kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

アイ・イン・ザ・スカイ

2017年04月30日 | ★★★☆☆
日時:4月23日
映画館:八丁座

無人航空機(UAV)によるテロへの攻撃を巡るワンシチュエーション・ポリティカル・サスペンス。

【以下のレビューは、この映画で描かれているテクノロジーや政治的手続きがある程度現実に即しているものとして書きます。そこを疑いだすとキリがないので】

イギリス軍はケニア郊外に潜伏するイスラム系テロ組織のアジトを発見。組織に参画する英国国籍とアメリカ国籍のメンバーを確保すべく、UAVとケニアの現地工作員で偵察を行い、ケニア軍の特殊部隊を待機させる。

イギリスの軍司令部、ロンドンのホワイトホール、UAVを操作するネバダの米軍、真珠湾の米軍画像解析センター、ケニア軍現地司令部、アジト周辺を張り込む現地工作員と、時間帯も異なる場所で作戦を進行させるが、テロ組織が自爆テロを準備していることが発覚、作戦内容はメンバー確保から一転してミサイル攻撃となり、その実行を巡ってそれぞれの考えが衝突する。

一応、アクション映画っぽい演出とはなっているが、実際にはディスカッションドラマ。

ミサイル撃ちますよ→準備できました→近くに子どもがいます→撃ってもいいですか→ちょっと待て→待機→テロが実施されますがいいんですか→官僚に確認する→大臣の許可得てください→早く決めろー・・・
と、普段から耳にするような決断できない堂々巡りが延々と続く。
さらにシンガポール滞在中の英国外務大臣、北京滞在中のアメリカ国務大臣まで巻き込んで、世界中を報告連絡相談が駆け巡る展開となる。文字通り「地球儀を俯瞰する」ほうれん草。
吉本新喜劇風に言えば、「ミサイル撃つんかい、撃たんのかい、撃つんかい、撃たんのかい・・・」と言ったところだ。
ただ、「ミサイル発射中止。攻撃延期。今日は解散!」では映画的に成り立たないので、結局「ミサイル発射」しか選択肢はないのだが。

イギリス軍現場司令官ヘレン・ミレン、ホワイトホールの将軍アラン・リックマン、米軍のUAVパイロットアーロン・ポールと各人の存在感があるので、ドラマ的には緊張感が途絶えない。下手な演出だとすぐ眠くなりそうだ。

攻撃強硬派の軍幹部、目の前で人が死ぬのを見たくはない現場、何とか自分の決断を人に委ねたい官僚・政府と登場人物がステレオタイプなのは止む得ないところだが、一応、シビリアン・コントロールが機能しているあたり、軍=暴走と短絡的に捉える人たちには見て欲しい。

多分、現代社会においては軍の暴走というのは起こりにくいのだと思う。むしろ、武力を不用意に行使してしまう政治の方に問題が根深いと気づかせてくれる映画。






題名:アイ・イン・ザ・スカイ
原題:EYE IN THE SKY
監督:ギャヴィン・フッド
出演:ヘレン・ミレン、アラン・リックマン、アーロン・ポール
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ゴースト・イン・ザ・シェル

2017年04月12日 | ★★★☆☆
日時:4月9日
映画館:イオンシネマ広島
パンフレット:A4版720円。急場しのぎ感のある出来のパンフレット。

映画を観終わって、久しぶりに原作を読み返してみた。1992年の第4刷をリアルタイムで購入しているのだから、それなりに年季が入っている。
当時はコミュニストの露助のアカどもがバリバリの現役。ソ連は遠くになりにけりだ。

「攻殻」ファンは原作、押井アニメ、神山アニメなどそれぞれ好みが微妙に違うんじゃないかと思うのだが、ワタシは随所にギャグの盛り込まれた原作が好み。

人それぞれに今回の実写映画にはケチのつけたいところがあるだろう。
部隊の舞台が日本じゃないとか、都市のデザインセンスが映画的に古臭いとか、ビートたけしは荒巻に見えないとか、アクションシーンにキレがないとか、ストーリーラインが受入れられないとか、説明調のセリフが多いとか、トグサがかっこ悪いとか、公安9課の位置づけがよくわからんとか、どうやって一年足らずでクゼがスーパーテロリストになり得たとか、ジュリエット・ビノシュが老すぎとか、イシカワほかの公安9課メンバーが活躍せんとか、なんと言ってもタチコマが出んとか、まあ気になるところは数え切れない。

