kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

2017年ベスト映画

2018年01月02日 | 年間ベスト3

2017年は前年の「この世界の片隅に」のように圧倒的な作品がなかった反面、良い映画も多い一年でした。裏を返せばシネコンでヒット映画はロングランするけど、クセのある作品やツマラナイ作品は上映回数が減ったからでしょう。(上映期間1週間、上映回数1日1回、日中の作品など、そもそも観るのがかなり大変。)

広島について言えば、八丁座・サロンシネマがロードショー系中心になったことを受けて、イオンシネマがマイナー作品を積極的に上映するようになったのは大きな変化。「お嬢さん」とか「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」「ありがとうトニー・エルドマン」「ハイドリヒを撃て」なんて、かってはサロンシネマでかかる映画でしたよ。

ベスト映画
ベイビードライバー
新しい映画ジャンルの誕生。どこを切り取っても面白い映画ってなかなか無いです。

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ
イタリア映画、ダークなヒーローアクション、日本アニメ。いいですねー

■ハクソー・リッジ、ダンケルク、ハイドリヒを撃てヒトラーの忘れ物、戦争のはらわた、激動の昭和史沖縄決戦、ワルシャワ44
映像文化ライブラリーを含め、第二次世界大戦モノがこれだけあったんだ。と改めて感じる充実ぶり。他にも「チリの闘い」「アルジェの戦い」も観ましたが、善悪の境目のテーマが多く、非人間性というものがなぜ、どこから生じるのか考えさせられました。

その他、「ザ・コンサルタント」「キングコング/骸骨島の巨神(ポスター最高!!)」「アトミック・ブロンド」「IT/それが見えたら終わり(ついに上映期間2ヶ月)」「女神の見えざる手」なども面白かった。

ラ・ラ・ランド」や「ブレードランナー2049」「エイリアン・コヴェナント」などはあえて入れる気がしませんでした。面白くないワケじゃないんですが、事前情報が多すぎて、本編のインパクトが弱くなった感は否めません。

がっかり映画
エルネスト
最初の広島パートは目を剥くほど素晴らしいんだけど、キューバ、ボリビア編になると全然面白くなく、がっかり度数も高かった。若々しい理想主義と荒々しさ、暑苦しいメッセージ性、金儲けと興行師魂に満ちた70年代の同テーマ映画を観てきた身としては食い足りないことこの上なかった。今世紀の描き方としてはこうなのかも知れないけど、パワー不足。

さて、2018年も気になる映画が多数あります。楽しみ。
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ベイビードライバー

2017年09月21日 | 年間ベスト3
逃し屋ドライバーのアクション映画と当たりをつけていたが、前評判が異様に良い。上映館も少なく、上映回数がドンドン減る中、台風の間隙をついて劇場に足を運んだ。

これがカーアクション映画でミュージカルで青春映画という超ハイブリット映画にして、しかも各ジャンルで成功しているという稀有な作品。確かにこれは宣伝が難しい。

主人公の
ベイビーは幼少期の事故で耳鳴りがやまず、音楽を聞き続けることで対症療法している超A級の逃し屋ドライバー。プレタイトルから派手なカーアクションで強盗団3人を逃がす。
この後、音楽にあわせて、ワンシーンワンカットによる見事なオープニングタイトル。見事すぎて、ミュージカル。

ベイビーは因縁あってケビン・スペイシーの犯罪コーディネーター(「黄金の七人」の教授の悪質版みたいな感じ。)に安くで雇われ強盗事件の手助けをしているが、それもそろそろ終了。最後の仕事と前後してダイナーのウェイトレスと恋に落ちる。しかし、最後の仕事のメンバーがサイコな黒人犯罪者ジェイミー・フォックスと、ジョン・ハム+ラテン美女の凶暴カップル。当然、準備段階から混乱し・・・。

この映画、シーンごとで映画のテイストが全然変わるのだが、ちゃんと一つの流れが成立している。毎日色んなことに刺激を受ける若者の心理そのものみたいだ。
その主人公のキャラクターが立っているが、さらに脇役陣が素敵で、それぞれのキャラや会話が生きている。

