あれが阿多多羅山、
あの光るのが阿武隈川。
かうやつて言葉すくなに坐つてゐると、
うつとりねむるやうな頭の中に、
ただ遠い世の松風ばかりが薄みどりに吹き渡ります。
この大きな冬のはじめの野山の中に、
あなたと二人静かに燃えて手を組んでゐるよろこびを、
下を見てゐるあの白い雲にかくすのは止しませう。
高村光太郎の詩から引用した。
男女の彼我の融合の快への憧憬が強く描かれている。
それは天上の幸福ではなく地上の幸福なのだ。
この世界に生きている者だけが味わえる、地上の幸福。
つないでいる手が強い。
詩はもっと長いが、この部分が快いのであげた。
たはぶれて吾妹の喉にふれみればながるるもののあつきにゑひぬ 揺之