元々の世界観が細かく広いので、見る人によってこだわりどころの違うのは止む得ないだろうな。

のだが、実写化としては押さえるところは押さえているとも思う。何といってもスカーレット・ヨハンソンの圧倒的な存在感が下支えとなっている。(ちなみに彼女の出ている映画は「ゴーストワールド」以来なんだかんだと観ている。それだけこっち側の人なんだろう。)
バトーの再現性もハンパじゃない。
クゼはアニメ版からの引用だし、攻撃部隊もアニメ版の海坊主を思わせてくれる。クゼの存在がほぼ「人形つかい」に近いとか、それなりに脚本で頑張っているところもあるし、何と言っても多脚戦車(思考戦車=シンク)が大暴れしてくれるのは大興奮。これがリモートコントロールという点もいい。最後の最後でサイトーが登場するのもニヤリ。

バセットハウンドが出てきたり、押井作品のタイトル「イノセンス」とか「アヴァロン」がさりげなく画面に忍び込ませているあたりもセンスがいい。(気づかなかっただけで、「ビューティフル・ドリーマー」とか「パトレイバー」とかも出ていたのかも知れない。)

映画としてのパンチ力に欠けるが、個人的には続編に期待。

ところで、行きつけのバーは「攻殻」のセリフだけで盛り上がれる。ヌードバーではない。






題名:ゴースト・イン・ザ・シェル
原題:Ghost in the Shell
監督:ルパート・サンダース
出演:スカーレット・ヨハンソン、ビル−・アスベック、ビートたけし

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ヒトラーの忘れもの

2017年03月22日 | ★★★☆☆
日時:3月19日
映画館:サロンシネマ
パンフレット:残念ながら売り切れ

第二次世界大戦終了直後、デンマーク沿岸には連合国の上陸阻止のため、大量のナチの地雷が埋設されていた。デンマーク軍のラスムスン軍曹はかっての占領者であるナチの少年兵を使い、浜辺の地雷処理の任務を行う。

これまで地雷原を舞台にした映画はあったが、地雷処理をテーマにした映画は世界初ではないだろうか。爆弾処理同様、映像にはしづらいネタだが、それだけで1本の映画にする脚本と力技は上手い。
工兵出身ではない少年兵が地雷処理に慣れているわけではないので、恐ろしいほどの緊張感が続く。案の定、少年兵たちは処理を誤り、次々爆死。

占領者であったナチへの憎悪を持つラスムスン軍曹だったが、目の前で少年兵が「ママ、ママ」と泣き叫びながら死んでいく姿に彼らへの対応が徐々に変化していく。(これがSSの兵隊で、瀕死の状態でも「ハイルヒトラー!」とか「デンマークめ、共産主義者に蹂躙されろ!」と憎まれ口を叩いて死んでいったら、全然、共感しないんだろう。)

ただ、元々、戦時捕虜に地雷処理をさせるのは第二次世界大戦中、普通のことだったので、そこの道義感についてはあまり感じるところはない。「史上最大の作戦」の原作本でも、ドイツ軍捕虜が「2週間前に敷設した地雷をまた掘り返すとは思わなかった。」とぼやく場面がある。

さて、軍曹と少年兵の間に徐々に心の交流が芽生え始めるが、当然、さらなる悲劇が彼らに振りかかる・・・。

映画の尺もあってか、軍曹も少年兵もキャラクターの背景があまり語られない。軍曹に子どもがいるのかどうか、生きているのかどうかが分からないので、ちょっと感情移入がしにくい。のべ14人の少年兵もあまり説明がなく、また置かれている状況についてもほとんど語らないので、見分けがつかない。

展開としては定番だし、前述のように登場人物に感情移入しづらいので、あまり心震わすような出来ではなかった。ただし、積み上げられた35型地雷といったプロダクションデザインやデンマークのロケ地は美しい。

ところで、この映画、全編にヤバイ匂いがする。
「11人の少年を監禁して、いたぶる。」というシチュエーションからしてヤバイし、女っけは少女とその母親のみ(しかも脇役)。少年兵の二人は双子、ビンタに、ホースでの水責め、小便責め、少年兵を犬扱いなど、「そっち系かい!」と妄想するような描写が多い。(と思う。)
なんか、そっち方面で高く評価されそうだよなあ・・・。