過去の映画からの引用も多彩でタランティーノほど露骨ではなく、くすぐり程度で入れてくるところに唸らされるな。モンティ・パイソンの大好きスケッチ「スペイン宗教裁判」まで引っ張りだされるとねえ。
ワタシ自身は音楽方面が守備範囲でないので、そちらのネタは全く分からなかったのが残念。そこに知識があれば、更に楽しめたと思う。

カーチェイスのシーンも見事だが、鳥瞰図とかもう少しアングル的には多彩に見せてほしかったところ。
とはいえ、同じ映画1本2時間の中にこれだけキチンと詰め込めるなんてと感動せざるを得ない。

ラストは70年代・80年代の青春映画を思わせ、個人的には「レポマン」とかを思い出した。(全然違うが)
10代後半から20代前半の繊細な若い世代にぜひ、見てほしい映画。きっと人生に残る作品になると思う。

ところで、武器商人のブッチャー役は「ファンパラ」「トランザム7000」のポール・ウィリアムズじゃないか!
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皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

2017年07月02日 | 年間ベスト3
日時:6月26日
映画館:イオンシネマ広島
パンフレット:B5サイズ700円

この映画の公開を知って、すぐ歌えました。「鋼鉄ジーグ」の主題歌。幼少の頃の歌はいつまでも忘れないもんだねえ。(「邪魔大王国全滅だ!」となかなか物騒な歌詞なのだが。)

その一方で原題の「Lo chiamavano JEEG ROBOT」。この「Lo Chiamavano」はマカロニウエスタンに端を発するイタリア映画ではお決まりのフレーズで、日本で言えば「機動戦士」とか「超時空要塞」みたいにその一言でジャンルが分かる枕言葉。嬉しいねえ。

さて、主人公エンツォはローマのゴロツキで、警察に追われてティベレ河に飛び込んだところ、不法投棄されていた放射性廃棄物のドラム缶に突っ込んでしまい、スーパーパワーを得る。(首都の中心部に放射性廃棄物が投棄されているというのも、なかなかすごいが・・・)
しかし、元々はタダのチンピラ。スーパーパワーを得たと言っても、なかなか世のためには使えない。
同じマンションに住む多方面で不幸な娘アレッシアに「鋼鉄ジーグ」に重ね合されていくうちに彼の中にも変化が生じてくる。
一方、地元のゴロツキ、チンピラの間でもいざこざが発生。図らずもエンツォとアレッシアは巻き込まれていく。

日本人的な感覚で「鋼鉄ジーグ」を名乗られていると、すこしコメディめいたものを予想していたのだが、映画のテイストはシャマランの「アンブレイカブル」に近く、映画のトーンはドキュメンタリータッチの「ゴモラ」に似ている。

「鋼鉄ジーグ」がタイトルだからといって、スーパーロボットの頭部に変身するわけでもなく、ナックルボンバーもスピンストームなんて必殺技が使えるようになる訳でもない。それどころか、主人公は「鋼鉄ジーグ」さえ知らない。
おそらく「鋼鉄ジーグ」がモチーフでなかったら、日本公開も危ぶまれたであろう地味な映画。

逆にその地味さやリアルさがこの映画の素敵なところで、ああ、今、こういうヒーローが出てきたらこういう展開になるんだろうなと思わせるし、クライマックスの対決などCGによる派手派手しい活劇ばかりを見せ続けられてきたものとしては逆に新鮮。
リアルさで言えば、アフリカ系移民を使ったヤクの密輸なんかは多少、犯罪ものの知識がないと、何のことか分からないんじゃないか。(そういう描写が普通に出てくるところが、イタリアの現状を映していてコワイ。)

エンディングで流れるメロウな「鋼鉄ジーグ」イタリア語版主題歌を聴くと、そりゃ、日本語版の主題歌を口ずさみますよ。

ところで、イタリアやフランスでは日本アニメが大人気で、以前「ヤッターマン」のコスプレをやっているイタリア人が紹介されていたが、イタリア製西部劇のコスプレをやっている日本人といい勝負か。(笑)






題名:皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ
原題:Lo chiamavano JEEG ROBOT
監督:ガブリエーレ・マイネッティ
出演:クラウディオ・サンタマリア、イレニア・パストネッリ、ルカ・マリネッリ

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2016年ベスト映画

2016年12月28日 | 年間ベスト3
さて、今年のベスト映画&ガッカリ映画。
今年は例年と違い、面白い映画も多ければ、そうでない映画も多いという豊作の一年でした。

まずはベスト映画。
ヘイトフル・エイト
タランティーノで西部劇でモリコーネ。面白くない訳がない!

