」ぶりな作戦室にはジェイムス・レマーとレイ・ワイズがいて、米駆逐艦の艦長が思わせぶりに双眼鏡をはずすとその下はマイケル・アイアンサイドだ。もったいぶった演出に笑ってしまった。ヴォーン監督、分かっている。あと、彼のカメオ出演にはビックリ。

最後にエンドクレジットもソール・バスかモーリス・ビンダーを思わせて素敵。

ほんと、X-MENであるがゆえに、スパイ映画として続かないのがとても残念。






題名:X-MEN ファースト・ジェネレーション
原題:X-MEN:First Class
監督:マシュー・ヴォーン
出演:ジェームス・マカヴォイ、ミヒャエル・ファスビンダー、ケビン・ベーコン

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ナバロンの要塞

2011年07月03日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:6月19日
映画館:バルト11

その昔、秘密戦隊ゴレンジャーに出てきた地底要塞の名前が「ナバローン」。ワタシが生まれて初めて映画館で見た映画が「ナバロンの嵐」。中学生のころ、ものすごくおもしろかった戦争映画が同じアリスティア・マクリーン原作の「荒鷲の要塞」。フランコ・ネロにイーストウッドとこの頃からワタシの人生はマカロニと結びついているんだ・・・って、話の展開が違うね。(笑)

この映画の日本公開って、1961年。なんと50年、半世紀前!この映画から敵地に潜入する特殊部隊モノが定着した訳だから、多くの映画のご先祖さまといえる。(そのせいか、観客もやたら平均年齢が高い。)

敵はドイツ軍だけでなく、激しい自然にスパイと多種多彩。小さい頃はドンパチに期待して、最初の暴風雨とかロッククライミングの場面は面倒くさいと思っていたが、改めて見ると海洋スポーツとか登山とかをやっているイギリスの作り手の余裕というか、お国柄みたいなものが感じられるられるんだよね。

もちろん、2門の巨砲とその爆破シーンには何度見ても感動だが、大スクリーンで見るとなおさら大感動。真面目に考えると、占領地に巨砲2門を持って行って、洞窟に設置する手間だけで、費用対効果からは割に合わないと思うのだが、そんな理屈は吹き飛ばしてしまうくらい、画としての迫力・説得力がある。映画はこうじゃなくっちゃ。(瀬戸内海の芸予要塞跡はナバロンの要塞の先輩な訳だ。)

あと、気付いたのが、グレゴリー・ペックって、口元がいいんだよな。何をしなくても、意思の強さを感じさせる形をしている。

ところで、この映画にもウォルター・ゴテルがドイツ将校役で出ていた。先の「ブラック・サンデー」といい、確か「007危機一髪/ロシアより愛をこめて」にも出ていたはず。ある意味、朝十映画祭でものすごい頻出率。






題名:ナバロンの要塞
原題:Guns of Navarone
監督:リー・J・トンプスン
出演:グレゴリー・ペック、アンソニー・クイン、デヴィッド・ニーブン

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127時間

2011年07月01日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:6月29日
映画館:シネツイン新天地

アウトドア青年アーロンは、週末、思いつきトレッキングにしゅっぱーつ。ブッチ&キャシディのワイルドバンチゆかりの砂漠の渓谷で、岩場を歩き、谷間を這いずりまわる。

砂漠と岩場と山歩きが好きなワタシは、このオープニング・シークエンスだけで、その臨場感にワクワク。こんな荒野に行きたい行きたい行きたい。このまま映画が「127時間」続いても楽しめたかも知れない。

そんな一部の特殊な観客は放っておいて、荒野のど真ん中にある谷間で、早々に落石発生。後にアーロンが述べるように、運命的か天文学的な確率で腕を挟まれ、身動きが取れなくなってしまう。ここでタイトル「127hrs」

<以下、ネタばれあり>
ここから脱出に向けた懸命の努力を続けるのだが、体力は徐々に消耗、飲み水なし、連絡手段なし。過去を振り返っているうちに幻まで見るようになり、遂に最後の手段としてポケットナイフで自ら腕を切断し、脱出を図る。
このラストの切断場面が壮絶だし、最初の荒野のシーンが良かっただけに、後日、真ん中の四苦八苦するシーンはすっぽり忘れ去ってしまうんだろうな。(笑)それを想定してか、上映時間も短めだ。