題名:ヒトラーの忘れもの
原題:Land of Mine
監督:マーチン・サントフリート
出演:ローラン・ムラ、ルイス・ホフマン

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ザ・コンサルタント

2017年01月29日 | ★★★☆☆
日時:1月28日
映画館:バルト11

幼い頃から高機能自閉症を患うアフレック君、片田舎でしがない会計事務所を経営していると見せかけて、実はその超人的な数学的才能を活かし世界中の裏社会の会計とマネーロンダリングを手がけていた。
本職の方で依頼された大企業の会計検査で思わぬ不正を発見し、それをもみ消そうとする筋から命を狙われるが、次々と返り討ちにしていく。

ストーリーの方はアフレックのパートとその正体を追う財務省のメンバー、不正の隠蔽に死体の山を築く殺し屋集団の3つの流れが同時進行する。

主人公の正体が元特殊部隊とか殺し屋というのは最近はやりのパターンだが、最近のアメリカのTVドラマ2シーズン分くらいの展開で、伏線とマクガフィンがいたるところに盛り込まれ、「実は○○は○○でした。」なんてことになる。

話の展開が面白いので、何か原作があるのかと思いきや、映画オリジナル。多彩な登場人物と行き来する時系列をまとめているのは、脚本のうまさだな。

主人公の日常生活のさりげないディテールの描写も活きていて、キャラクターが際立っている。

あの表情ゆえ、何を考えているのかよく分からないというのはベン・アフレックのお家芸。(ゴーン・ガール)散々に叩かれた某アメコミ・ヒーローよりよっぽど、よくはまっている。

巻き込まれ型ヒロインを演じるのはアナ・ケンドリック。可愛いと思って調べてみたら、過去作が「ピッチ・パーフェクト」とかシンデレラとか、確かに今流行りの顔立ちだよ。

あと、ジョン・バーンサルとかJ・K・シモンズとか懐かしのジョン・リスゴーだとか脇役陣もいい顔揃い。ピーター・ボイルも出ている!と思ったら、これはジェフリー・タンバーだった。
ちなみにアフレックに殺人技術を叩き込む軍人の鬼父親は「狂犬」マティスに何となく似ている。

まだまだ使える設定があるので、シリーズ化してほしいなあ。

ところで、こんな記事が出ていた。
自閉症の人こそが、サイバーセキュリティの危機からぼくらを救う。
この記事が正しいかどうか別にして、興味深い記事だな。








題名:ザ・コンサルタント
原題:The Accountant
監督:ギャビン・オコナー
出演:ベン・アフレック、アナ・ケンドリック、ジョン・バーンサル、J・K・シモンズ、ジョン・リスゴー
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バイオハザード ザ・ファイナル

2017年01月08日 | ★★★☆☆
日時:1月5日
映画館:バルト11
パンフレット:B4版720円。いつものように情報満載。

ゾンビ映画の大好きなワタシ。
本ブログを始めて11年になるが、第1作はそのスタート以前のこと。もう10年以上のお付き合い。途中、色々あったが、遂にようやくファイナル。

ちなみに
バイオ・ハザード3
バイオ・ハザード4 アフターライフ
バイオ・ハザード5 リトリュビューション

前作で廃墟寸前のワシントンに集結したアリス他のメンバーだったが・・・
「実はウェスカーが仕組んだ罠だった」の一言で終了、話は仕切り直しとなる。オイッ!
続投バリバリの雰囲気で消えたミッシェル・ロドリゲスもそのままフェードアウト。オイッ!
前作はなんやったんや!

いまや風景の一部に過ぎないゾンビ群、激しい音響、細かすぎるカット割、とってつけたような無理無理のストーリー展開・・・といいとこナシ、と言っていては本シリーズは楽しめない。

ポール・WS・アンダーソン監督作品、バイオハザードシリーズは「うちの嫁さん、ジョヴォヴィッチは素敵だろっ!」を楽しみ、ムチャなトラップを笑い、暴れる巨大メカを堪能し、同年代の監督の映画偏愛を感じるものなのだ。

監督の家族愛はとどまるところを知らず、本作では遂に愛娘が登場。「ジョヴォヴィッチが娘と共演」と言えば聞こえはいいが、「監督が娘を起用」となれば身びいきにしか聞こえない。(笑)