レヴェナント 蘇えりし者
痛くて寒くてツラい、マゾな2時間半。しかし、サバイバル物として最高の出来栄え。「情無用のジャンゴ」のリメイクとしても評価。

シン・ゴジラ
いい意味で予想を大いに裏切られた快作。

この世界の片隅に
一般市民に振りかかる本物の戦争を描き、戦争映画の新しい表現を突き詰めた傑作。
本作と「仁義なき戦い」の2本立てで観たい。

「続・夕陽のガンマン」「シェーン」「地獄の黙示録」「ゲッタウェイ」
今年は再上映でも大物が多かった。時間の都合で観ることができなかったが、「ワイルド・バンチ」や「山猫」も上映されたすごい一年。
他にも「グリーン・インフェルノ」「オデッセイ」「帰ってきたヒトラー」「ローグワン スター・ウォーズストーリー」も面白かった。


さて、次は今年のガッカリ映画

白鯨との闘い
原作も読んだが、肝心の人肉食いのシーンをぼかしてしまい、毒にも薬にもならない映画に。
ただ、この映画以降18世紀&海洋ものに目覚めたという点では分岐点となった一作。

バットマンvsスーパーマン
主役はレックス・ルーサーでしょ。

マクベス
ミヒャエル・ファスベンダーなのに、盛り上がらんなあ。

ヘイル、シーザー
コーエン兄弟のコメディは、エルドレッド級で空振り多し。

ロング・トレイル
山歩きをなめとんのかー!!

来年、どんな映画が出てくるのか楽しみですね。
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この世界の片隅に

2016年11月17日 | 年間ベスト3
日時:11月16日
映画館:八丁座

まず、見終わった後で普段のささやかな幸せが実感できる映画。

戦場でワルツを」を観た時、これからリアルな戦争映画とはアニメーションによって表現されるのではないかと思ったが、おそらく今の日本でこの作品を実写で映画化することはほぼ不可能だろう。
戦中の日本を描くにはセットやロケ地は見つからないか際限なく金がかかるし、俳優は他の作品で見たことのある人ばかり。それだけの予算をかけても、日本では興行的には見合わない。
これがアニメーションなら、素晴らしい時代考証に戦時中の日常生活、原爆被災前の町並み(今の職場、レストハウスもチラッと出てきて、何とも言えない心境)、連合艦隊の艦列、市民生活に振りかかる空襲などなどが描写できるだけでなく、様々な心象も無理なくストーリーに盛り込むことができる。
名もなき普通の人の日常や感情をリアルに描けるのが、アニメーションだとは何とも皮肉な話だ。

太平洋戦争の銃後の日常が主人公すずさんの目を通して描かれるのだが、ウチのおばあちゃん(存命95歳)とすずさんは数歳違い。ところどころでウチのおばあちゃんも同じような体験をしてきたのだろうか、どのようにこれまでの半生を過ごしてきたのだろうかと、思いを馳せてしまう。おばあちゃんが本作を見たら、どう思うのだろう。

幸いなことにワタシの身内には戦災で亡くなった人はほとんどいないが、作中、人々は戦争によって、まるで手の中からこぼれ落ちるかのように、あっけなく死んでいく。

「手」がこの映画では重要なキャラクターとなっている。絵を描く手、つながれる手、愛する人たちの顔や頭に寄せられる手。優しい描線からその柔らかさやぬくもりが伝わってくる。これもアニメーションならではの表現力。
後半、それが戦争の酷い現実となって振りかかるが、終盤で見事に話が回収される。

この映画で好感が持てたのは、銃後の女性の姿だけでなく、職務に専念する男の矜持と終焉が描かれていた点。ああ、自分が生涯かけていた仕事を自分の手で幕切れさせる切なさよ。

最強のご当地映画であることは言うまでもないが、ヒロシマという点を差し引いたとしても日本人なら誰しもが見てほしいし、たぶん、見ないと後悔する映画。

ところで、映画の終盤、終戦まもない頃の呉の風景に広能昌三の声が聞こえたに違いない。そんなことはなかったとは言わせんぞお。
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シン・ゴジラ

