目覚ましの音でふと起きた。
が。
睡魔に負け2度寝。
しばらくして母親の怒鳴り声で起きた。
急いで起き、着替え顔を洗って家を飛び出した。
後方から母の「食事・弁当」と声がするがそれどころでない。
「やばい。遅刻するかも」と急いだ。
僕の教室には良く遅刻する3人がいて、(当然ぼくも)一番多
い人が月末発表され教室の大掃除をすることになっている。
道路より少し近道になる、川沿いの道だが狭いので気をつけな
ければいけないが仕方ない。
時計が気になり、見ていると、前から人の来る気配がした瞬間
激突!!
2人は川の方の坂道を転がり落ちた。
あーこれで絶望だ。
そしてぶつかった相手も起きてきたが、私服だから学生ではな
いみたいだ。
でもまだ若い「大丈夫ですか、すいません」と誤ったら
笑顔で「大丈夫。あなたは」「大丈夫です。学校遅刻するけど」
「あなた四中ね。何年生?」「1年生です」
「私2年生」「へーだってこの時間に私服で」と気になって言った。
「病気で休学してるの。癌なの」とサラッと言われびっくりした。
「癌は嘘だけどね。でも休学で来年また2年生かも、同級生ね」
と笑いながら言っている。
その時良いことを考え、学校に電話して風邪で休むと伝えた。
彼女は、立って川のほうに行って、座って川を見て僕を呼ぶので行った。
「ねーこの川最近汚くなったと思わない?」と言われ、確かに
汚くなった。
「確かに汚い。前は泳いだり、魚取ったりしてたけど」
「この川の上流は綺麗なのよ。どうせ行くところは無いんだから」
確かに学校も家も行けない。
「どうしてゆくの」と聞くと、「向こうを電車が川沿いに走ってるジャン」
と言われたら確かにJRが走っている。
「行きましょう。あなた名前は何と言うの」「前田 準之助」
と言ったらまた大笑いしている。
「準之助は良い名前だけど、ジュンと呼ぶわ。私はユウと言って」
駅まで行ったけど、学生服はおかしいのでパーカーを出し、かばんと
帽子はコインロッカーに突っ込んだ。
ユウは切符を2枚買っていた。
渡された切符には560円と書いてあるが、お金が足りない。
ユウはまた笑いながら、「お金は大丈夫よ、お年玉一杯貰ったから」
ついでに売店で何か買ったら?どうせ朝ごはんまだでしょう」
と言われ、ジュースとパンを買った。
「割と遠いのよ、準急でも1時間以上かかるの」と言ってから
馬鹿話しながら、2人で大笑いしながら。
ユウって明るいし話も面白いなーと思いつつ。
やがて駅に着いた。
川のほうは山や林しか見えない。
駅前はまずまず開けているが田舎である。
早速川を見にいった。
上流は細くなり、やはり水は綺麗。
魚も泳いでいる。
しばらく黙って見ていた。
「どう綺麗でしょ。いつもの川と思えないでしょ」「うーん、綺麗だけど
ここはどのあたり?」「群馬県よ」と聞いてびっくり。
、
しばらくして「もうお腹すいたでしょ」「うん」と言い、駅のほうに向かった。
駅前には古い食堂が2軒あったが、ユウは「コッチコッチ」と呼んでいる。
少し離れた幹線道路沿いにファミレスがあった。
メニューを見ると美味しそうな物が一杯載っているが高い。
「何でも食べてね。太っ腹よ」とユウが言うから、
「この食べやすそうな焼肉セットで良い」と言うと、注文を聞きにした時
「この圧肉のステーキセットとピラフ」を頼んだ。
僕が圧肉のステーキセットをじっと見ているのを見ていたのだろう。
驚いて声も出ない。
母親でもそこまで気は回らない。
ユウを見ると笑顔で「いいでしょ」と言われた。
ファミレスでこんなに凄い物食べたことが無い。
おまけにフリードリンク。
がつがつ食べた。
ユウは理想の母親のように、にこにこして見ている。
ドリンクも4杯飲んだ。
店を出てそろそろ帰ることになり、JRに乗った。
しばらく話をしていたが、食べて社内は暖かく、寝てしまった。
肩を叩かれ目を覚ますと、ユウはいなく、コップの下に切符があった。
探したがどこにもいなかった。
それ以来ユウと合った事は無い。
しかし「どんなときも笑顔」「無償の優しさ」は社会人になった私も
出来る限り行っている。