未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第21章 同じ時を生きる君に ⑪

2021-02-09 16:06:46 | 未来記

2021-09-23 15:34:00 | 未来記

 

11.孤軍奮闘

 

MFiエリアのラボの1室で、Mフォンから流れる複数の3D動画を見比べながら、ヒロは孤軍奮闘していた。

 

アフカ・エリアのタケル達の様子を知らせる、3つのドローンからの動画と、ケンに送ったMフォンから映し出されていた動画。

 

しかし、ケンに送ったMフォンは、いかつい大男に見つかり、取り上げられた上、近くに爆弾が落ちてきたと同時に破壊されたのか、映像が消えた。

 

ドローンのうち、1機は空高くに待機させて、ヒロが見たい所をズームして使い、2機目はタケルを追っている途中で、銃弾に当たったのか、突然映像が途切れた。

 

3機目は、ケンとキラシャを捕まえた男が乗った車を追跡し、低い位置からの動画を送っていた。虫と間違えそうな、小さいドローンだ。

 

ヒロは、これほど危険な状況になっていても、キラシャとケン、タケルは無事でいてくれると信じて、冷静にドローンを操作した。

 

しかし、キラシャとケンが男達によって、乱暴に立たされ、大勢の男達に銃口を向けられたまま、歩くのを見ていると、さすがに緊張して手が震えた。

 

しかも、タケルの周りにいた少年達が消え、いきなり黒いカラスが飛び回り始めたではないか。

 

ヒロは、虫のようなドローンをキラシャとケンのいる場所に飛ばし、そこから銃を持った男達の様子を映し出した。

 

腹を立てた男の1人が、何やら手に手榴弾を握って、ドローンに向かって投げようとしているのが見えた。

 

ヒロは、自分のMフォンに向かって、大声で叫んだ。

 

「転送するなら、今しかない! 

 

キララ、アンタの力を貸してくれ!!

 

2人のMフォンで元居た場所に転送させるから

 

アンタの魔法で手助けしてくれ!

 

タケルのことも、頼むぞ…! 」

 

タケルへ送ったMフォンを通じて、「わかった」という声が聞こえた。

 

ヒロは、2人を守るために、3機目のドローンを手榴弾に向かって、垂直に突撃させた。

 

手榴弾は、空中に舞い上がって、爆発した。

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第21章 同じ時を生きる君に ⑫

2021-02-08 15:45:42 | 未来記

2021-09-10 21:34:00 | 未来記

12.ホテルの爆破予告

 

キラシャとケンが、ハッと気が付くと、そこはパールとマイクと一緒にいた部屋だった。

 

転送する前と同じように、2人はギュッと手を握って立っていた。

 

転送前のことは、幻のようなひとときでしかなかったが、まだ爆発で耳がキーンとした感じが残っていて、部屋の雰囲気とは違う、異空間にいるような気がした。

 

頭から砂まみれになっているキラシャとケンに気が付いて、ベッドにいたパールが、心配そうに2人を見て言った。

 

「キラシャ ダイジョウブ?

 

タケル アエタノ…? 」

 

キラシャは、コクリとうなずいたが、すぐに首を振った。

 

ケンが、キラシャの気持ちを察して言った。

 

「タケルの姿は、ちょっとだけ見えたンだ。

 

ただ、いろいろあって、話が全然できなかった…」

 

パールに心配をかけないよう、それ以上のことは言えなかった。

 

マイクは、起きてはいるが、ベッドの上で眠そうに壁にもたれていた。

 

転送してから、そんなに時間がたっていなかったことに気が付き、キラシャはあの出来事は夢だったのだ、と思うことにした。

 

『もういいンだ。

 

タケルのことは、忘れた方がいい。

 

ケンの方が、ずっとあたしのこと思ってくれてたンだ。

 

あんな危険な目に遭っても、あたしの手を握って、引っ張ってくれたンだもの。

 

神様は、きっとタケルを忘れさせるために、会わせてくれたンだ。

 

もう、タケルのことを思って、後ろ向きになるのはよそう。

 

ケンと一緒に、無事にMFiエリアに帰らなきゃ…』

 

その時、マイクのお腹が部屋中にギュルル~と鳴り響いて、部屋にいた4人は腹を抱えて笑った。

 

『マイクがいると、あ~生きてるンだなって、ホッとする…』

 

マイクは、いつものように自分のバッグからお菓子を取り出し、みんなに手渡しながら言った。

 