2016年08月05日 | 年間ベスト3
日時:7月30日
映画館:バルト11
パンフレット:A4版変形820円。この内容でこの価格はちょっと割高。

公開2日目早々に親子三人で鑑賞。前回、このメンツでの鑑賞は「ジュラシック・ワールド」、その前は「レジェ・ゴジ」。怪獣映画ばっかしや。

正直、予告編を観たときは全然期待できなかった。見どころもテンポもなし。
ところが予告編通りの中身なのに、映画はむちゃくちゃ面白い!!
今夏、絶対観た方がいい映画。

虚構対現実のキャッチどおり、怪獣という大災害に対して日本政府がどう挑むかが描かれる。
元々、戦争映画の延長線上みたいな怪獣映画が好きな上、大好きな邦画の1本が「日本のいちばん長い日」なものだから、心の底から待ち望んでいた内容と言える。

開幕早々、事件発生。(東京湾内で無人のボートが漂流する様は「サンゲリア」みたい。(笑))ドキュメンタリー手法で素早く状況説明された後、場面はすぐに首相官邸へ移り、余計な人間ドラマなど隙いる余地もない。にじり寄る破滅感と後手後手の対応にテンションがどんどん上がっていく。

政府首脳は昔のオールスター映画みたいな顔触れ。昨年版の「日本のいちばん長い日」ともかぶっていて、官房長官役の柄本明が首相に見えてしまう。防災担当大臣の中村育二のことを甘利元大臣のゲスト出演と思っている人も多いことだろう。
(平泉成の役回りは「バトルスター・ギャラクティカ」みたい。(笑))

官僚の仕事の末端の端っこの隅っこの一角にいるようなワタシでさえ、共感する場面が多い。(「博士の異常な愛情」を思わせるブラックジョークのような応酬を含む。)津田寛治の厚労省課長とか市川実日子の環境省課長補佐とかなんて、本当にこんなズバ抜けて優秀でいて、付き合いにくい感じ。(←ひがみ)しかし、現実を知っていると、あの横断的組織が機能する様はすこぶるカッコいいし、大災害の後の長谷川博己の演説には本気で泣きそうだった。
(組織編制時のサントラのフレーズが「007サンダーボール作戦」みたい。(笑))

キャスティングの中でひとり浮きまくっているが、言うまでもなく石原さとみ。
完全に客寄せパンダで、観終わった後、我が家でもあの役は大地真央だの、真矢みきだの、天海祐希だのヒネリのない名前が連呼されたが、よく考えたら、あの役で説得力のある女優だったら、○○攻撃する選択肢も正当と思えたかも知れない。ここは彼女が損な役回りを引き受けたと好意的に解釈しよう。後日、某英会話学校のポスターを見たら、コイツめ!と反射的にムカッとしてしまった。(笑)

ゴジラの大破壊シーンは、前作のむにゃむにゃに似ているのは気になるし、特殊効果の仕上がりの甘さも目に付かない訳ではない。しかし、日本国内で起きる災害の迫力には大納得。自衛隊の大活躍もいいのだが、お約束としていかんせん効かない・・・。
ゴジラ対応策も時間感覚も超現実的で、スーパー兵器や他の怪獣が出てくることなどない。その分、どうオチをつけていくのか、緊張感が持続される。

そして、ちゃんと本来のゴジラの存在理由を考えさせられる。
3・11以降、出るべくして出た怪獣映画として、涙がこぼれるようだった。

ところで、鑑賞後、ウチの奥さんと小僧が米空軍の人的損害の大きさの話をしている。
「あんだけ全滅してるってひどいな。」
おい、ひょっとしてMQ-1プレデターに人が乗っていると思ってるんか?







