国立劇場で『梅初春五十三(次)』を観てまいりました。
”次”という漢字は違うのですが、変換がうまく出来ず、
多分昔の漢字だと思います。
歌舞伎と言えば、昔私が宝塚にいた頃、まだ片岡仁左衛門さんが
孝夫さんであった頃、とにかく大ファンで、一人で京都の南座や
歌舞伎座はもちろんのこと、東京公演中でも、新橋演舞場など
当日券を並んでまでも、観せていただいていたものです。
玉三郎さんとのT・Tコンビの美しさは、宝塚とまた違った世界を
味あわせていただいてました。
それ以来の歌舞伎観劇。
特に注目する方も無く、歌舞伎座ではなく、国立劇場に伺うのも
初めてでしたので、全体を冷静な目で見せて頂きました。
まずロビーに入ると鏡獅子の等身大のお人形、そして写真のような提灯で
初春らしい華やかな雰囲気。客席もお着物の方が多く、
落ち着いた年代の方々が、開演をまだかと待ちわびている雰囲気です。
尾上菊五郎さんはじめ、坂東三津五郎さんと有名な方々のお上手なことは
言うまでも無いことですが、とにかく声が素晴らしい!
時蔵さんの女形も含め、お腹からの発声が鍛え抜かれた業(わざ)と
呼ばせていただくほど、自由に響きのいいところでなめらかに抑揚をつけて、
感情をのせて、それでいて、端々まで聞こえる明快な言葉と口跡の良さ。
どのお役の方もその基本が素晴らしく、日本の伝統芸能の奥の深さを
改めて実感いたしました。
お腹の底から響く声で重量感のあるセリフ、動き、目線、表情は、
品格もあり、歌舞伎役者さんらしいと見とれるほどですが、
場が変わって、軽いお笑いの場面では、声・表情・ダンスのような
軽やかな踊り。ひょっとこも負けそうなお顔の変貌ぶり・・・
この方々はいったいおいくつ?と言うほどの身軽さで動かれます。
途中化け猫の場面では、なんとあの菊五郎さんが”パラパラ”風の
踊りをご披露。それもとってつけたようなリズムではなく、自然に
こなしていらっしゃいますし、日本舞踊だけではなく、いろんな
ジャンルに挑戦し、受け入れていらっしゃる賜物だとまたまた
感心いたしました。
今回は、五十三次ものということで、場面数が多く、仕掛けも
セットも衣装も豪華で、ある意味大変そうです。
上演時間は、休憩含めて約5時間。
でも、飽きなかったのです。お一人で何役もされる役者さん達。
今回初めて、イヤホンガイドを聞きながらの鑑賞したのですが、
このガイドさんがまた素晴らしい!ライヴでの説明なので、セリフを
おっしゃる役者さんのお名前を次々、間良く説明してくださったり、
難しい、今では使わないセリフ回しの解説、物語の説明の他、
セットの意味、衣装のこだわり、当時はこうだったが、いまでは
こうなった、とか知らないことをわかりやすく、でも親しみやすく
何時間もつまることなく、休み時間にも説明してくださる素晴らしい
ものです。もし、歌舞伎鑑賞に行かれる際には、ぜひイヤホンガイド
聴いてください!今までの見方と違った楽しみ方が出来ると思います。
ひとつだけ、これは宝塚の方が・・・と思ったのは、
御殿山の場面での、桜吹雪の中の大立ち回り。
歌舞伎の立ち回りは、形で見せるということで、絶対刀や道具を
合わせないようにされています。ただ、あまりに間合いを気にしすぎて
立ち回りなのに、早く相手の背後に回りこみすぎて、刀が来るまで
待っていたり、(これでは、とっくに倒されてしまうでしょう、という
場面がいくつもあり)、迫力がちょっと・・・
宝塚の立ち回りは、実際に小道具を合わせてやりますので
練習中に折れて飛んでいったり、危険な分、気合と呼吸で緊迫感が
あります。まあ、見せ方が違うだけなのですが、女性なのに
よくあそこまで頑張っていたな、と今更男役さんたちに拍手です。
なんにしても、久しぶりの歌舞伎観劇。
ぜひ舞台を目指す方には、観ていただき、声の出し方、立ち居振る舞いなど
勉強していただきたいと感じた貴重な時間でした。
今度は、ぜひ仁左衛門さんを観に行かせていただきたいと思っています。