木のぼり男爵の生涯と意見

いい加減な映画鑑賞術と行き当たりばったりな読書によって導かれる雑多な世界。

『遠い声 遠い部屋』

2013-05-17 00:19:25 | 日記


「遠い声 遠い部屋」カポーティ

なんちゅー瑞々しさ。
朝露のごとく綴られる文章。
どこの朝市かと確認したくなる新鮮さ。
これを、あの巨体のおっさんが…?

ぶーちゃけてからの印象が余りに強いもんで、つい。
若かりし頃の写真見ると、少し疑いは晴れるが…


人生の残酷さと、生きることの瞬間的な美しさが充満する本。
中でも大人の身勝手さが、辛い。

13歳のジョエルは母の死によって、ど田舎の父の元に呼び寄せられる。
温かみのない義母、個性的な料理人、個性的で趣味人な義母のいとこ。
近所の悪童アイダベル。荒廃したホテルに住む呪い師?
寝たきりの父…

南部の田舎で孤独と倦怠に疲れ果てた人々。
ジョエルは聞きたくもない話を聴かされ、
知りたくもない事実を目の当たりにする。

十二分に面倒を見てもらい、安心して暮らせるはずの家になるはずが。
大人たちに振り回されるジョエル。
強気なアイダベルは、周囲にひたすら反抗する事で生きる。
ジョエルは自分が必要とされている事を理解し、受け入れる事で生きる。

情景も、それぞれの人生もロマンチックだったり、幻想的だったりするけれど。
繊細な感受性に裏付けられた残酷さの、恐ろしさを思い知る一冊。

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