たとえば今回のリオ五輪。いかに金メダル有力候補が揃った種目でも、一切期待を寄せない、というよりむしろダメ元で応援する。誰彼にそう言った時の大方の返りは、「それじゃあわくわくしないだろう」。じゃあ言わしてもらえば、サッカーの日本対ナイジェリア戦、アナウンサーが「残り5分あれば2点返すのも難しくない」って、そりゃあ数々の事例があったにせよ、頭から通しで観戦してきたサッカー・ファンなら、九分九厘無理なことが分かるわけで、応援の腰を折ったって構わないから、もう少しありのままを伝えるのが実況中継の正義というものだろう。また、お子さんとの日常まで組み込んだNHKの内村航平特番も、ロンドン大会のようにまたも鉄棒から落ちたらどうするんだと、体操競技の落とし穴を知る人ほど、そういう番組企画は彼らが金メダルを胸に帰国してからにしてくれと。体操に限ればそれよりむしろ、中国チームの対日本戦略の逞しさを伝えた方が(多少やってくれたけれど)、金メダルを重みを加圧するだろう。とか、かねてからこういったイニシエイション的なシナリオが嫌で仕方なかったのが、ダメ元派に甘んじることになったきっかけだ。ただ、ダメ元の胸中にも、結構なわくわく感が実はある。万が一というやつだ。ダメ元とはそういうものだと思う。