神奈川絵美の「えみごのみ」

アズールの透文羅 -北村武資展にてー

仕事の谷間にぽっかり空いた休日は、生憎のお天気。

よせばいいのに、どうしてもこの着物を着たくて……

栗山紅型の縮緬の着物だ。
アンティークの蝶の帯と合わせてみた。
これだけだと普段着には派手目だけど、
黒っぽい羽織を着たら、なかなかいい感じで落ち着いた。

寒くても、もう3月だからとファーショールはやめて

羽織の上に、ウールレースの三角ショールを重ねたけれど、
フリンジが長くてちょっと野暮ったいですね


昼過ぎからは、泣きたくなるほどの冷たい雨。
濡れた木立の向こうにたたずむのは、竹橋の工芸館。


駅から少し歩くからだろうか、
工芸館を訪れるときはいつも一人だ。
旧き良き明治時代の洋館。外観も内装も重厚で、静か。
周りを気にせず、ふうっと自分の世界に入れる、
お気に入りの場所の一つだ。

着物好きならもうご存知だと思うが、
今、ここで人間国宝・北村武資展が開催されている。


本降りになった外の冷淡な暗さから一転、
中に入ったら神々しいまでの明るい世界が開けていた。
経錦の丸帯、そして羅の裂地。
とりわけ羅は、透け感がわかるように後ろから光を当てている。
それがまるで、春の光にゆらめく風景の一部のように、
  -山吹、浅黄、水色、青緑、そして白-
ある種の懐かしさを伴って、眼に飛び込んでくる。

一般的には渋いと言われる海老茶ですら、光を通せばどことなく
赤みを帯びて、軽やかに。

とりわけ気に入ったのは、
経錦の扇面の丸帯
(クリックすると工芸館のサイトへ。下の方にこの作品の写真があります)

そして、作品番号R-33の、「碧地透文羅(とうもんら)裂地」文化庁所蔵 だ。
(残念ながら写真はありません)

英語ではAzur(アズール)と書いてあったが、少し緑が勝っている。
規則正しい菱形をベースにした織なのだが、
光を通すことでランダムに、菱形の先が白く輝いていた。
それが、まるで水面の反射か、一斉にはばたく鳥の群れの羽先に見えて
(展示してある布は)動きようがないのに、
“生きている何か”があるかのようだった。

いつもなら、カタログを即買いして、
ここでも少し紹介したりするのだが、
今回、それをしないのは、カタログと実物があまりにも違い過ぎたから。
カタログも誠実なつくりであることはわかっているが、
私が感じた水面や鳥の羽先はどこにもない。
それだけ、実物が素晴らしいということなのだろう。

3月中旬に展示替えがあり、Ⅱ期に分けての開催。
後期もぜひ、足を運びたいと思う。




東京ミッドタウン内の、こちらの展示もなかなかでした。
陶磁器のお好きな方は、ぜひ。

コメント一覧

神奈川絵美
環さんへ
息子さんのご卒業、おめでとうございます
着物姿のお母様、息子さんも誇らしく思うことでしょう。

北村さんの展示、私、がんばって後期も行こうと思います 誕生日は無料とのことで色めきたったのですが、何とよりによって日曜日。たぶんその日は無理だわ・・・
神奈川絵美
オンブルパルフェさんへ
こんにちは
缶詰でしたか・・・仕事とはいえ、残念でしたね。
清水買いの帯! うわー、私も楽しみですぜひぜひ、いろいろなコーデを見せてくださいませ

この栗山紅型と蝶の組み合わせ、実は初めてだったような。褒めていただけて嬉しいです
この展示は絶対行きたいと思っていました。
織りの魅力って画像では伝わり難いですよね。
明日は雨ですが、頑張って着物で卒業式に行ってまいります!
オンブルパルフェ
http://ameblo.jp/herend-tarte/
こんばんは
東京にいたのに缶詰で講習で、どこにも行けませんでした。
栗山さんの紅型も素敵ですが、帯が本当に合っていますね。柄の雰囲気かしら。なんともいい感じです。
北村さんの展示も本で見ていましたのに、、、残念です。鳥の羽先を体験したかったです。
絵美さんの記事をみて、清水買いの帯が出来上がってくるのが楽しみになりました。
神奈川絵美
りらさんへ
こんにちは
そうなんですこの帯、結構昔のみたいです(オークションで譲っていただいたのでよくわからないのですが)。この金の感じがクラシカルなんですが、確かに黒地にぴっと映えていいのかも。

今回の展示ほど、カタログとの違いを実感したことはありませんでした。うーん、当面竹橋だけ、というのは勿体ないなあ・・・。
神奈川絵美
Tomokoさんへ
こんにちは
わー、お母様手作りのショール、愛情プラスで肌触りよかったことでしょうね
フリンジ、そうですよねー切っちゃおうかな。
私が切るとギザギザになりそうですが
神奈川絵美
すいれんさんへ
こんにちは
北村武資さんの帯は、格調高い柔らか物はもちろんのこと、作家もののような力のある織にも合うのが魅力ですよね。
文様の歴史を重んじながらも、革新的な取り組みも続けている様子が展示から伝わってきて、見応えありました
りら
うーーーむ・・・
こういう物は実物を目で見なければその本当の良さは判らないでしょうねぇ。
色んな展覧会があって、足を運んで目で見ることの大切さを思いました。

黒地の蝶柄帯、コントラストが利いて素敵です~。
お着物の柔らかい感じがくっと締まる感じがして、私はこれくらいの調子の合わせ方が好きです。
ちょっとクラッシックな色調ではないでしょうか?
Tomoko
こんにちは。白いレース編みのショール、懐かしいです♬
すっかり忘れ切っていましたが、この写真を見て、むかし母の手編みの白いモヘアのレース編みをかけて私もお出かけしていた頃を思い出しました。
フリンジ、長いのも私は好みですが、半分の長さに切ってもいかもですね~、軽快になりそう♪
すいれん
http://www.tomoko-358.com
絵美さま
北村武資氏の帯、素敵ですよね~。だいぶ前に八木さんで勧められて、その仕事の素晴らしさに月賦10回払いで買いました(笑)でも、これは買って良かったと思います。その仕事の細かさは虫めがねで見ないと分からない位ですが、品が良くてさりげないのに存在感はあって・・・やっぱり本物って感じですよね。私の宝物です。
神奈川絵美
RUBEさんへ
こんにちは
蝶の帯、ちょっとキラキラしすぎかなあと気にしていたのですが…大丈夫でしょうか。
北村武資さんの展示はとても見応えありました。お天気悪くてくじけそうでしたが、行ってよかったです。
RUBE
すてき
蝶の帯が引き締まっていいですね。
ステキです。

展示会へたくさん行って羨ましいです。素敵な時間ですね。
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