題名:シン・ゴジラ
監督:庵野秀明、樋口真嗣
出演:長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、その他大勢
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レヴェナント 蘇えりし者

2016年05月02日 | 年間ベスト3
日時:5月1日
映画館:バルト11
パンフレット:A4版横。写真以上にテキスト情報満載。

全編、異様な緊張感に満ちた映画。
2時間半、ずっと痛いか、寒いか、つらい映像ばかり続くのだ。
観終わると、どっと疲れる。オレはマゾか。
しかし、数年に一本の大傑作。

地元民(インディアンでいいだろう。)から襲撃を受けるオープニングは19世紀版「プライベート・ライアン」。1シーンワンカットが多用される中、ハンターの一団は凄まじい勢いで殺されていく。当時は先込め銃なのでなかなかドンパチはできず、弓矢とナイフの闘いにもつれ込むから痛々しさも倍増。改めて、「プライベート・ライアン」が後世の映画に与えた影響の大きさを実感する。

その後、デカプリオがクマの襲撃を受ける。このクマのシバキ方が半端ではない。山でこんな目にあったら、どうしたらいいか分からんよなあ。

さて、とにもかくにもこの映画、撮影と映像が素晴らしい。映画の85%(直感比率)は主人公が歩む平原と森林の描写、しかも自然光。
127時間」とか「私に出会うまでの1600キロ」「ジェシー・ジェームズの暗殺」のように素晴らしい自然が写し込まれた映画はそれだけでも楽しいのだが、この映画はこれだけで入場料の価値がある。

病気とか疲労で寝込むと、起きてからもずっと体が重いものだが、主人公はずっとそんな状態。そこからリカバリーするためになかなかワイルドな手法が展開される。サウナ回復は以前、全く同じ手法をドキュメンタリー番組で観たので、インディアンの一般的なやり方なのだろう。
その他のリカバリーはひと昔前なら「十大ショック映像!」と言いたくなるような過激映像の連発。個人的にはいずれも体験してみたいのだが、女性ならドン引きしそうだな。

と、ここまで書いて気付いたのだが、この映画、「情無用のジャンゴ」と実に類似点が多い。
生き埋めにされ見捨てられた主人公の復讐、彼を助けるインディアンと非情のリンチ、むき出しの馬の内臓、頭皮剥ぎ・・・
あまりにも身にまとう映像が違うので気づかなかったが、ジム・ジャームッシュの「デッドマン」よりもテイストとしては近いと言えそうだ。

ただ、面白くないのはラスト。指をちょん切られ、ナイフまで突き刺され、いよいよ殺される寸前のトム・ハーディーが余裕のセリフを吐き、デカプリオも理性を取り戻す。

ダメでしょう!!(マカロニ的には)

トム・ハーディーが「貴様の小僧は泣きながら死んだぞ!」とか「地獄で待っててやる!」とか憎々しい恨み言を言い、デカプリオが復讐を遂げないと。
なんか一気に醒めてしまったぞい。

とにかく早々に原作を読もう。

ところで、フリントロック式の短銃を連射してはいけません。






題名:レヴェナント 蘇えりし者
原題:The Revenant
監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ
出演:レオナルド・デカプリオ、トム・ハーディー、ドーナル・グリーソン
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ヘイトフル・エイト

2016年03月07日 | 年間ベスト3
日時:3月2日
映画館:サロンシネマ
パンフレット:A4版880円。言うまでもなく、テキスト満載の盛りだくさんの内容。読むのに一週間かかる。

公開初日が「第16回マカロニ大会」と重なってしまい、更には直後にモリコーネのオスカー受賞。もう、テンションは上がる一方。ようやく観ることができました。

時間が長いうえ、ミステリー仕立ての内容、遅い公開日決定、R-18指定とプロモーション的には不利な条件ばかり。おまけにアカデミー賞と日本公開日が近いこともあって、関係者の来日プロモーションも無し。先に劇場へ行った人たちによれば、「面白かったが、劇場は人が少なかった」とのこと。

確かにタランティーノの新作映画にしては観客が少ない。マカロニ大会開催日に公開初日をぶつけてくるから、こんなことになるのだ。(負け惜しみ)

とは言え、映画そのものは非常に面白い!
一度はなくなりかけた企画、70ミリ、モリコーネの音楽、密室劇・・・と色んな話題があるのだが、全てがちゃんと機能している。3時間もじっくりと楽しめる。

余談だが、3時間もあるウエスタンはよっぽど楽しめるか、よっぽど退屈か、大きく振れるようだ。前者は「続・夕陽のガンマン」とか「ジェシー・ジェームズの暗殺」、後者は「ワイアット・アープ(コスナーのヤツ)」とか「天国の門」。

