kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

広島県立美術館特別展「東山魁夷展 ー自然と人、そして町」

2016年09月25日 | 展覧会
「東山魁夷展 ー自然と人、そして町」
会場:広島県立美術館
会期:2016年9月17日(土)~10月30日(日)



元々日本画の表現方法が得意でない上、「京都」とか「奉納」といった単語が苦手で食わず嫌いな私。東山魁夷展などに来て大丈夫なのだろうか。

結論から言えば、私のような初心者に東山魁夷の作品の良さがよく伝わる展覧会。
作品が時系列に展示され、構図、モチーフや技法の変遷がひと目でわかるようになっている。

山歩きをして田舎の風景を楽しむ身としては、「月宵」「木霊」「秋翳」「雪の後」などの作品は、原風景として心に沁み入るかのようだ。
いずれの作品も色使いが素晴らしいが、こういった作品の実物を絶えず目にしていると、審美眼も養われるのだろうな。(呉服屋の小僧が一流の反物しか扱わせてもらえなかった話を思い出した。)

いつも思うのだが、芸術作品において驚くような色使いを出す作家というのは、被写体が実際にその色に見えるのだろうか、それとも頭の中で構成して手で再現しているのだろうか、色彩のセンスが乏しい私には非常に興味深いところ。

風景画が多く、あまり深く考えることなく、作品がすんなりと頭に入ってくる。北欧を描いた「白夜」など静謐さや肌寒さまで伝わってきて、息を飲むかのようだが、切り取られたその一瞬を共有しているかのようで、満ち足りた贅沢さを感じた。

今回の展示会の目玉は「唐招提寺御影堂障壁画」だが、唐招提寺内部を模した展示方法を含め、圧巻の一言。青色の深さと色の幅広さがまぶたに焼き付けられる。おそらくここで見なかったら、一生目にできる機会は訪れないだろう。

唐招提寺は実家からほど近いところにあるのだが、ほとんど行っていなかったし(場所が近いというのはそうしたものです。)こういった作品があること自体知らなかった。それが平成の大修繕があって、広島の地で目にすることができたのは何か縁を感じる。

ただ会場の関係で、時系列で起承転結となっている展示構成が、広島県立美術館では起承結転になっており、後半の展示はかなり面積的に厳しく、美術館の苦労がしのばれる。もっと大きな展示スペースがあればとないものねだり。球場跡地に市内三美術館と映像文化ライブラリーが1つになった総合文化施設ができれば大歓迎なのだが。

今回一番気に入った作品は先の「白夜」と「窓」。
今回の展示作品の中で「窓」だけ保護ガラスやアクリルなど作品を遮るものがなく、作品の筆使いやタッチがリアルに見て取れる。
ヨーロッパの街角を切り取って持ってきたかのような立体感でありながら、一方で絵画の表現もなされている。ちょうど2次元の絵画と3次元の立体の中間のような感じ。表現方法のカタログのようで見ていて全く飽きない。

本展覧会を観覧したのは金曜日の18時30分から。人も少なく、ゆったりと観ることができたが、大作が多い本展覧会、人が少ない時間帯を狙った方が一層楽しめるだろうな。
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