石原慎太郎の小説は中学生から高校生にかけての時期に初めて読んだ。文庫本を何冊か買ったのだが、大江健三郎や福永武彦、遠藤周作などもこの時期、初読だった。ようするに好奇心で読みあさり始めた年齢に出会ったというものだった。読後感は明確に覚えていないが、乾いた修飾のない文体で、それ以前に読んでいた三島由紀夫の作品と相当異なるな…という印象だった。アメリカの作家たち、特にヘミングウェイの文体に共通している感触があると感じた。その後、石原慎太郎は政治者という印象しかない。小説も発表されていたが読んでいなかった。『秘祭』は購入している。この人の対談はたまに読んでいた。文人のと対談が多かった。三島由紀夫との対談が面白かった記憶がある。野坂昭如とのも面白かった。
石原慎太郎のことをおれは女友達と話したことがない。女性たちはこの作家にほとんど興味を示さない…というのがおれの感覚だ。あまりに政治的だからであろうか。あるいは、氏のどこかに女性に対する、幾分突き放したような視線の持つ冷徹さを感じ取っているからだろうか。
「太陽の季節」だけがクローズアップされるが、「行為と死」や「完全な遊戯」などの作品から、『青春とはなんだ』や『おゝい、雲!』といった痛快青春小説もあるし、政治の世界と通底するのかもしれないが、新宗教の世界をルポした『巷の神々』という書もある。おれはこの本を数回読み返している。また、名言集本も出していて、寺山修司の言葉集と対になっているような格言が集められている。だが、共通項もあるのが面白い。たしか、石原も寺山もAB型ではなかったか。非常に広範囲に物事や状況を眺めることができる才能を持っているのが特徴だと思う。石原慎太郎は、五木寛之と全く同じ生年月日だ。五木さんの言葉を聞きたい。五木さん、日刊ゲンダイにまだ連載されているのだろうか。また、石原は立川談志と親しかった。面白い組み合わせだな。ある意味、良質な東京人。偽悪的なところがよく似てる。