第1作の目玉の一つだったレーザーギロチン廊下は三度目の登場。トラップだらけの社屋で働くアンブレラ社員は出世も大変だ。同社で「切られる」とか「死にそう」とかは比喩ではない。

アンダーソン監督と言えば、もう巨大メカが代名詞なのだが、今回はキャタピラで走行するオリジナル巨大装甲車が登場。無意味なくらいの重武装で悪辣の限りを尽くしてくれる。これが実物大で実走してくれていれば最高なのだが、CGっぽさもぬぐえない。一昔前はリアルなCGの技術に驚いたが、今はCGでないことの方が価値があるとは皮肉なものだ。

そして、特定ジャンル映画への偏愛。今回は、80年代ポスト・アポカリプス(核戦争後)ものの匂いがプンプンしている。「マッドマックス2」と「ニューヨーク1997」に代表されるあれらの映画。(監督もインタビューで影響を受けていると公言している。)当時の監督が直接的に描けなかった「文明が崩壊し、荒廃し廃墟と化した世界」の映像は、立派なオマージュだ。
さらにジョヴォヴィッチの残り時間時計なんか、まんまスネーク・プリスキンのそれだし(ちなみに本作の時間制限48時間には何の意味もない。)、音楽も場面場面で当時を彷彿とさせるシンセ・サウンドが流れて、ニヤリとさせられる。アメリカ人よりイタリア映画に接しやすかった英国人の監督はマカロニ系の「カー・バイオレンス」とか「ブロンクス・ウォーリアーズ」とか「マッド・ライダー」とか「サイボーグ2019」なんかも好きに違いない。そう思うと生き残りメンバーのひとり、ドクの風貌とキャラクターなんかは、まさにジョージ・イーストマンだ。

ちょいとネタバレをするなら、ウェスカーの最期なんぞはまんま「○ボ○ップ」で、吹き出しそうになったぞい。

監督の暴走ぶりばかりに目が行ってしまうが、映画界で自分の撮りたい映画を好きなように撮ることができるというのは、才能がある証拠。そこを楽しむ映画なんだろうな。

ところで、ワタシは以前からアンダーソン監督の究極の夢は、ロシア系の嫁さんを主演にして、タイガー戦車とT-34が激突する独ソ戦映画を撮ることではないかと期待している。本シリーズも一段落したので、ぜひ実現して欲しいぞ。







題名:バイオハザード ザ・ファイナル
原題:Evil Resident The Final Chapter
監督:ポール・W・S・アンダーソン
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、イアン・グレン
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X-MEN:アポカリプス

2016年08月28日 | ★★★☆☆
日時:8月27日
映画館:バルト11

X-MEN新シリーズも3作目。

今度の敵役は神っている・・・違います、神でした、エン・サバー・ヌールAKAアポカリプス。開祖のミュータントとして古代エジプトで権勢を奮うものの、旧人類どもの裏切りで地底に封印。1984年に故あって復活。エリック・レーンシャーたち現代の過激ミュータントたちを配下にし、旧人類の淘汰と支配に動き、チャールズ・エグゼビアたち現代のミュータントと対決することになる。

今回、登場するミュータントも一気に増え、さらに世代交代も更新。ジーン・グレイも登場するが、旧シリーズのファムケ・ヤンセンに比べ、ソフィー・ターナーは田舎くさいなあ・・・。
過去2作のおさらい映像も交えながら進み、三作の繋がりがすんなり頭に入ってくるのは良いのだが、新人キャラクターが増え、各人のドラマを語る必要があるため、ストーリー展開が散漫になった印象が免れない。
正直、主役が誰なのかよく分からないくらい。

ミヒャエル・ファスベンダーの活躍が乏しいのは不満だが、個人的には前作から登場したクイックシルバー君が映像ともに楽しい。

本筋に関係のないストライカー大佐も話を引っ掻き回すかのように登場。ウェポンXとしてかのお方も大暴れするのだが、完全にストーリーの腰を折ってしまっている。ピンチになったら一人脱出するストライカーのセコいヒールっぷりはベルクカッツェを彷彿とさせて悪くないのだが。