日頃から仕事でポケットナイフを使っていると、切断シーンは実感として痛さ倍増。劇場のシートの中で身がこわばってしまった。

アーロンは出発にあたって、誰にも行き先を告げておらず、よりピンチ度がアップするのだが、ワタシも山にでかける時、行き先を告げていないことがあるもんだから、この状況は笑い話ではない。「ここで落ちたら、どうやって知らせよう・・・」って思うこと少なくなんだよな。
よって、ラストの一言が自嘲気味に笑えてしまう。ワタシも以後、気をつけよう。

ところで、アーロンが家族や親族、友人が一同に会している夢を見る場面があるのだが、そこで彼は「あんたら、ワイルドバンチか。」とつぶやく。ワタシが同じことをつぶやくのは、マカロニ大会の時である。(笑)






題名:127時間
原題:127hrs
監督:ダニー・ボイル
出演:ジェームス・フランコ、トリート・ウィリアムズ(←びっくりした。)

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真夜中の刑事

2011年06月13日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
主役のイブ・モンタンはワタシたちにとって、シャンソン歌手でなく、「Z」であり、「戒厳令」である。間違っても「晴れた日に永遠が見える」などとほざいてはいけない。で、「真夜中の刑事」だ。

皆殺し商会のビッグ・ボスから「ライフルマンに会いたければ、イブ・モンタンに会え。」との指令を受け(何のこっちゃ)、実は今回、DVDで初めて観ることになる。

「真夜中の刑事」という邦題に「POLICE PYTHON 357」の原題、オープニングのアウトロー的な振る舞いに、最初、「ダーティーハリー2」か「黒い警察」のように「毒を以て、毒を制す」なストーリーかと思ったのだが、開幕30分で思いがけない展開に。

イブ・モンタンのフェロー刑事はとってもストイック。家の中は最低限の家財道具と充実した銃の手入れ道具しかない。たぶん、大人の自由時間は銃の訓練と手入れか専門誌を読むことだけなんだろうが、この辺の描写が一部の男子にはグッとくるところで、憧れのライフスタイルであることには違いない。(銃の撃ち方も堂に入ったもので、自然で滑らかな動きには感心してしまう。)

生真面目でストイックであるがだけに、一旦、道を踏み外すと、あれよあれよという間に悪夢のような迷宮に陥ってしまう。

ちょうど、同時進行でヴァンサン・カッセルの「メスリーヌ」を観ていただけに、「フランスって、こんな刑事しかおらんのか!」と疑問さえ覚えてしまう。(もっともフランス映画の刑事って、バカな役回りか狂犬みたいなのかと両極端。他国のようにカッコいい刑事ものって、あまり観た覚えがない。よほど、警察が嫌いなのか?)

もっとサスペンスフルなストーリーを期待しており、若い頃なら、この展開に違和感を覚えたところだが、年を喰ってくると、不思議な説得力を感じてしまう。大人の世界っヤツですかね。というか、もう完全に中年男の悲哀であり、そこがまた心地よかったりするのだ。

ところで、この映画の最大の被害者はイブ・モンタンの部下2人である。ムチャクチャな上司の尻拭いに翻弄される姿は涙なしにみることはできない。






題名:真夜中の刑事
原題:POLICE PYTHON 357
監督:アラン・コルノー
出演:イブ・モンタン、フランソワ・ペリエ、シモーヌ・シニョレ、ステファニア・サンドレッリ

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ブラック・サンデー

2011年06月12日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:6月11日
映画館:バルト11

「最近、朝十映画祭か映像文化ライブラリーしか観ていないんじゃないですか?」と揶揄されそうだが、実際、そうなのだから仕方がない。

今回の「午前十時の映画祭」の中で一番話題性の高い映画。というのも、1977年に日本公開予定だったが、公開直前に「公開したら劇場を爆破する」と予告があったため、急遽公開が中止となり、今回が劇場初公開となるからだ。製作がパラマウントで、早い時期からビデオ化はされていたから、幻の作品ではないが、意外と知られていなんだな。

パレスチナゲリラがベトナム帰還兵と結託し、アメリカ本土での大規模テロ作戦を計画、これを知ったイスラエル諜報機関のメンバーが阻止に向かうというストーリー。

主役のモサドに厳しい顔つきから信念「だけ」しか感じさせないロバート・ショー。いいなあ、このオッサンくささ。
共に捜査するFBIがフリッツ・ウィーバー。60~70年代のバイプレイヤーで、神経質そうな面立ちゆえ、サスペンス映画とかTVシリーズの悪役によく出ていた、好きな俳優さんのひとり。
他にもマイケル・V・ゴッツォとかKGBかナチ役しか見たことがないウォルター・ゴテルとか、当時のハリウッドは若手がいなかったのかと思わせるくらい、味わいのあるシケた顔ぶれだ。(←ほめ言葉)