まず、オープニングの雪景色とそれにかぶる絶望的なモリコーネが素晴らしい。素晴らしい自然を写し取った映画はそれだけでスクリーンで観る価値があるというものだ。

ジャンゴ/繋がれざる者」がバリバリにマカロニウエスタンっぽかったのに対し、同じ西部劇でも本作はマカロニっぽさはない。当然のことだが、モリコーネ音楽も焼き直しではない。(今回、モリコーネがオスカーを授賞したのは、映画史に残る美しい話だと思う。)

本作は元ネタとして、カーペンターの「遊星からの物体X」が引き合いに出されるが、個人的にはそこまで類似性を感じなかった。我らがカート・ラッセルが全然別人だし、密室でも犯人は人間だからまだ安心。2万7千時間で地球上全体が呑み込まれるわけじゃない。(そうは言っても、馬小屋までの誘導ロープとか、いきなりの急展開は「物体X」のミスディレクションを彷彿とさせるのだが。)

個性的なキャラ、はじける会話、時間軸の崩し方などいずれもタランティーノ映画の色合いを強く出しているが、物語の流れがこれまでになかったくらい、一本強いものを感じる。あんまり余計なところに脱線したりしないからだろうな。また、ラストに向かう一気呵成の畳みかけ方は見事なものだ。

配役の中では、ジェニファー・ジェイソン・リーが出色。開幕時とラストでは全然、別人。この映画の彼女と言えば、終幕の大演説しか思い出さないくらいだ。(偶然だろうが、タランティーノ映画やその周辺には2世女優がよく出る。「パルプ・フィクション」のアマンダ・プラマーとか「ジャッキー・ブラウン」のブリジット・フォンダとか、付き合っていたミラ・ソルヴィーノとか「ナチュラル・ボーン・キラーズ」のジュリエット・ルイスとか・・・)

あとはウォルトン・ゴギンズ。元々、クセの強い悪役が多いし、顔も悪党顔なのだが、最後に見せる男気はカッコよすぎる。

イングロリアス・バスターズ」もそうだったが、仕掛けとオチが分かったら、もう一度見たくなる映画。いずれにしても、もう1回、必ず行くであろう。

ところで、話が急展開する銃撃はエンツォ・G・カステラッリ親方の得意技。ストーリー上、無理がある銃撃ではないのだが、タランティーノが親方映画を意識していないと言ったら嘘になるよな。






題名:ヘイトフル・エイト
原題:THE HATEFUL EIGHT
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リー、ウォルトン・ゴギンズ
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2015年ベスト

2015年12月27日 | 年間ベスト3

さて、2015年も押し迫ってきましたので、今年のワタシのベスト映画です。
今年は面白い映画は多々あったけど、ずば抜けて印象的な映画が少なかったというのが本音です。
そんな中でのベストは

わたしに会うまでの1,600キロ
山歩きの好きな者にとっては至福のような映画でした。

みんなのアムステルダム国立美術館へ
ヴィヴィアン・マイヤーを探して
世の中、面白い話がいくらでもあるなあ・・・とドキュメンタリー映画の面白さを堪能させてくれました。他にも「皆殺しのバラッド」とか「モンタナ最後のカウボーイ」とか「サム・ペキンパー情熱と美学」など10本に1本はドキュメンタリー映画。

実のところ、今年はむしろ大回顧展のような一年でした。

何度も書いたけど、スパイ映画大特集年で007ナポレオン・ソロスパイ大作戦が同じ年に公開されて、キングスマンとかイミテーション・ゲームとかまでセットでついてくるなんて、大昔でさえあり得なかったような豪華さ。

さらに「アレックス・コックス特集」(広島市映像文化ライブラリー)、「キューブリック特集」(サロンシネマ)、「横川ゾンビナイト」(横川シネマ)と、これまでワタシが好きだった(今も好きだけど)映画特集が目白押しと、まるで死ぬ前に半生を振り返ったかのような1年でした。

懐かしネタでいうと、35年ぶりぐらいに観たTVドラマ版「西部戦線異状なし」に、実はドナルド・プレゼンスとイアン・ホルムが出ていたなんて大発見でしたし、「最前線物語 リコンストラクション版」を初めて観て、あの映画の壮大さと素晴らしさを再発見できたりもしました。大昔にSFファンタジー系の本で読んだ「パワーズ・オブ・テン」という短編に現代美術館特別展で出会えたのもちょっとした感動。