舞台は米ソの緊張感が高まった1980年代。予告編では地下サイロからミサイルが発射されるシーンなんかもあったりで、新シリーズ1作目から背景にあった第三次世界大戦がいよいよ開戦かっ?
ところが残念ながら、核ミサイル発射シーンは完全に見かけ倒し。スクランブル発信するB-52戦略爆撃機も東西ドイツの国境付近で出撃準備するワルシャワ条約機構軍の精鋭もありません。

ファースト・ジェネレーション」なんかは時代背景をうまくストーリーに反映させていて、ギミックやディテールにワクワクさせるものがあったのだが、やはり監督の好みの違いだろうか。東ベルリンの描写は時代の空気感みたいなものが出ていないし、「スター・ウォーズ/ジェダイの復讐」のギャグはあまりに寂しい。

クライマックスはカイロをぶっ壊しての一大戦闘だが、お決まりのようにみんなに見せ場があって、落ち着くところに落ち着くといった感じ。オールスターキャラ勢揃いのアメコミ映画だから仕方ないが、次第に飽きられるぞ。

ところで現在、再放送中の「バンド・オブ・ブラザーズ」にはジェームズ・マカヴォイもミヒャエル・ファスベンダーも兵士役で出ていたのだ。知らなかった。






題名:X-MEN:アポカリプス
原題:X-men:Apocalypse
監督:ブライアン・シンガー
出演:ジェームズ・マカヴォイ、ミヒャエル・ファスベンダー、オスカー・アイザックス、ジェニファー・ローレンス
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ロング・トレイル!

2016年08月21日 | ★★★☆☆
日時:8月21日
映画館:八丁座
パンフレット:A4横700円。日本のロングトレイル解説に「広島湾岸トレイル」も掲載されています。(笑)

近年、山歩きに目覚め、ロングトレイルにも興味津々のワタシ。昨年のベスト映画にリース・ウィザースプーンの「わたしに会うまでの1600キロ」を挙げたように、この手の作品は大好き。

主演がロバート・レッドフォードと、そしてニック・ノルティ!ニック・ノルティが山ですよ。きっと山中に逃亡中の強盗犯か何かと遭遇して、ガバメント片手に殺し合いになるに違いない!(←妄想)

作家ロバート・レッドフォードは人生もいよいよ黄昏時。一念発起してアパラチアン・トレイルへ挑もうとするが、さすがに一人では危険ということで、同行者を探す。当然のことながら、同年代の友人はみんなすでに老齢で全員に拒否されるなか、古い友人で付き合いの途絶えていたニック・ノルティが乗っかってくる。ただ、彼もクマのような巨漢で、何かとトラブルメーカーの匂いを漂わせている。

同じロングトレイルものをして、色々な面で「1600キロ」を比べてしまう。「1600キロ」は西海岸のパシフィックトレイルで砂漠もあるコース、一女性が過去の自分と決別するために旅をするヒューマンドラマ。こちらは東海岸のアパラチアントレイルで森林が中心、距離は倍以上、ジジイ二人のお気楽トレイルでコメディタッチ。

ロングトレイル初心者が主人公なので、トレイルグッズの高額ぶりに驚くとか周囲の人間が必要以上に心配するとか「トレイルあるある」が笑わせてくれる。ただ、ニック・ノルティが出遅れるシーンなどは山歩きするものとしては笑うべきシーンではないと思うのだが、コメディ調に演出している。

実はこの映画、面白おかしく描いているシーンで、「山歩きでそれはないだろう」と思えるシーンが多い。映画的にはいいのだろうが、山歩きするものとしてはノーだな。

予想通りニック・ノルティは行く先々で揉め事を起こしてくれる。この辺、先に観た人が「「サイド・ウェイ」みたい」と評していたが、確かに雰囲気が似ている。映画としてはロードムービー的な要素が必要だが、その辺は思った以上にあっさりしている。老いても女好きという生き様は捨てがたいが。

この手の映画は生き生きとした自然描写が見どころの一つだが、この映画の自然描写は控えめ。もっと雄大な自然を見せてくれてもいいぞ。逆に山歩きとかトレイルって基本的に同じような景色が延々と続くだけなので、その辺のグダグダ感が盛り込まれていた方が良かったと思う。

