kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

アメリカン・ハッスル

2014年02月09日 | ★★★☆☆
日時:2月6日
映画館:シネツイン本通り
パンフレット:B5横版700円。

オープニングタイトルの70年代風のロゴとスローモーション撮影で一気に盛り上がる1978年、「ゾンビ」な年。
野心満々のFBI捜査官に逮捕されそうになった詐欺師とその愛人の詐欺師コンビは、起訴と引き換えにFBI捜査官発案の汚職政治家摘発の囮捜査「アブスキャム」作戦に参画することになる。ターゲットはカジノ誘致を画策する市長。詐欺師には本妻と連れ子の息子がおり、彼女の破天荒な行動が作戦を狂わせていく。つまりはコンゲーム映画の王道なのだが、チラシからは全然、そんな風に見えませんね。(笑)

基本的に主要な5人はみんな野心か色欲か金が目当ての欲望に忠実な性格。そのためには、本心を隠したり、人を騙したりし、それでどんどん話が転がっていくのは、この類の映画の基本だ。

だが、この映画の面白いところは、囮捜査(と詐欺)のパワーバランスが次々と変化していく点。
詐欺師が主導権を握っていると思わせつつ、FBI捜査官が手綱を握り、不確定要因として本妻と愛人が事態を混乱させる。汚職しているはずの市長はなかなか尻尾をつかませない。自分の流儀に反した詐欺師は、結果としてマフィアを相手にすることになり(伝説のビッグボスをノンクレジットで演じるのは、あのお方。笑っちゃいますね。)、どんどん抜き差しならない状況に追い込まれていく。

誰もが一度は話の主役となり、緊張感が途絶えることがない。絶えず画面を意識していないとどこに伏線が仕掛けられているか分からない。(実は1時間過ぎたあたりでトイレに行きたくなってしまったのだが、大事なシーンを見落とすのが怖くて、残り時間ずっとガマンしていた。(笑))

本作は数多くの賞、特に演技賞関係にノミネートされているが、それもそうだろう。脚本の妙味か、どの登場人物にも裏表があって、演じる方も面白くて仕方なかったに違いない。イギリス人を装うエイミー・アダムスネタなど、なまりがちゃんと聞き取れればもっと面白かったのだろうが、ワタシの語学力ではそこまで分からず。

よく主役の俳優が頑張りすぎて、他のキャストが付いてこれない映画があるが、クリスチャン・ベイルは押し出しするところは押し出して、控えるところは控えたバランスのいい役回り。ちなみにこの映画館で以前、観たのが「マシニスト」。他にも「アメリカン・サイコ」とか「サラマンダー」とか「ダークナイトシリーズ」とか本当に役柄の広い人だ。(笑)

ジェレミー・レナーも悪役顔で好きな俳優の一人だが、何をしても裏表があるようにしか見えないのが配役の妙。地域の発展を思い、清濁併せ呑む政治家としての手腕ゆえ、結果として被害者となるキャラクターにピッタリ。

結果として、誰もハッピーエンドにはなれないオチなのだが、こんな手法が認められるアメリカって、本当に恐ろしい。

ところで、この映画はアカデミー賞にノミネートされているが、この作品や「ウルフ・オブウォールストリート」が作品賞を受賞したら、昨年の「アルゴ」に続いて、人を騙す人の映画が続くことになりますね。






題名:アメリカン・ハッスル
原題:American Hustle
監督:デヴィッド・O・ラッセル
出演:クリスチャン・ベイル、エイミー・アダムス、ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス、ジェレミー・レナー
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