「遠い声 遠い部屋」カポーティ
なんちゅー瑞々しさ。
朝露のごとく綴られる文章。
どこの朝市かと確認したくなる新鮮さ。
これを、あの巨体のおっさんが…?
ぶーちゃけてからの印象が余りに強いもんで、つい。
若かりし頃の写真見ると、少し疑いは晴れるが…
人生の残酷さと、生きることの瞬間的な美しさが充満する本。
中でも大人の身勝手さが、辛い。
13歳のジョエルは母の死によって、ど田舎の父の元に呼び寄せられる。
温かみのない義母、個性的な料理人、個性的で趣味人な義母のいとこ。
近所の悪童アイダベル。荒廃したホテルに住む呪い師?
寝たきりの父…
南部の田舎で孤独と倦怠に疲れ果てた人々。
ジョエルは聞きたくもない話を聴かされ、
知りたくもない事実を目の当たりにする。
十二分に面倒を見てもらい、安心して暮らせるはずの家になるはずが。
大人たちに振り回されるジョエル。
強気なアイダベルは、周囲にひたすら反抗する事で生きる。
ジョエルは自分が必要とされている事を理解し、受け入れる事で生きる。
情景も、それぞれの人生もロマンチックだったり、幻想的だったりするけれど。
繊細な感受性に裏付けられた残酷さの、恐ろしさを思い知る一冊。