未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第21章 同じ時を生きる君に ⑥

2021-02-18 15:26:54 | 未来記

 

6.危険な再会

2020-10-18 15:26:54

2015-11-09

 

キラシャとケンは、深い霧の中にたたずんでいた。

 

「ここはどこ…? 」

 

不安な気持ちをケンの手をぎゅっと握りしめて

 

何とか落ち着かせようとするキラシャだった。

 

静まり返った広場らしい場所に

 

やがて、モクモクと煙がたつように

 

光の混じった白い霧が現れた。

 

 

「来たな!」

 

 

ケンは、その光る霧が激しく舞いながらおさまってゆくのを

 

じっと見守った。

 

 

霧が少しずつ消え、そこに現れたのはタケルと見知らぬ男の子達。

 

キラシャは、すぐ真ん中にいるタケルに気がついたが、

 

タケルは、キラシャとケンがしっかり手を握っているのが見えると、

 

それ以上2人を見ていられず、すぐに下を向いた。

 

何ヵ月ぶりの再会だったが、タケルの表情には、

 

同じエリアで遊んでいたころの子供っぽい面影がなかった。

 

『あのころのタケルが、家で飼われたリスだとすると

 

今のタケルは、野原で餌を追うキツネかなぁ…』

 

野生化した動物を見るようなドキドキした気持ちで

 

キラシャはタケルの様子を見守った。

 

しかし、いきなり近くで爆発音が轟いた。

 

タケルはケンに向かって「キラシャを守ってくれ!! 」と叫ぶと、

 

他の男の子達と武器を持ち、こちらを狙って撃ってくる銃の方向へ

 

身体を低くして、小走りに近づいていった。

 

ケンは用意していた防弾シーツを広げ、片手でキラシャを抱きしめ、2人で崩れた建物の壁を乗り越えて、銃声から遠く向かって走った。

 

近くに別の崩れた建物が見えたので、ケンがキラシャに合図をして、その建物の陰に隠れると、Mフォンでタケルたちの姿を映像としてとらえた。

 

「何で撮影してるの…? 」とキラシャが聞くと、ケンは小声で言った。

 

「ヒロが、みんな準備してくれたんだ。これを撮影してるドローンも、この防弾シーツも、キラシャとタケルが会うために必要なんだって…」

 

「タケルは、誰と闘ってるの…? 」

 

「それも、オレにはさっぱりなんだ。

 

ヒロが言うにはさ。タケルはキラシャに、自分の闘ってるとこを見ていてほしいって、言ってたって…」

 

「何のために…?」

 

「さぁな。オレにはわかんないけど、タケルには闘わなきゃならない相手がいるらしい…」

 

…その時、後ろの方でガザっと土を踏む音がした。

 

「…ひょっとしたら、オレたちがここにいるってことも、

 

…バレてたのかな…? 」

 

ケンとキラシャは、恐怖で後ろを振り向くことができず、身体をこわばらせたままじっとしていた。

 

「今、手に持ってるものをこっちにもらおうか!」

 

銃を構えるガチャっという音をさせながら、なまりのある共通語で、後ろにいる男が声をかけてきた。

 

ケンは、Mフォンを握ったまま、恐る恐る手を上げた。

 

「なんだ、銃も持ってないのか、よくそんなナリでここにやってきたな。」

 

また、近くで大きな爆発音がとどろいた。

 

ケンとキラシャは、耳がキーンとしたまま何も聞こえなくなり、そのまま気を失ってしまった。

 

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第21章 同じ時を生きる君に ⑦

2021-02-16 15:31:16 | 未来記

2020-10-18 15:31:16

7.君を助けたい

 

武器を持ったタケルは、前方からの攻撃に集中しながら、前にキララが仮想空間で見せた、爆発音の位置を思い出して、それを避けるように進んで行った。

 

後ろで姿を隠したまま、キララは少年たちに危険な場所へ近づかないように指示を出した。

 

「やつらは、アタシ達のせいで宇宙にいる仲間が大勢捕まったことを恨んでるよ。

 

自分らが悪さして、罪を重ねてたのにさ。

 

アタシらが来るのを待ってたんだよ。ご苦労さんだね。

 

こいつら全部倒して、防衛軍に差し出してやろうじゃないか! 」

 

少年たちは、キララの言葉に黙ってうなずき、放置されたままの壊れた戦車や飛行機に身を隠しながら、敵のいる場所を目指した。

 

発砲と爆発音がしなくなって、しばらく沈黙が続いた。

 

車が移動する音と、男たちの歓声が聞こえた。

 

そして、誰かが大声で叫んだ。

 

「お前らの仲間を人質にしたぞ! 言うことを聞かないと、すぐにでも打ち殺すぞ!」

 

少年たちは、あわてて欠けたメンバーがいないか確認してから、タケルに声をかけた。

 

「タケルのダチが、捕まったんじゃないのか? 」

 

「なんで、捕まっちまったンだ。迷惑だぜ! 」

 

「オレたちゃ、タケルのダチが殺されたって、痛くもかゆくもないからな! 」

 

こんなことになるとは思いもしなかったタケルは、周りから非難され、かえって逆ギレした。

 

「だって、オレが闘う前にキラシャに会いたいって言ったら、

 

アンタの闘う姿を見せてやればいいって言っただろ!

