児童相談所や特性を持つ子供の悩み、生きづらさを題材にしたドラマや小説、漫画が多数あります。
私も何冊か読みました。時には参考になったり、時には励みになったり…
しかし今回息子が児童相談所に保護をされ、“当事者”となった時。
あぁ…ドラマや漫画の世界はフィクションなんだな。と痛感しました。
息子と会えなかった270日以上の間、打ちのめされっぱなしでした。ボディーブローがジワジワと効いてくるかのように、立ち上がる気力が失われていきそうになる感覚でした。
「子どもを一定期間家庭から離して生活させる。」という処遇が決まりました。
その際、私たち夫婦は「施設に入所させるなら“児童心理治療施設”を希望します。」と伝えました。
児童心理治療施設とは心理的問題を抱え、社会生活への適応が困難な子どもたちを対象として入所や通所を行う児童福祉施設です。
そして、何故かこの施設…東京にはありません。
児童相談所の職員さんは「児童心理治療施設への入所は稀なケースです。」「受け入れてくれる施設があるかどうか…」と渋りに渋りました。
「ならば見つかるまで待ちます。それまで一時保護をお願いします。」私も折れません。
「息子を受け入れてくれる施設があるなら、北海道でも沖縄でも、飛行機に乗ってだって会いに行きます。」私は絶対に折れませんでした。
それから約2か月後。息子を受け入れてくれる児童心理治療施設が見つかりました。
東京の我が家から数百キロ離れている場所です。
距離の長さなんてどうだっていい。
あとは息子との心の距離を確かめるだけです。
それからさらに1か月半後。
273日ぶりに息子に会う日がきました。
娘も一緒に家族3人で会いに行きました。
息子は面会室のドアの入り口で隠れるように泣いていました。声をあげて泣いていました。
私たちも込み上げるものをグッとこらえて「顔が見たいから入っておいでよ。」といつも通りの振る舞いを心掛けました。
273日ぶりの息子は痩せてもなく、太ってもなく。背は少し伸びたかな?
それよりも…
「髪長っ!」夫と同時に発しました。
なにその長髪!?伸びたマッシュルームカット…ちょっと昔のふか〇りょうみたい!!
家を出る前は一人で床屋に行けるようにもなり「かっこよく切ってください」とお願いしてソフトモヒカンに仕上げてもらっていたのに。
児童相談所の職員さん曰く「短くするとかっこ悪い」という理由で散髪をさせてくれないのだとか。
273日も親に声も顔も見せることが出来なかった息子。
家を飛び出した事に対してもそれなりに反省している…と聞いていました。
まさかこんな大事になるとは思わなかったでしょう。(そりゃこちらも同感しかない)
まさに「親に合わせる顔がない」状態だったのかもしれません。
怒られるかもしれない。
捨てられるかもしれない。
不安の塊が涙となって溢れて、声を上げて泣いてしまった。面会室に入室する勇気もでない。
ところが、私たち親の開口一番が「髪長っ!」
息子の涙も引っ込みました。
それから約1時間の面会時間。
いつも通りの家族の会話が弾みました。
娘は息子の長くなった髪を結わいて遊んでいました。
あっと言う間の1時間。
次、息子に会う特は数百キロ離れた施設です。
息子は「このまま帰りたい。施設に行かなくちゃいけないんですか?」と職員さんに尋ねていました。
職員さんは無言で頷くだけでした。
「ママたちずっと待ってるから。」
私は息子のサラサラの髪をなでながら言いました。
「会いにいくから。頑張っておいで。」
「手紙書くね。あなたもお手紙ちょうだい。老眼が始まってるからなるべく大きい文字で書いてね。」
「家に帰ってくる時は車で迎えにいくから。」
「ずっと待ってるからね。」
もう息子は泣きませんでした。
手を振りながら笑顔で面会室から退室していきました。
ブログをご覧いただきありがとうございます。
この日から息子の第二章が始まりました。
息子は修行に出たと思っています。
「あの子、今日も修行頑張ってるかな?」と家庭でも話しています。
毎朝息子のいる地名の天気予報を確認するのが日課です。