神奈川絵美の「えみごのみ」

私のイルカは自転車に乗る

歌舞伎にしろお能にしろ、日本の伝統芸能は
よく演者や役者が話題の中心になるものだ。
「▲▲だったら●●丈が一番好き」とか
「オススメは○○流の◆◆」とか。
私は伝統芸能に関してとんと初心者なので、こうした話は
とても参考になる。


それは音楽の世界でも同じこと。
とりわけジャズは、
リードをとる(旋律を担当する)のが誰か、楽器の構成はどうか、
年代は…? などで、しばしば熱い議論の種をまく。
いわゆる「ジャズ通」のオヤジが、
「○○(曲)だったら××年の誰誰のを聞かなきゃ!」みたいな
ゴリ押しをするのは正直うざったいし、
私自身は、熱弁をふるうほどのこだわりはないが…

しかし、この曲だけは別だ。
「On Green Dolphin Street」
もともとイギリスの映画音楽だったのを、マイルス・デイビスや
ジョン・コルトレーンが自分のバンドで演奏しはじめ、
今やジャズ好きならみな知っている、スタンダードナンバーだ。

日本語なら「緑のイルカ通り」。
私のイルカは、20年も前から、
Wynton Kelly(ウィントン・ケリー)という若きピアニストが率いたトリオによる、
1959年ニューヨーク録音が一番と決まっている。



スピード感にあふれた、軽快なフレーズは、
まるで新緑に囲まれたStreetを自転車ですいすいっと疾走していくよう。
この季節にぴったりの演奏だと思っている。

さあ、初夏の風を受けて、サイクリングに出かけましょう…!



少しだけ蘊蓄だが、
この演奏は最初から最後までピアノが主旋律もインプロビゼイション(即興のソロ)も
とっている。
私が調べた範囲では、
現代の主流になっている、各楽器が順番にソロをとるというスタイルは
1950年代終わり~60年代はじめ、
ジャズピアノの巨匠、ビル・エバンスによりつくられ、広まったそうだ。

もしご興味があれば、Youtubeなどでいろんな「イルカ」を
聴いてみると、あまりの雰囲気の違いにびっくりするかも…。
優雅なクルージング風やお散歩風、
ちょっとけんかっぱやい駆け足風など、
スタンダードナンバーは長く愛されるほどに、いろんな顔を持つようになるのだ。


※CDの写真はイメージです。このCDには実はOn Green~は
入っていません。収録されているのは「Kelly Blue」というアルバムです。

コメント一覧

神奈川絵美
山名騒然さま
こんにちは コメントありがとうございます。確かにオイゲン・キケロのあの「よどみなさ」はドライブにぴったりですね
この、ウィントン・ケリーのON Green~も通じるところがあるかも、と思いました。

ほかのピアニストでは、技巧派という点ではオスカー・ピーターソンや上原ひろみ、ゴンサロ・ルバルカバ等が似た傾向かも知れません。ただ一番大切なのは「眠くならない」曲選びですよねー、きっと
山名騒然
最近ジャックルシェやオイゲンキケロのバロックを基にした演奏が気にいています。
車でドライブするときに聞くといい感じです。

ジャズも悪くないですね。
神奈川絵美
セージグリーンさんへ♪
こんにちは 追悼:ハンク・ジョーンズですね。これで三兄弟(エルヴィン、サド、ハンク)はみな亡くなってしまいました…今ごろ天の上で再会を喜び合っているかもしれませんね。

私は、「雨の日こそボッサ、ボッサこそ雨の日」が持論でして おっしゃるとおり、これからはラテンの季節ですね
セージグリーン
初夏に似合うジャズ、、、
心地よい風が吹き抜けるかのような軽快な曲ですね。
先日、ハンク・ジョーンズが亡くなり、またジャズシーン
から巨星が消えました、、、。
あちらはまた正統でありながらも、洗練された都会的な
雰囲気でした。
これからはボサやラテンもいいですね、、、。
神奈川絵美
sognoさんへ♪
こんにちは この季節は軽快なジャズがいいですよねー。ウィントン・ケリーは確か30代で亡くなった早熟の天才でしたが、日本でも親しまれているピアニストの一人です。

ケニー・ドリュー(Kenny Drew)という人もオススメです。動画サイトにはないのですが、こちらはもっとヨーロピアナイズされた、現代感覚の軽快なプレイで、日本でもたいへん人気があります。

あと、よかったらぜひ聴いていただきたいのが、数日前91歳で亡くなったハンク・ジョーンズの来日公演(昨年)のgreen dolphin street

http://www.youtube.com/watch?v=89Emv-YAnWM

円熟味がある洗練されたプレイですよー。

蘊蓄オヤジが嫌いと書いておきながら、音楽の話になるとつい自分の中で盛り上がってしまいましてスミマセン。読み流してください…。
sogno
こんにちわ。もうこんな記事大好きです。
ジャズと聞いただけで高揚する自分がいますよ。毎朝立ち寄る喫茶店、今日のジャズは軽快なピアノソロでした。どれだけ救われているか!!ウイントン・ケリーさんですね?
今度チェックしてみます。気になりますもの。
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