全体的に描きようが甘く、この映画の監督はトレイルを実体験したことがないのではなかろうか。トレイル映画としては「1600キロ」に軍配があがるな。

ところで、こんなもん見たら、早々に次週の行き先を考えてしまうじゃないか。






題名:ロング・トレイル!
原題:A Walk in the Woods
監督:ケン・クワピス
出演:ロバート・レッドフォード、ニック・ノルティ、エマ・トンプスン
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レジェンド 狂気の美学

2016年08月10日 | ★★★☆☆
日時:7月31日
映画館:サロンシネマ

1950年代のイギリス、実在の双子のギャング、クレイ兄弟をトム・ハーディーが1人2役で演じる。

このクレイ兄弟、1990年に「ザ・クレイズ 冷血の絆」というタイトルで映画化されており、日本でも劇場公開された。原作のノンフィクションは邦訳もされ、早川書房から出版もされている。何とも景気のいい時代。
(ちなみに、本作でもこの原作が下敷きになっている。)

先の映画の方はスパンダー・バレエのケンプ兄弟がクレイ兄弟が演じていたが、双子という設定なのに全然似ていない!ギャング映画なのに、全然面白くなかった覚えがある。

【以下ネタばれあり】

原作ノンフィクションも読んでいるのだが、ワタシが映画的に面白いと思う箇所と今回の映画製作者との視点の違いがあったなという感じ。

クレイ兄弟は仲良しの双子で、小さい頃から腕っぷしが強くボクシングでならし、やがて小さな犯罪から大きな犯罪に乗り出していく。

史実面で面白いのは、双子の利点を活かして、お互いの窮地には入れ替わることで難を逃れていく点なのだが、映画ではそういう悪知恵が一切描かれない。描きようによっては軽い犯罪コメディみたいになるのだが、彼らが犯罪者としてのし上がる重要な一面だと思う。(双子の多い欧米と日本人との感覚の違いもあるのかも知れない。)

もう一つは精神を病む弟ロニーの描写。彼は軍隊にいた頃、上官に反抗するため、精神異常を装っていたのだが、やがてそれが現実になっていく。この経緯が一切省かれ、登場早々、すでに精神病院に入っている。

双子が犯罪者として成功する過程が独特で、そこがクレイ兄弟の物語の面白さだと思っていたが、映画ではそこが描かれていないので、普通のクライムストーリーの枠に収まっている。

映画では双子と兄レジーの妻フランシスとの三角関係とも言える張り詰めた関係に焦点が当てられている。(弟ロニーはゲイだったので、男女関係ではない。)弟ロニーは病気の影響で破天荒な行為を繰り返し、犯罪ビジネスを危険にさらし、実業家としての手腕を持つ兄レジーは弟を御しつつ、組織の面倒を見て、妻との関係が悪化する。

その双子をトム・ハーディーが一人二役で毒々しさ一杯に演じるのは、それはそれで楽しいし、別人にしか見えないところはトム・ハーディーのなせる技か。ただ、ドラマの中で双子である必要性が希薄になってしまったのは残念。トムのトムによるのトムのための映画になってしまったきらいがあるな。

ところで、この手の犯罪実録物を観て思うのが、どこの世界でも成功するのはエネルギッシュで真面目な人間だな。(笑)






題名:レジェンド 狂気の美学
原題:Legend
監督:ブライアン・ヘルゲランド
出演:トム・ハーディー、エミリー・ブラウニング
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ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出

2016年07月28日 | ★★★☆☆
日時:7月24日
映画館:八丁座

最近、大英帝国がちょっとしたマイブーム。「レジェンド」を観に行きたかったが、時間が合わず同じく第二次大戦の終結が背景のこちらに作品に。

1945年の欧州戦勝記念日、時のエリザベス王女は妹のマーガレット王女と一緒に、歓喜に沸くロンドン市内にお忍びで出かけることにする。もちろん、予定どおり事が進むはずがなく、あれよあれよとトラブルが起きていく。

当時、エリザベス王女が外出した話はあったかも知れないが、映画は完全にフィクション。言うまでもなく「ローマの休日」のリアル焼き直し版なのだが、原題「A Royal Night Out」は映画「赤ちゃんのお出かけ(Baby's Day Out)」のタイトルのもじりだろう。だから、ロマンチック・コメディよりむしろドタバタ劇を意識しているのかも知れない。