 

安全な所へ隠れたら、大丈夫だって! 」

 

キララは、身を隠したまま、タケルに言った。

 

「アンタの目を覚ましてやりたかったンだよ。

 

アンタが大事にしてたものを失うのは、アンタが原因なんだってね。

 

今はまだわかンないだろうケド…。

 

 

アタシの言うこと聞くンだったら、あの子を助けてやってもいいよ。

 

まぁ、聞かなかったら助からないだろうケドね…」

 

タケルは、改めてキララが悪魔であることを思い知らされた。

 

そして、自分の戦う姿を見て欲しいがために、安全な所へ逃げてくれると思い込んで、

 

かえって、キラシャとケンを危険なことに巻き込んでしまった自分を恥じた。

 

「いいかい! 

 

アンタがアタシの言うことを聞かなかったら、あの子達は死んじゃうンだよ!」

 

「そんなこと言ったって…。いったい、オレはどうすりゃいいンだ!」

 

「アンタは人の言うことをすぐ真に受けるだろ!

 

 そのまま自分の思いだけで、突っ走って人に当たって!

 

そンなンじゃ、大事なモノを失っちゃうンだよ! 」

 

「わかったから、オレが何をすればいいのか教えてくれよ!

 

アイツ等を助けたいンだ! オレの大事な友達なンだ! 頼むよ! 」

 

「わかったよ…。アンタはアタシの言う通りに、動けばいいンだ。

 

アンタが自分の勝手で動けば、それで終わりさ。

 

あの連中が何しようと、へっちゃらな顔しとけ!

 

ヘンな口答え、するなよ! 

 

わかったか?」

 

「…エッ? アイツら何するンだ?」

 

「マッ、じきにわかるよ。

 

 アンタが、ソンなことに動じないってことが大事なンだ。

 

 早まって、勝手なことするなよ!

 

 いいか。これだけは、絶対だよ」

 

「…なンか、よくわからないけど、おまえの言うとおりにすればいいんだな?」

 

「そうだ。…ただ、相当覚悟がいるけどね…」

 

タケルは、キララがこれから起こることを教えようとしないことにムッとしていた。

 

それでも、ケンとキラシャを助けるためには、悪魔のようなキララの操り人形になるしかないことを、十分すぎるほどよくわかっていた。

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第21章 同じ時を生きる君に ⑧

2021-02-14 10:53:00 | 未来記

2021-02-15 10:53:00 | 未来記

8.時空を超えて叩け!

 

タケルは腹を決めた。大事な友達を失うくらいなら、自分が死んでしまえばいいのだ。

 

この命と引き換えに、あの2人は必ず生きてここから解放してやらねば…

 

「いいよ、キララ。おれの命、オマエに預けるよ!

 

ただな…。

 

あの2人は必ず助けてくれ!

 

それだけは、約束だぞ。

 

約束破ったら、死んでもオマエを恨んでやるからな! 」

 

キララは、フッと苦笑いして言った。

 

「人を幽霊呼ばわりしてて、今度は、アンタが幽霊になるってか?

 

アンタを生かすも殺すも、アタシ次第ってことか…

 

面白いじゃないか…

 

じゃぁ、アンタをゲームの駒に使ってやるよ!

 

まぁ、楽しンで動いてくれ! 」

 

タケルは、前方の敵の集団が、キラシャとケンを盾にして、銃で2人を狙いながら、こちらに向かってくるのが見えた。

 

「てめえら、早く銃を捨てるんだな! すぐにでも、こいつらの頭に穴あけられるぜ! 」

 

ところが、少年達は銃を捨てるどころか、みなそれぞれに敵の集団に向かって銃を構えたままだ。

 

「何やってンだよ! オレの友達がどうなってもいいってのか? 

 

地球に帰って、ちゃんと生活できるように協力するって、約束したじゃないか! 