一方、テロに荷担するベトナム帰還兵がブルース・ダーンのもピッタリ。(ず~っとこんな役ばっかりみたいに思える。)戦争で病んでしまった彼とパレスチナ・ゲリラのマルト・ケラーのボニー&クライドな恋愛関係が切なくていいい。

わずかな手がかりからテロ計画を追うというストーリー展開自体、「ジャッカルの日」にそっくりなのだが、ともに犯人側の行動原理や緻密な準備段階をみっちりと描くあたりが当時の流行。
本作でもブルース・ダーンが手作り爆弾(といってもかなりデカい)を地下室でコツコツ、本当にコツコツ組み上げていくんだが、こんなシーン、最近の映画では描かれないよな。主人公にせよ、悪役にせよ、こういった努力の無意味さが切なく輝いていたのが70年代だ。

クライマックスは飛行船でスーパーボウルの会場に殴り込みなのだが、それまでのじっくりとした展開から一気にノリはパニック映画となり、映画のテンションも最高潮に。大観衆のスタジアムはテロに最高の舞台だ。(もちろん映画的に。「パニック・イン・スタジアム」とかね。)
CGがなかった当時、試合風景や大観衆をどうやって再現したのか気になるところだが、おそらく実際の試合にカメラを持ち込んだんだろうな。

音楽はジョン・ウィリアムスだが、まだ、ウィリアムス節というべきフレーズは聴こえてこない。長~いエンド・クレジットとともにウィリアムスのオーケストラがガンガン流れると、80年代に突入したって思う。(笑)






題名:ブラック・サンデー
原題:BLACK SUNDAY
監督:ジョン・フランケンハイマー
出演:ロバート・ショー、ブルース・ダーン、マルト・ケラー

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M☆A☆S☆H マッシュ

2011年06月06日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:6月4日
映画館:バルト11

宮藤官九郎が以前、週刊誌のコラムに書いていたのだが、執筆に行き詰まった時は「自殺のすすめ(Suicide is Painless)」が流れるこの映画のオープニングを見返すのだそうだ。
ワタシもこのシニカルなOPが好きで、やはり仕事にツラくなった時は「自殺のすすめ」をよく聴いていたものだから、同じことを考える人がいて嬉しくなった。

「M.A.S.H.」とは「Mobile Army Surgical Hospital(移動式野戦病院)」の略だが、原題はピリオドの無い「MASH」、邦題は「M☆A☆S☆H」、ポスター表記とTVシリーズ原題は「M*A*S*H」とそれぞれ違っていて面白い。

朝鮮戦争の米軍野戦病院で、腕は良いが型破りな外科医3人が軍規を無視し、権威にへつらうことなく、派手なイタズラをしながら軍務を全うしていくブラック・コメディー。
この映画が作られた1970年はベトナム戦争まっただ中。厭戦気分を反映してか、主人公たち3人の反権力な破天荒ぶりも尋常じゃない。今、同じテーマを取り上げても、ただのコメディ映画にしかならないだろうが、「バカげた戦争なんか、やってられっか。」というメッセージの込めた微妙なさじ加減が絶妙。当時でしかこういった脚本は書けなかっただろうし、「時代の持っている空気感」って、どうやっても再現できないよな。

戦争や軍隊に染まらない人たち、逆にその官僚・階級社会が居心地がいい人たち、翻弄される人たちにマイペースを崩さない人たちとキャラクターの描き分けかたも良くて、耳と直感が良く上官の命令を先んじてしまうレイダーなんて大好きなキャラだ。(「トロピック・サンダー」でもネタにされていた。)
あと、これまで全然気付かなかったが、フレッド・ウィリアムソンって、この映画がデビューだったんだな。

この映画のヒットを受けて、イタリアの軍隊コメディ「マッシュ・イタリアーノ」なんかも公開されて、大昔、TVで見た覚えもある。チャンスがあれば、再見したいけど、まず無理だろう。

ところで、TV放送吹き替え版は最後のシメでも「自殺のすすめ」が流れたのがとても印象的だったのだが、今回の劇場版では音楽なし。ワタシの勘違いだったのか、吹き替え版だけの演出だったのか。

追記:上記の件だが、実はサントラ盤がそういう構成になっていたので、ワタシが勘違いしていたようだ。キャスティングの読み上げに「自殺のすすめ」が被るのもなかなか味わいがあるんだけどね。






題名:M☆A☆S☆H マッシュ
原題:MASH
監督:ロバート・アルトマン
出演:ドナルド・サザーランド、エリオット・グールド、トム・スケリット

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ブラック・スワン

2011年05月13日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:5月12日
映画館:八丁座
パンフレット:A4変形版600円。白と黒を基調にした美しいデザイン

