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私は地球で楽しく遊ぶために生きている

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女達の恋愛事情~人妻久美の場合3~

2016-02-22 01:28:08 | オムニバス恋愛小説
ある日の受講の帰り、京香に声をかけた。
「美味しいイタリアンレストラン見つけたのよ。行こう」
京香は困惑した表情で
「ごめんなさい。今日は用事があって帰ります」と言う。
京香と出会って初めて断られた。
京香は申し訳なさそうな表情で通り過ぎた。
京香に拒否されたことに私を打ちのめされた。
待って!どこへ行くの?誰と会うの?叫びたい衝動を堪えた。

その日を境に京香は私の誘いを断るようになった。
英語スクールの仲間が週末に谷トキオと京香が
手を繋いで表参道を歩いていたのを偶然見たという。
「絵になっていたよ、あの二人」
恐れていたことが起きてしまった。
自分の支配の中にいたと思っていた京香の存在が消えていく。
喪失感は想像以上だった。
京香を目で追う。もう彼女に私自身は写っていない。
ある日の夜、京香がトキオに抱かれる夢をみた。
きゃあ大声で叫ぶ横で寝ていた夫が飛び起きた。
「どうしたんだ!」
京香が他の男のものになってしまう。
「やめて、やめて」
夫が興ざめした表情で見つめていた。
谷トキオへのジェラシーは日を追うごとに増していった。
トキオさえいなければ京香との幸せな時間は続いていたのに。
トキオさえいなければ。トキオさえいなければ
再び幸福な時間が訪れるのに。
いつしかトキオの存在は私の中で、
憎悪と嫉妬の対象になっていた。

続く・・・