 

あれ、ウソだったのかよ! 」

 

タケルは、他の少年達に向かって、必死で叫んだ。

 

「残念だけどな。タケル。

 

オレら、あの子らがどうなっても、カンケーねェンだ。

 

アイツら始末しないと、オレらの将来にかかわるンだよ。

 

オマエなンかに、頼っちゃいないよ!

 

自分で、自分のことはケリつけないとな!

 

オマエも、あの子ら助けたかったら、自分でどーにかしろよ!

 

早くしないと、あの子らと一緒にやつらを集中攻撃するぞ! 」

 

タケルの近くにいたボス格の少年が、敵をにらみながら、タケルに聞こえるように大声で言った。

 

キララの声が聞こえた。

 

「さぁて、タケル。どうする? 時間がないみたいだよ」

 

「わかった。

 

キララ! あの2人をオマエが隠してくれたら、オレが人質になってやる。

 

アイツらが、オレを縛ったら、オレを撃て! あいつらと一緒にな! 」

 

「そうか。

 

だけど、アンタの友達、キラシャって、女の子だよね。

 

アタシが隠したって、アンタが死んだら、どこへ連れてきゃいいのさ。

 

その辺にほったらかしてたら、またどっかの悪い連中にイイようにされるだけだよ。

 

アンタに見せたビデオみたいにね。

 

ひどい目に遭って、殺されちゃうけど、それでいいンだね・・・」

 

タケルの脳裏に、銃で脅され泣き叫ぶ少女達の姿がよみがえった。

 

キララの言葉は続いた。

 

「それくらいの気持ちでやれば、何とかなるだろ。

 

まだ、アンタに見せてなかったけど、

 

あの子らは、アンタの知らない特技があるンだ。

 

まぁ、見ときな! 」

 

キララはタケルにそういうと、他の子供達に向かって叫んだ。

 

「それじゃ、行くよ!

 

みんな! 時空を超えて、奴らを叩くんだ!

 

戦利品は、ありがたく頂戴しときな!

 

奴らの方が人数多いけど、手早くやりゃすぐに縛れるからな!

 

タケル!

 

アンタもあの子らのやってること見て、できることをしな!

 

力の弱い子の手助けをしてやってくれ!

 

じゃぁ、行くよ! 」

 

キララは呪文を唱えながら、揺らぐ空間の範囲を少しずつ広げていった。

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第21章 同じ時を生きる君に ⑨

2021-02-12 14:16:02 | 未来記

2021-09-04 14:16:00 | 未来記

9.ヒロ…お願い!

 

キラシャとケンは、気を失った時の爆発音で、耳がキーンとしたまま、頭もモウロウとした状態で、無理やり立たされ、銃でこづかれ、先頭を歩かされていた。

 

言葉もわからない大人達が、自分の後ろでわめきながら、銃をこちらに向けていることは、音と雰囲気で何となくわかった。

 

遠くに、少年が何人か見えたが、みな銃を構えて、こっちをにらんでいるみたいだ。

 

タケルがどこにいるのか、強い風で砂ぼこりが舞い、見つけることができない。

 

頭もフラフラして、少年達の姿も砂ぼこりとともに、消えてゆく気がした。

 

「これって、夢の世界なのかな?

 

タケルに会いたいと思い過ぎて、おかしな夢を見てるみたい… 」

 

ただ、そばにいるケンは、しっかりとキラシャの手を握りしめていた。

 

たぶん、ケンがそうしないと、キラシャは立つことも、歩くことも、できなかっただろう。

 

「どうして、こんなとこで、タケルに会うってなったンだろう…

 

タケル、どこに隠れてるの? 

 

あたしたち、なンのためにここにいるンだろう…

 

ケンだって、かわいそうだよ…

 

あたしのせいで、こんな目に遭って…

 

お願いだから、ケンを助けて…

 

神様! あたしの命、差し上げますから…

 

どうか、ケンだけでも…

 

お願いだから、パールとマイクのいる所に、転送してください!

 

ヒロ… お願い! 

 

神様… 」

 

キラシャは、天を仰いで神に祈った。

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第21章 同じ時を生きる君に ⑩

2021-02-10 15:37:38 | 未来記

2021-09-09 15:34:00 | 未来記

10.姿を変えた少年達

 

キララの呪文によって現れた空間のひずみが、少年達を覆うと、その姿が一瞬消え、カラスより大きめのタカかワシのような鳥が、少年の数と同じだけ現れ、空中を舞い始めた。

 

驚いた顔で、上空の鳥を見上げる男達。

 

ハッと我に返った男の一人が、「なめやがって! 」と怒鳴ると、目の前に歩かせていた2人の子供に向かって手榴弾を投げつけた。

 

