2008-02-27
3.いざこざ
カイと一緒に部屋から出て行ったユウキ先生に、すぐにメールを送って、タケルのメールアドレスを教えてもらったヒロは、早速タケルへメールした。
『いったい、あいつは何やってるンだ!
オレの言うこと聞いてから出て行けばいいのに、
勝手に黙って出て行きやがって! 』
一方、病室で先生からタケルのことを初めて聞いたキラシャは、しばらくボウ然としていたが、心配そうに見守るパールに気づき、照れ笑いをした。
「ちょっと、びっくりしたンだ。先生がタケルのこと知っててだまってたなンて…。ずるいよね、知ってたら教えてくれてもいいのに」
「キラシャ タケル スキ?
ワタシ タケルノコト シラナイ。
デモ キラシャ ワタシ タスケタ。
ダカラ ワタシ タケルノ ブジ イノルネ…」
学習ルームでは、生徒ばかりでザワザワしていたが、ダンが議長として前に出ると、副議長にマキを選び、反省会が始まった。
先生がいると、言いたいこともなかなか言えないが、この時間は生徒だけとあって、ダンが今回のケンカについて発言するように促すと、意見が上がった。
「あのケンカで、やっとゼノンも裁判にかけられるけど、ゼノンにイジメを受けた子はかなりいたと思うよ」
「そうそう、いつも通り道をジャマするようにたむろして、変なカッコウで踊ったりしてたよね。ゼノンにちょっかいかけられて、困ってた子たくさんいたんじゃない?」
「親戚が金持ちだからさ。何やっても許されるって言うンじゃ、まじめにやってるオレたち迷惑だよな…」
「ホォー、まじめネェ~」
子供達は、先生がいないという解放感から、クラス中がザワザワし始めた。
「オイ、静かに! じゃぁ、ゼノンのことは裁判に任せて、オレたちは自分らのこと話そうぜ。仲良くするための反省会なんだから、何か意見のある奴、いないのか?」
自然といつもの口調になったダンに、ジョディから非難の声があがった。
「ダンだって、先生の前じゃ文句言えなかったけど、女の子のこと、陰でずいぶん泣かせてるじゃない」
「えっ? オレが? それは初耳だな。何かワルイコトしたとでも言うのか…」
マギィも参戦した。
「あたしたち知ってるけど、男の子使って、気に入った女の子くどいてるでしょ!」
一部の女の子からブーイングが起こり、勝ち誇ったようにジョディが大声で言った。
「今日はヴァレンタイン・デーなのよ!
お義理だけでも大変なのに、本命を強要しないで欲しいわ!」
「オレ、強要してないよ!
マギィも、勝手にプレゼント送って、お返し強要してるじゃないか。
アレって、大迷惑だぞ! 」
マギィをかばうように、ジョディが強気で言った。
「あたし達は、本気なの! 恋愛学のパートナー選びって、一生に関わることなのよ!
女の子にとって、好意を示すことがダイジなんじゃない。アンタに、それがわかンないの? 」
「…オレだって、恋愛学のためにパートナー探してるンだ。
みんなも、同じだろ?
でも、オレはマギィみたいに、強要はしてないぞ!
かわいい子には、誰だって声かけたくなるジャン。
でも、プレゼントの無理強いはしてないぞ!
イジメの相手をやっつけてやったから、そのお礼にって、義理でくれる子もいるケド
正直、お返しのことを考えると大変なンだ…」
ダンの本音に、男の子からもブーイングが起こった。
「義理でも、いっぱいもらえていいなぁ~ 」
あせったように、ダンが言い訳を始めた。
「でも、お返しだって大変だぞ!
オレ、自分のこづかいはたいて、ちゃんと返してるンだぜ。
頼むから、お義理は勘弁してほしいっていうと、
泣いたり、怒ったりする子がいるンだよな~ 」
当然、女の子から、激しくブーイングが起こった。
しびれを切らしたように、マキが大声で言った。
「もう、議長がコレじゃ、話になんないでしょ!
校長先生からスクール内でのプレゼント禁止されてるンだからさ、
こんなこと話し合ってていいの?
今は、ケンカしないためにどうすればいいか話し合っているのにさ、
議長が議題そらしちゃってどうするのよ? 」
周りからいっせいにはやし立てられ、さすがのダンも困った顔。
「…そうか、わかった。オレもう今年はプレゼントもらわない。絶対くれるなよ!
だから、女の子もプレゼント渡して、お返しを無理強いするのやめろ!
じゃ、時間もないことだから、もっと他にイジメで困ってることってないのか? 」
「ダン。ちょっといいか?
話ぜんぜん変わるけど、オレ、タケルにメール送ってみたけど、返事がないンだ。
何だか嫌な予感がするンだ。
宇宙ステーションの警察に連絡した方がいいと思うけど、どうかな? 」
と、突然ヒロが言い出した。
「嫌な予感? タケルは大丈夫だよ。
あんな運動神経いいやつに、何があるってンだ。
それじゃ、他にもイジメで困ってる子はいないのか? 」
タケルが心配なキラシャは、たまらずにダンに問いかけた。
「ダン。お願いだから、タケルのこと考えてあげて!
先生、タケルの耳が聞こえないって言ってたよ!
きっと、ここにいた時のタケルじゃないンだよ。
お願いだから、タケルのこと助けて欲しい! 」
学習ルームでは、男の子も女の子も口笛を鳴らし、ヤジを飛ばした。
「キラシャは、タケルのことがダイスキで~す! 」
「そんなにスキなら、今すぐ宇宙に飛んでっちゃえばいいのに~! 」
ダンが焦って、大声を出した。
「オイ、あんまりうるさいとパトロール隊が入ってくるぞ!
先生いないンだから、静かにしようぜ!」
そんな時、終了時間のチャイムがなった。
「じゃぁ、タケルのことはヒロに任せた。
でも、ユウキ先生に許可を受けてからにした方がいいと思うよ。
とにかく、これからも、お互いに相手のこと考えて行動しようぜ。
キラシャとパールがクラスに戻ってからも、みんなで仲良くやろうな!
以上で反省会終わります。
マキ、副議長引き受けてくれて、ありがとう! 」
ダンは、マキに握手を求めて、まだじっと自分をにらんでいるマギィやジョディには目もくれず、学習ルームを出て行った。