ここ最近、本当に観る映画が無い。市内の映画館がこぞってこの映画を封切り作品にしているなんて、やはり異常事態だ。

主演のナタリー・ポートマンがオスカーを受賞したことで有名になった本作品、「白鳥の湖」の主演に選ばれたバレリーナが役作りのプレッシャーからどんどん病んでいくというお話。

<以下、ネタばれと病みあり。>
最初っから、ずっと神経をヤスリで削られるような緊張感あふれる展開と音響効果で、一時も気が休まらないのだが、これが面白い。当分は再見したくないが、かといってモニターで細切れに見るにはもったいない。

生真面目すぎて、人生に面白味がない主人公は、アーティストに必要な「弾ける」ということができない。一度、手にした主演の座を降ろされないために、何とか乗り切ろうとするが、肉体的にはギリギリ、精神的には追いつめられる、幻覚まで見るようになる。この主人公の崩れ具合と執着が絶妙で、アカデミー賞も当然かな。

この自己破滅的な展開に自分と通じるところがあって、抑止がたい怒りとか焦りのあまり、自分を傷つけずにはいられない衝動(W.ライダーの自傷シーンは非常によく分かる。)や、周囲の言動に対する被害妄想なんてひとごとには思えない。最初のうちは描写が痛々しいのだが、徐々に自分と重ね合わせるとすんなり受け入れられる、心地よい狂気なのだ。(「レスラー」のイタさは受け入れられなかったのとは真逆。)

緞帳の内側で展開する物語の描写もどんどんジャーロのようになり、主人公の住むマンションなんて「サスペリア2」の殺人現場のよう。(と思った人は少なくないはずだ!)

舞台のほとんどがバレエスタジオと楽屋なので、画面の至る所に鏡が出てくるのだが、本来写り込むはずのカメラの姿をすべて消し去り、さらにバレエの激しい動きにあわせた滑るようなカメラワークが見事。

さらに見えるか見えないかのタイミングと頻度で繰り出される特殊効果も、嫌味なくらい効果的。

自分が求める完璧な演出をするために、バレリーナの感情を駒のように扱うヴァンサン・カッセル、素敵です。






題名:ブラック・スワン
原題:Black Swan
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス

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英国王のスピーチ

2011年04月14日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:4月13日
映画館:八丁座
パンフレット:A4変形版700円

RCNはずっとアップし続けていたが、映画の方は久しぶりのアップ。3月、仕事で数年ぶりの大噴火をしてしまい、ブログを書く時間もない有様。とはいえ、間隙を縫って「椿三十郎」「キャリー」「天国と地獄」「甘い生活」「トゥルー・グリッド」と5本も劇場で観ているのだから、ワタシも狂っている。

で、ちょっと落ち着いたので、劇場に足を運ぶことにしたが、震災の影響でとにかく観るものがない。「ヒアー・アフター」が公開中止になったのは、さすがにやむ得ないとしても、他の映画まで延期されるとツライ。

そこで、最後の選択肢(?)として、今年、オスカーを取りまくった「英国王のスピーチ」を観ることにした。これが「宣伝大臣のスピーチ」なら、優先順位がぐりぐりの1位だったのろうにね。(笑)

吃音だったジョージ6世をめぐる人間ドラマだが、確かにアカデミー賞の王道とでも言うべき内容。実話に基づいているらしいが、歴史秘話らしくかなり大胆に脚色してありそうな感じ。

まず、主人公2人の対比がいい。吃音に悩み、望まずして英国王になるジョージ6世と、役者志望なのだが、舞台上ですら国王になれないスピーチ専門家。2人の間にある数限りない相違が物語を自然とおもしろくしてくれるのだが、この構図はアカデミー賞の基本だな。(しかも、障害絡み。)

コリン・ファースは威厳と人間くささと吃音の混じったジョージ6世を好演、その皇族の役に「ファック!」なんて発言させる脚本を受け入れてしまう懐の深さはさすがイギリス。

一方、ジェフリー・ラッシュはいつかどこかで見たようなテンションの役柄で、この安心感はもはや伝統芸の領域だ。(笑)

おかしいのは、ガイ・ピアース。昨年の「ハート・ロッカー」同様、前座みたいな役。偶然とはいえ、アカデミー賞映画で、似たような役回りが続いている。(登場後、すぐ事故死でもするのかと思った。(本当))

