以心伝心 from Bolivia

青年海外協力隊として2年間、ボリビアの小学校で活動。

原点の村

2011年05月02日 | 日記
              

あたたかい布団があること。

あたたかいスープがのめること。

それだけでありがたいと思った。

「しあわせ」は自分の心が決めるというけれど、「貧しさ」も自分の心が決める

のかもしれない。

連休を利用して、わたしはアパートで働くフランシスと6年生になる娘と共に

プレストという村を訪れた。

スクレからミクロで約3時間の村である。

よく泊まりに来る隊員の女の子がプレストに住んでいるんだよというと、

フランシスが「じゃあ一緒に行きましょう」と誘ってくれたのだ。

彼女は、田舎が好きらしい。わたしと4つしか年が違わないが、働き者で

一人娘を立派に育てているので尊敬している。

途中に通る織物の村タラブコからプレストまでの道のりが、突然ガタガタ道に変わり、

座っているだけで体中が擦れてかゆくなった。

話してても砂利の音で聞こえないので、次第に乗客は無口になる。

田舎の田舎に入っていくときのバスの光景である。

日帰りの予定だったが、一日1本しかない帰りの小さなバスが満席で乗れず、

急きょ1泊することになった。

何も持ってきていないわたしたちは最初ちょっと落ち込んだが、

「しょうがないよね」「じゃあこれから冒険だね」と言い合いながら、

プレストにある川へ向かうことにした。

思っていたよりも水がなく、ちょろちょろと流れている川だった。

寒さの中、洗濯をする人もいた。

5月に入ったからか気温が一気に下がり、フリースにウインドブレーカーを

はおるぐらいの気温だった。

川を渡り、正面にある丘に登ってみることにした。

丘と思いきや、坂が急でゴロゴロ石がいっぱいで足場も悪い。

よっこら歩いていくと、藁葺き屋根のような家がぽつんぽつんと現れ始めた。

そこに2人の男の子が見えたので、遠くから「お~い」と手を振る。

するとすぐさま隠れてしまった。家の横を通り過ぎようとしたとき、

塀をちょっと覗いてみると、2人の男の子が照れくさそうに隠れて笑っていた。

「Hola!」と挨拶をすると、にっこり笑って出てきた。6年生と2年生の兄弟だった。

6年生の男の子は、もう何日も洗濯していないような汚れた服をきて、

Tシャツを長ズボンにきちんと入れてベルトでぎゅっと締めていた。

サンダルはもうぼろぼろだった。

この寒いのに半そでである。目はきりっとしていて、まさに野生児。

わたしたちがよろよろ足元に気をつけながら登る中、彼らは50メートル走を

全力で駆け抜けるかのように、頂上へ向けて一直線に走り出した。

すっすごい・・・。この子達、かっこよすぎる。

わたしも真似してみる。

案の定、コケる。。。

兄弟達はいつの間にか木に登り、足だけでぶら下がりながら私を見て

大笑いしていた。

わたしも一緒に笑う。

丘の上から眺める風景は、山々の美しさをさらに感じることができた。


冬のような寒さの夜、プレスとのひろみ隊員と寄宿舎を訪問した。

ボリビアには田舎の田舎の田舎があるのだ。

プレスト村が田舎の田舎だとしたら、寄宿舎にいる子どもたちは

田舎の田舎の田舎に住んでいる。そのため、学校がない。

子どもたちは平日親元を離れ、プレスト村の寄宿舎で生活している。

わたしが訪問した日は3連休ということもあって、自宅へ帰っている子が

ほとんどだった。寝室を覗いてみると、冷たい病院のような空間だった。

そこに一人だけ6歳ぐらいの女の子が寝ていて、なんだかさみしくなった。

彼女はなんで家に帰らなかったのかな、そう思うとさみしくなった。

ひろみ隊員はこう言った。

「彼女たちにしてみれば、ものすごく幸せな生活。

だって、自宅は壊れそうな土壁の一つの部屋に大家族で生活しているんだから。

一人にひとつベッドがある、それだけで幸せなんだよ」と。

わたしが訪れたとき、中学生の男の子が、食堂で数学の勉強をしていた。

きっとさみしさもあるだろうけど、この子達は学ぶために親元を離れ、

寒い部屋で勉強をしている。

学ぶために一生けん命な姿を見た。



ひろみ隊員は子どもたちの宿題を見たり、彼らをまちのスポーツ大会に

参加させるため、ミサンガやピアスのつくり方を教え、まちで販売して

交通費を集めている。彼らに夢や希望を。

そんなひたむきな彼女も、去年の秋は村を出たくてしょうがなかったそうだ。

なんでわたしはここにいるんだろう、とことん落ち込んだ時期もあったという。

丸坊主にした彼女はすべてを洗い流したかのように、笑顔の似合う

和製ナタリーポートマンになった。ちょっとほめすぎ?



今回、ほんとうに小さな活動を見た。

ほんとうに支援が必要な活動を見た。

原点をもう一度教えてもらい、心が動いた。

村の先生たちは週末スクレの実家に戻るそうなので、ぜひ算数の勉強会に

参加してほしいと伝えた。

この村を訪れて、やっぱりわたしの目標は村へ巡回することだと再認識した。

そのために、いまはスクレで起点となる勉強会を発信、充実させる。

目の前にいる子どもの反応を大事にする。


ノミにも負けず げ○にも負けず。

これいまの試練。


見上げる空のように、広く素直なこころで。