「キラシャモ ケンモ スナダラケ…

 

ナニシテタノ? 」

 

マイクの何気ない質問に、2人ともギクッとしたが、ケンが軽い感じで答えた。

 

「ちょっと、砂遊びしてたンだ。タケルが、引きこもりみたいになっちゃってさ。

 

話ができなかったから、砂で遊んでたンだ…」

 

ケンのとっさのウソだったが、マイクは「ヘェ~」とだけ言って、それ以上何も聞こうとはしなかった。

 

何となく、これ以上聞かない方がいいのかもと、マイク流の気を使ったのかもしれない。

 

キラシャとケンは、パールからウェット・ティッシュを受け取り、顔の汚れをふき取って、Mフォンで消滅させた。

 

転送前のマイクの寝姿をからかいながら、4人でお菓子をほおばっていると、急に部屋の外であわただしく人が行き来し始め、ドアを叩く音がした。

 

「君達も、すぐに支度をして荷物を持って、外に出なさい! 

 

このホテルを爆破するという予告があったそうだ。

 

いつ起こるかわからないから、一刻も早く逃げないと! 」

 

デビッドおじさんの声だ。

 

4人は、急いで身支度をして荷物をまとめ、薄暗い廊下に出ると、デビッドおじさんの後に続いた。

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第21章 同じ時を生きる君に ⑬

2021-02-06 16:07:25 | 未来記

2021-09-13 16:13:00 | 未来記

 13.オレら、被害者だったンだぜ!

 

ケガをして縄で縛られた男達は、後でやって来る護送車に収容されるという。

 

タケルと少年達は隊員に手錠をかけられ、軍の輸送機に乗り込んだ。

 

しかし、キララは姿をあらわさなかった。

 

『きっと、見えないところでオレらのことを見てるンだろうな…』

 

少年達は、皆そう思いながら、これから自分達がどうなるのか、見当もつかず、不安な時を過ごしていた。

 

男達に殴られて口から血を流し、頭から砂まみれで、服もボロボロの少年もいる。

 

少年達が激しい格闘で体力を消耗し、ぐったりしているのに気が付いた兵士が、輸送機にストックしてあった緊急時用のハンバーガーを支給してくれた。

 

 

少年の1人が、「これが地球に帰って、最初の食べ物だ…」とポツリと言った。

 

タケルも、地球で食べるハンバーガーを、しみじみと噛み締めながら食べた。

 

そばで少年達の無心に食べる様子を見ていた兵士が、なぜこんな危険な所へ転送してきたのかと、尋ねた。

 

「本当のこと言ったって、オレらのこと信じちゃくれないだろ?

 

それでも、聞いてくれるンだったら、言ってみるけどさ…

 

最初は、オレら被害者だったンだぜ!

 

宇宙ステーションでゲームに夢中になって、

 

親の言うことも聞かずに、遊ンでたオレらも悪かったと思うけど…

 

宇宙で悪い奴らに脅されて、ゲームで取ったポイントを巻き上げられて、

 

気が付いたら、そいつらの手先にさせられて…

 

もうそんな生活がイヤだったから、地球に戻って来たンだ。

 

でも、悪い奴らの仲間と戦わなきゃ、元の生活を取り戻せないって

 

ウェンディが言うから、死に物狂いで奴らをやっつけたンだ…

 

ウェンディは、今はいないけどね… 」

 

リーダー格の少年が、やるせなさそうに答えた。

 

兵士が「ウィンディ? 女の子かい? 」と尋ねた。

 

「そうだよ。まぁ、女の子って言ってもね…

 

…おっと、これ以上は、言わない方がよさそうだ。

 

頼むから、聞いてくれる?

 

オレらさ、あいつらのイイようにされて、殺されるくらいなら…

 

刑務所でも監獄でも、どこでも入るよ。

 

真面目にやってたら、出られるんだろ?

 

今度こそ、普通の暮らしがしたいンだ。

 

家族がいて、普通に働いて、

 

家で子供と一緒にゲームやって、盛り上がって…

 

オレらにもできるよな?