監視役の近衛兵から逃れ、大混乱のロンドン市内で姉妹は離れ離れになり、何も知らない口が悪い武骨な兵隊に助けられるという、お約束の少女マンガのような展開。

エキストラとセットを駆使したロンドンはなかなかの迫力で、当時の躍動感が再現されていると思う。(比較対象を知らないので、正確なことは言えない。)カープが優勝したら、ひょっとしたら広島市内もこんな騒ぎになるのかも知れない。

実在の王室が登場するので、下々の者たちとの育ちや考え方の違いもストーリーに盛り込まれているが、そこはスパイスにすぎず、あまり本筋には関係ない。

コメディ映画らしくストーリーの緩急が激しく、王室マニアの娼館オーナーが登場すると話が一気に面白くなる。王女2人の巻き込まれ方が大胆で、単純に比較するのは無意味だが、日本の皇室で同じネタは不可能だろう。製作する方も王室も寛大だ。

若い頃ならコメディとして楽しめたのだが、大人になるとシチュエーションを想像しただけで胃が痛くなるような場面も。間抜けな将校2名の将来と彼らを怒鳴りあげる連隊長などは考えるだに恐ろしい。

ところでこの映画、ジョージ王子の笑顔→王室版「赤ちゃんのおでかけ」→「王女のおでかけ」で発想されたんじゃないだろうか。







題名:ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出
原題:A Royal Night Out
監督:ジュリアン・ジャロルド
出演:サラ・ガドン、ベル・バウリー、ジャック・レイナー、ルパート・エヴェレット、エミリー・ワトソン
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Mr.ホームズ 名探偵最後の事件

2016年05月25日 | ★★★☆☆
日時:5月23日
映画館:サロンシネマ

1947年、93歳になったシャーロック・ホームズは自分が引退することになった事件を回顧する。しかし、記憶力が衰え、事の顛末が思い出せない。日本の妙薬「山椒」にすがりながら、自分の過去の「謎」を解きあかしていく・・・

と、なかなか面白い切り口のホームズもの。

93歳のホームズを演じるのはイアン・マッカラン。「ザ・キープ」の頃からジジイ役だったが、文字通り円熟の演技。

隠居中のホームズは、お手伝いさんのローラ・リニーの寡婦とその息子と同居し、面倒を見てもらっている。先日、「ラブ・アクチュアリー」を観たばかりだったから、ローラ・リニーの容姿に特殊メイクが入っているのかと思ったが、あの映画も10年以上前のもの。単にオバサンになっただけなのね。

この映画、第二次大戦直後の現在、日本での近過去、第一次大戦前のロンドンと3つの時代を行き来しながら、ホームズの記憶を辿るユニークな構成となっている。最初、とっつきにくいが、イアン・マッカランの老衰具合がバロメーターです。(笑)

ホームズは山椒を求めて、時代や国籍がちゃんぽんになった日本を訪れ、原爆で焼け野原になった広島にやってくる。この時、原爆ドームを見て愕然とする姿はこの映画の見どころの1つ。さりげないシーンだが、原作の「最後の挨拶」を知っていると、19世紀から大量殺戮の時代になってしまったことへの絶望感・喪失感が伝わってくる。

007やホームズものは原作にあったエピソードや固有名詞、ディテールをいかに盛り込むかで、製作者側のこだわりが見えて面白い。事件の背景に「死後の世界」があるあたり、コナン・ドイルがオカルトに傾倒したことを思い出させる。

本作では兄マイクロフトもハドソン夫人もすでに鬼籍に入っている。エンディングでホームズが彼らを偲ぶシーンは一つの時代の終焉を感じさせ寂しくなってしまう。
(余談だが、正典のホームズものは長編・短編あわせて60の事件がある。昔、暇な時にはこの60の事件を書き出してみていた。(笑)

この映画で全編通して語られるのは、老いや孤独の哀しさであり、そう遠くない自分の未来を重ねてしまう。救いとなるのは同居する少年。印象的な顔立ちで、利発そうな少年と頑固な老人の交流は、憧れの構図だ。(現実はそうではない。)

ところで、老人の介護について、似たような状況を抱える我が家。あるシーンをウチの奥さんに話したら「全くその通りだ。」と激しく同意していました。






題名:Mr.ホームズ 名探偵最後の事件
原題:Mr. Holmes
監督:ビル・コンドン
出演:イアン・マッケラン、ローラー・リニー、ミロ・パーカー
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