さて、今年のワースト

ターミネーター/ジェニシス
痴話げんかをするために時空を超えてきたなんて、ちょっと哀しい・・・。

来年は早々から「ヘイトフル・エイト」と「オデッセイ」に期待大ですが、「高い城の男」を字幕版で見ることができるのも楽しみにしています。
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ヴィヴィアン・マイヤーを探して

2015年11月15日 | 年間ベスト3
日時:11月15日
映画館:シネツイン
パンフレット:A5版700円。このボリュームでは高いような気もするが、こんなもんか。

アートや写真、60~70年代のアメリカ文化に興味がある人にはオススメのドキュメンタリー映画。

アマチュア歴史家であるジョン・マルーフは、シカゴの歴史を書くための資料として、オークションでトランクに詰まった写真ネガを購入。ただ、写真には門外漢だった彼がさしたる関心もないまま、その写真をSNSにアップしたところ、それらの写真を絶賛する反響が巻き起こる。
あわてて、撮影者ヴィヴィアン・マイヤーを調査すると、彼女は数日前に亡くなっていたことが発覚する(ホントか!?)が、そこから本人の遺品にたどり着き、その中から1960年代から80年代に撮影された15万点にのぼる未発表の写真・ネガ・16ミリ・8ミリフィルムが見つかる。
写真を撮影していたヴィヴィアンの職業は乳母であり、その彼女の足跡をたどることになる。

現代の宝探しモノみたいな話で、劇的すぎる展開に、フェイク・ドキュメンタリーじゃないかと疑ってしまうほどの面白さ。(倉庫いっぱいに詰められ、陽の目をみないままになっているアイテムを発見することは、全ての好事家・コレクターの夢だろうな。)

事の顛末がよりドラマチックなものとなるためには、まずヴィヴィアンの写真が素晴らしいものでなくてはならないのだが、これが素人目にも「いいなあ。」と思えるストリートフォトとかポートレイト。市井の人々の生き様や子どもの笑顔の一瞬がモノクロで切り取られていて、日常生活の愛おしさとか何ともいえない哀愁とかが感じられてくる。(そのあたりの解説はプロの写真家がやってくれる。)

また、乳母をしていた子どもたちを撮影した16ミリ・8ミリフィルムには当時の世相が映し出されていて、ニュース映像にはない生き生きとした生活感が伝わってくる。(意外とこういった映像にはお目にかかることが無い。)

セルフポートレートを撮影するもの好きだったらしく、セルフィー大好きなワタシは参考になるところも多い。(笑)

天涯孤独だった彼女だが、職業が乳母だったこともあり、彼女の人となりを知る人物は多く、彼女について語られていく。
みな口をそろえて「エキセントリックだった。」「変わっていた。」「長身でファッションが独特だった。」・・・
住み込みで住んでいた家の床が傾くくらい、古新聞を貯めこんでいたというのだから、アメリカ人とその住宅事情には余裕があるというか、何というか・・・。

ただ、一風変わっている人に人を魅了する隠れた芸術センスがあるという話は大好き(アールブリュットとか・・・)なもんだから、多少、無茶苦茶でワイルドなエピソードであっても惹きつけられるものがある。それらのエピソードに裏付けられた写真は、観る側により語りかけるものがある。身近にそういう人がいたら、許容できるかどうかは別問題だが。

出自も謎が多く、偽名を名乗ったり、「私はスパイ」と語っていたり、フランス訛りがあったり(なかったり)するのだが、やがて母親のふるさとであるフランスの村にたどりつく。
ここで思いがけない発見があり、ヴィヴィアンの思いがけない一面が垣間見えるくだり、そして、その地で写真展が開催され、無名のアメリカ人が撮影した写真に何十年前の人々やその生活が描かれていたことがわかるくだりには、人間のつながりのもろさと思いがけない幸福に涙が出てくる。

ところで、こんな話が特殊な一例ではなく、氷山の一角かも知れないと思うと、何が隠れていて、人知れず処分されていくのか、世の中恐ろしいものがあるな。






題名:ヴィヴィアン・マイヤーを探して
原題:Finding Vivian Maier
監督:ジョン・マルーフ、チャーリー・シスケル
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