手榴弾は、なぜか空中に舞い上がり、ドッガーンと音を立てて、煙があたりを覆った。

 

強い風に煽られて、煙が流された後、キラシャとケンの姿はなかった。

 

「ふざけんなよ! 」

 

「てめえら、なにしやがったンだ! 」

 

「くそっ! ワシだかなんだか知らないが、鳥なンて、うち殺しゃいいンだろ? 」

 

「仕留めて丸焼きでも、してやろうか! どうだ! 」

 

男達は、鳥に向かって怒鳴りながら、発砲し始めたが、次元が違うかのように、弾は鳥を素通りして、パンパンパーンと上空へむなしく打ち上がった。

 

上空に舞っていた鳥は、次々に急降下で男達の腕に舞い降り、銃を握る指を激しく突くと、足で銃をもぎ取り、次々に遠くへと飛ばした。

 

銃を渡すまいと、鳥に向けて撃ち続ける男達。

 

 

鳥の集団は、銃以外の武器も男達のベルトやポケットから取り出しては、遠くに放り出し、執拗に男達の身体をくちばしで突き続けた。

 

タケルは、少年達の突然の変身と、その激しい戦いに驚き、爆発後に消えてしまったキラシャとケンがどうなったのか、状況が把握できずに、ただ茫然としていた。

 

そんなタケルに向かって、キララが怒鳴った。

 

「タケル! アンタの方が動きはいいンだよ!

 

あの子らが、鳥になって武器をもぎ取ってやったンだ!

 

アンタは鳥にならなくたっていいンだからさ。

 

あそこまで飛ばしてやるから、早く仕留めてやンな! 」

 

「だって、キラシャは? ケンだって、どこに行ったんだよ!

 

話が違うじゃないか! オレ、何のためにここにいるンだ… 」

 

キララは、そんなタケルに言った。

 

「安心しな! アンタの友達は、ヒロが元いた場所に戻したンだよ。

 

そこが安全かどうかは、わかンないけどね。

 

アンタが、あいつらを全部縛ったら、会わせてやるよ!

 

大好きな、キラシャにね。

 

わかったら、早くあの連中を動けないようにしてやれ!

 

今はまだ優勢だけど、あいつら素手でも人を殺せる連中だからな。

 

アンタの技がいるンだよ! 相手の息の根を止めるって技がね! 

 

さぁ、タケル! さっさと、行ってやっつけちまえ! 」

 

キララが呪文を唱えると、タケルの周りの空気が歪んでいった。

 

気が付くと、タケルの目の前で、元の身体に戻った少年達が、素手で男達と戦っていた。

 

鳥を撃つつもりが、味方同士で撃ち合いになって、何人かの男が倒れ、呻いていた。

 

戦っている男の人数は、少年の数より少なくなっていたが、2人でかかっても、投げ飛ばされたり、殴られたりしている。

 

鳥に身体中突かれていた男達は、血まみれになりながら、それでも子供相手に負けてはいられないと、取っ組み合いの殴り合いが続いた。

 

「タケル! 早くこいつを縛ってくれよ! 」

 

「お前なら、とどめが刺せるンだろ? 」

 

「手が足りないンだ、早くしてくれ! 」

 

タケルが、あの真っ暗な宇宙船の中で、一瞬で男を倒したのを見ていた少年達は、自分もこれくらいはやれるンだぜと、言いたげにタケルをせかした。

 

見ると、小さい男の子が、男に腕をつかまれて振り回されていた。

 

それを見たタケルは、その男の背中に向かって回転しながらジャンプ。その勢いで太い腕を取り、少年を払いのけて、一本背負いで男を倒した。

 

タケルはすぐに男をうつぶせにして、両腕を後ろで組ませると、動けない状態にして、素早く縄を受け取り、ギュッと手首を縛った。

 

タケルが、他の少年を押さえつけていた男達の急所を突いて倒し、縄で縛っていると、遠くから防衛軍の輸送機が飛んでくるのが見えた。

 

「防衛軍だ~ぁ! 」

 

「カッコイ~イ! 」

 

「オレらも、あンなのに乗れたらな~! 」

 

少年達の羨望を受けながら、輸送機から降りた防衛軍の兵士達が、銃を持ってタケルの方に向かってやって来た。

 

先頭の兵士が、少年達に向かって言った。

 

「君達の自由は、ここまでだ!

 

君達を逮捕する。

 

宇宙から無許可で地球に転送してはいけないという、

 

コズミック・ルールに違反した。

 

おとなしく、我々に同行して、取り調べを受けるんだ! 」

 

兵士の意外な言葉に、少年達と同様、タケルも何も言えず、立ちすくんだ。

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