映画としては無難なストーリーの割に、撮影は意外と凝っていて、思いがけない1シーン1カットの使い方とか、滑るようなドリーの多用など、観ていて飽きない。

ところで、この4月で職場の環境が若干、変わった。劇中、ジョージ6世に「自分が発言することそのものに意味があるのだ。」みたいなセリフがあったが、確かにその通りで、職場環境が変化した中、自分の立場や発言が周りに与える影響を再認識させられた次第でした。(英国王と自分を比較するなんて、相変わらずの身の程知らず。(笑))






題名:英国王のスピーチ
原題:The King's Speech
監督:トム・フーパー
出演:コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム・カーター

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キック・アス

2011年02月16日 | 洋画(良かった、面白かった、気に入った)
日時:2月15日
映画館:サロンシネマ
パンフレット:A4版700円。この内容で700円はちょっと割高感。

【以下、ネタばれあり。さらに一部の人を揶揄しているのかのように取れる表現もありますが、そういった人たちを否定するものではありません。】

広島に来る前から前評判の高いアメコミ映画。ウチの奥さん情無用のジュンコも見たがっていた。

ベッドより図体の方がでかく、下半身にエネルギーが集中しまくっている成長盛りの高校生が、スーパーヒーローに憧れ、何のパワーもないのに覆面ヒーロー「キックアス」を名乗り、世の悪を正そうとする。
一方、犯罪組織に陥れられた元警官は小学生の娘に「子連れ狼」ばりの殺しの英才教育を施し、「ビッグダディ」と「ヒットガール」として組織への復讐を果たそうとする。
さらに、「レッドミスト」なるヒーローも登場し・・・。

さて、この映画を心底、楽しめて面白がれる観客なんてどれぐらいいるんだろう。

もちろん、映画としては面白い。話の緩急のつけ具合はいいし、悪いヤツはバタバタ殺される。(ヒットガールの人気急上昇も当然だ。)さらにほろ苦く味わいのある青春映画でもある。

ところが、より笑える部分というのが、オタクな青年やちょっと頭のネジがはずれたオヤジがヒーローの仕込みをする場面であって、その辺はまるで高校生の頃、ヒーローに憧れて似たファッションをしていたり、そのまま大きくなってマカロニ大会で「当時の扮装を再現する」ことに専念している自分を見ているかのようで、楽しくもあり気恥ずかしいものもあるのだ。

逆に主人公たちの行動を単純に笑える人はオタクの楽しさと哀愁を知らない人たちだろう。オタクもしくはそれに近い人種を頭ごなしに否定する人(←周囲に少なからずいる。)はオタクが恋愛を知り、人生に新しい価値観を見出す場面に感動できるのだろうか。

そうなるとこの映画を何の抵抗もなく、心の底から楽しめるのは、本当にヒーローの扮装をして、本当に悪いヤツをブチ殺して、仮に逮捕されたり殺されたとしても親や親戚縁者、友人が悲しむ姿を見ることに何の呵責も感じない人だろう。

つまり、とても複雑な心境になる映画なんだな。(そこが最大の魅力でもある訳だが。)

とはいえ、映画的なくすぐりは満載で、例えば、「バットマン・リターンズ」でバットマンがキャットウーマンに正体をあかした時、何のメイクもない顔だったので、「おいおい、目の周りは隈取りしているはずだろう!」と劇場で突っ込んだ身には、ビッグダディの念入りなメイクは変なリアリティがあったし、拷問道具に万力を使うのは「カジノ」みたいだし、意味もなくジョン・ウーの劇場映画第1作を質問したりと、ず~っと笑える。ビッグダディが「28日後」をBGMに1シーン1カットでギャングを皆殺しにする場面も大好きだ。

特に「夕陽のガンマン」のテーマでヒットガールが殴り込みをかける場面は全身総毛立つのだが、マカロニ野郎にはあの曲は国歌として脳内の刻み込まれているので、かえってあのシーンがあとあと印象に残らないんだな。(この辺、タランティーノは微妙にツボを外す選曲センスなので、逆に彼の映画としての印象が強烈に残る。)

ただ、キックアスが最後に、成り行きとはいえギャングを殺してしまうのは、後味が悪い。彼には「イタいけど、現実」の人間であって欲しかった。

ところで、サロンシネマでは上映の待ち時間に上映作品のサントラを流すんだが、今回は「荒野の用心棒」と「夕陽のガンマン」。興奮しなくてもいいところで、無駄に興奮してしまったよ。(笑)






題名:キック・アス
原題:KICK ASS
監督:マシュー・ヴォーン
出演:アーロン・ジョンソン、クリストファー・ミンツ=ブラッセ、マーク・ストロング、クロエ・グレース・モレッツ、ニコラス・ケイジ

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