今日は賢治である。
ちぎれ雲ちいさき紺の甲虫のせなかにうつる山かひのそら 宮沢賢治
「ちいさき」は古文では「ちひさき」であろう。資料の編集者が間違ったのかもしれないが、わたしはこれを賢治自身の表現ととりたい。
「ちひさき」とするより、「ちいさき」がより甲虫の小ささ、愛らしさを感じさせる。小さな甲虫の背に映る、大きな山間の空。
古いものにこだわりながら、新しい時代を呼ぶ風に、人類の希望を見出そうとしていた賢治の高き願いも感じるのである。
ゆきすぎて振り向く風をあふぐ身の目にも映らむ明日の大空 揺之