 

なっ! 」

 

その少年は、周りの少年達に投げかけるように言った。

 

誰からも返事はなかったが、悔しそうに涙を拭きながら、少年達はハンバーグにパクついていた。

 

兵士は、少年達に向かって言った。

 

「残念だが、刑務所は君達が思うよりひどい所だ。

 

牢屋に入るだけならいいが、周りには、いろんな罪人がいる。

 

まじめな人間の方が、ねらわれる。刑務所内のケンカで、命を落とす者も多い。

 

君達の罪がどの程度かわからないが、長くなれば顔つきまで変わってしまう。

 

無事に出られた時に、君が言ったこと、忘れてないといいがね… 」

 

それを聞いた少年達は、冗談じゃないと、脱出を図る決心をした。

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第21章 同じ時を生きる君に ⑭

2021-02-04 20:29:04 | 未来記

2021-09-14 19:43:00 | 未来記

 

14.ママがパールへ望むこと

 

ホテルにいた人達は、集会所のような所に移動して、毛布を渡され、そこで夜を過ごすことになった。

 

周りにはエリアの警備隊が、何十人も見回りを続けている。

 

デビッドおじさんが、毛布を何枚か重ねて敷いて、子供達にそこで休むよう言った。

 

パールのママも、オパールおばさんも一緒だ。

 

パールは、待っていたかのように、ママのそばに座った。ママの懐かしい香りに、自然と顔がほころんでくる。

 

キラシャとケンとマイクは、遠慮して少し離れた所に座った。

 

でも、ママは緊張した面持ちで、パールを見つめていた。

 

「パール、長旅だったけど、危険な中、無事に帰って来てくれてありがとう。

 

天国のパパも、きっと喜んでくれていると思う。

 

パールにやっと会えたってね。ずっと、あなたを待っていたから…

 

ただ、ここは危険な場所。

 

あなたが、ここにいて無事に暮らせるか、ママは心配しています。

 

あなたは、オパールおばさんと一緒に、MFiエリアに戻った方が良いと思う。

 

昨日の集まりで、あなたの存在を多くの人が知ったから…。

 

いつ、誰に狙われるかわからない…。

 

あなたは、お友達に会えると思って楽しみにしていたと思うけど…

 

どうやら、それもできそうにないの… つらいと思うけど…

 

あなたがMFiエリアで勉強して、将来なりたいことを見つけて、

 

帰ってくるのなら、私はそれでいいと思う。

 

そのころには、今より治安が良くなっているかもしれない… 」

 

ママから急に言われたことが、まだよく理解できていないパールは、不満気だ。

 

「デモ ママ。

 

ワタシ アイタイヒト イル。

 

マダ アッテナイ。

 

MFiエリア イッタラ モウアエナイカモ… 」

 

ママは悲し気な顔をして、パールを抱きしめた。

 

「ママだって、つらいの。

 

あなたの希望が、かなえられないって言うことがね。

 

でも、ここは危険なの。パールもよくわかってるでしょ?

 

爆弾騒ぎは、いつものことだし、急に銃撃が始まることだってある… 」

 

困っているママを見かねて、デビッドおじさんがパールに声をかけた。

 

「今、このエリアの住民が使うネットは、統制が厳しくて自由に使えない。

 

でも、おじさんがこれから交渉して、MFiエリアとオンラインでつながるよう働きかけてみるよ。

 

君が友達とリモートで話ができるまで、時間はかかると思うが、待っていて欲しい… 」

 

パールは訴えるようにキラシャを見たが、キラシャはどうすることもできない。

 

パールには、どうしても会いたかった人がいるのに…

 

でも、キラシャだって、タケルに会ったとは言え、話もできる状態ではなかったのだ。

 

突然、背中に銃口を突き付けられた時の恐怖を思い出して、会わない方が良かったのかもと、いつかパールと笑って話せる時が来るといいなと思った。

 

まだ納得はしていないパールの一方で、マイクは少し希望が持てたような顔になって、ケンに言った。

 

「モシ パール MFi イクナラ

 

ボク パパト ハナシテ イッショニ イク!

 

ママ オコッテル。

 

ココ アブナイ。ハヤク アンゼンナトコ イキナサイ。

 

リョヒ オクル ダッテ! 」

 

ケンはびっくりして、マイクに尋ねた。

 

「でも、マイクのパパはどうすンの? 

