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東京からの出張の帰り……。
JRと私鉄を繋ぐ道にある、
大きな本屋に立ち寄りました。
漫画の新刊コーナーをチェックしている私の耳に、
中学生? らしき女の子の声が入ってきました。
「それでな、ボッコン! って拳握って殴られてん」
ふと目をやると中学生らしき女の子が4人。
少女コミックの棚の前で話をしていました。
話を聞くつもりはなかったのですが、耳に入ってくるその言葉。
1人と、それ以外の声に温度差を感じたのです。
話を聞いていると、何かの原因で親とケンカした
女子中学生が、やりきれなさを周りに話しているのです。
ですが彼女の友人たち? は、それを受け流すばかりで
核心に立ち入ろうとはしないのです。
「そこでな、アニキがリビングに入ってきてんけど。
お前らケンカするならヨソいけや! って言いよるんよ」
「でもまあ……ムシされるよりいいんちゃう?」
それは悲鳴ではないのか。
その子の言葉は、何度も繰り返される……言葉こそ違えど
繰り返される状況説明の言葉は悲鳴ではなかったのだろうか。
「ここに居るよ!」
「私はここに居るよ!」
「誰か応えて!!」
でも、そんな風に思った自分に何が出来るというのだろう…
そう思って立ち尽くしていました。
一瞬、早口で喋るその子を見ると
私の同情めいた視線が心の中の何かを刺激したのか。
虚勢を張るような言葉を言いながら……
そしてまた、繰り返していました。状況の説明を。
もしかしたら本当に必要なのは言葉ではなく、
感触かもしれないけれども。ただの言葉すら、
かけてやることはできない。
私は自分が偽善者であることを確信しています。
人道者ぶることに快感を覚える人種であることを自覚しています。
でも、それでもいい。何かできないものか。
けれど……決して夜回り先生こと水谷修さんのようにはなれない。
なれなくていいと思う、けれど何もできないのかな。
この私自身の中にある一抹のやりきれなさ、
これを持ち続けていたいと思った一日でした。