 

マイクの保護者がいないと、MFiエリアに帰れないよ… 」

 

デビッドおじさんが、マイクに声をかけた。

 

「ちょうど良かった。おじさんも、これからMFiエリアに行くことにしたんだ。

 

マイクのお父さんに相談して、おじさんが保護者になって連れて行ってあげるよ。

 

しばらく、マイクはおじさんが預かることになっていたからね」

 

マイクは、うれしそうにうなずいた。

 

結局、その夜にホテルの爆破は行われなかった。

 

ただ、通路で銃を撃ち合う音は、その後も何度か聞こえ、そのたびに4人の子供はお互いの身体をすり寄せ、鳴りやむまで耳を手で押さえた。

 

キラシャは、こんな音も、タケルは聞こえないのかなと思いながら…

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第21章 同じ時を生きる君に ⑮

2021-02-01 16:10:42 | 未来記

2021-09-14 22:43:00 | 未来記

 

15.司法取引

 

防衛軍の輸送機は、基地の定位置に降り立った。

 

ドローンが進化した航空機なので、移動する音は静かだ。

 

11人の少年は、すぐに基地の会議室へ移動させられた。

 

牢屋にぶち込まれると思っていた少年達は、かえって警戒した。

 

全員手錠をされたまま、会議室の椅子に座らされ、手錠は椅子につなげられた。

 

銃を持った兵士達が見守る中、しばらく待っていると、防衛軍の上官らしき人が先頭で、兵士が何人か入って来た。上官の胸には、バッジがたくさん輝いていた。

 

「君達、ご苦労だったな。君達の戦いは、空からの映像で見ていた。賞賛に値する。

 

 たったこれだけの少年が、無頼漢ばかリそろった大人を大勢倒すとはな。

 

いろいろ聞きたいことがあるが、協力してくれるかね? 」

 

少年達は、思っていたのとずいぶん様子が違うことに、戸惑いを感じた。

 

「君達の立場は、微妙なところなのだ。

 

このまま、無断転送の件で取り調べを行っても良いのだが、君達の使った戦略に、私達は興味を持っている。

 

君達は、司法取引を知ってるかね…? 」

 

MFiエリアのルールの授業で、その言葉を覚えていたタケルが言った。

 

「はい。犯罪で実刑を受けた人でも、社会にとって有益なことに協力することで、刑を受けなくてもよくなることだったと思います…」

 

「そうか。わかる子がいるなら、話が早い。

 

君達が、こちらの言うことに理解を示してくれたら、その手錠を外すことも可能だ。

 

さて、君達はある女の子の魔法で、すぐにでも消えることができるそうだね。

 

君達の仲間で、宇宙船に残っていたニックという少年が、話をしてくれた」

 

それを聞いた少年達は、口々にニックを罵った。

 

「あいつ、しゃべりやがったのか… 」

 

「なんだよ。いっつも、勝手なことばかりしやがって… 」

 

「自分が助かりたくて、オレらのことバラしたのか…」

 

それを聞いていた上官は、手を振って話を続けた。

 

「君達が誤解しないように言うが、

 

ニックという少年は、まず自分のやっていた犯罪を白状した。

 

地球に転送した君達が、同じような犯罪に関わっていたとも言った。

 

だが、それを強要したグループから、暴力を振るわれ、逃げると連れ戻され、しかたなくやっていたことも、くわしく説明した。

 

彼は、ラミネス宇宙ステーションに戻って、これから裁判にかけられる。

 

その時、そのグループのことや、君達のことも発言するだろう… 」

 

少年達は、言葉を失った。

 

「君達も、彼と同じように、これから裁判を受けなくてはならない。

 

ただ、君達の戦い方が、わが防衛軍にとって、有益なことをもたらすかもしれない。

 

君達は、女の子の魔法が功を奏したとはいえ、味方に犠牲も出さず戦った。

 

しかも君達より、腕力のある大人をひとり残さず、動けないように縛り上げた。

 

全員が未成年だというのに!

 

まぁ、まずは君達の刑罰が確定してからでも良い。いくら悪い奴に強要されたからと言っても、君達のしたことで、被害届も出ている。

 

今、ラミネス宇宙ステーションでは、これまでにないくらい犯罪が多発しているのだ。

 

多くの子供達が犯罪に巻き込まれ、行方不明の子を探す親が、何人も捜索願を出している。

 

君達もその1人かもしれない。

 

君達を手下に使っていたグループは、すでに捕まっているが、君達の証言で、より重い刑罰を与えることができる。

 

被害を受けた人達への、罪を償う気持ちで、裁判に臨んで欲しい。

 

そのあとで、君達が素直に実刑を受けて刑務所に入るか…

 

それとも、君達が防衛軍に役立つような働きをしたいと希望するなら、

 

その道も与えてあげよう。

 

もちろん、君達を探している親との話し合いも必要だ。

 

よく考えて決めたまえ… 」 

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