競馬マニアの1人ケイバ談義

がんばれ、ドレッドノータス!

女神「女神の一番長い日」2改定版

2017年06月25日 | 女神
 再びストーク号のコックピットです。
「うわっ、こりゃあ生存者はいないんじゃないか?」
「いや・・・」
 人影が、巨大な人影が炎と煙の中に立ってるのです。その身長は50mはあるみたいです。ヘロン号の隊員がそれを見て、
「な、なんだ、あれは? 人なのか?」
「おいおい、巨人が乗ってたのかよ?」
 巨人は女性のフォルムです。ストレートなダークグリーンの長髪は、腰のあたりまで伸びてます。首からつま先までワンピースのくすんだ銀の服を着てます。何か声が響いてます。巨大な宇宙人がしゃべってることは確かなのですが、それは地球人には理解できない言語です。隊長が隣の隊員に命令です。
「自動翻訳機を」
「はい!」
 ヘロン号が巨人の真後ろから前方に廻り込んで行きます。そしてついに顔が見えました。なんとその顔は、巨大な眼が1つだけ。鼻はなく、口は裂けるってほどではありませんが、かなり大きいようです。
「うわっ」
「気持ちわるいあ~」
 今度はストーク号の隊員。
「自動翻訳機、用意ができました!」
 ストーク号が一つ眼の宇宙人の前で空中停止しました。宇宙人は再び何かを訴えてます。声からして、やはり女性のようです。
「なんで、なんで撃った? なんで我々を攻撃した!」
 隊長はその質問に答えました。
「スペースステーションの攻撃か? すまないことをした。謝罪する」
「ふざけんな! この船には5千もの難民が乗ってたんだよ! なんで撃ったんだよ! この星は警告もなしに撃つのかよ!」
 一つ眼の宇宙人は右手を引き上げました。その手は地球人と同じ5本指で、親指と人差し指で拳銃の形を作ってます。隊長はそれを見て、
「バリア!」
「はい!」
 人差し指の先から強烈な光弾が放たれました。その光弾がストーク号に向かって行きますが、的中する寸前、魔法円が現れ、その光弾を弾きました。これもヴィーヴルから供与された武器の一つのようです。ヘロン号の2人の隊員はこの攻撃を見て、怒り心頭となりました。
「隊長!」
「くそーっ、ビーム砲を食らわしてやる!」
 ヘロン号の腹から1つの砲塔が現れました。ビーム砲の砲塔です。
「待て!」
 隊長からストップがかかりました。
「え、ええ~? で、でも・・・」
「隊長、撃たせてください!」
「まあ、もうちょっと待て!」
 隊長は再び一つ眼の宇宙人に話しかけました。
「我々はあなたに敵対する気はない。頼む、おとなしくしてくれないか!」
「ふざけんな!」
 一つ眼の宇宙人は両腕をL字に曲げ、両ひじを腋に付けました。その手に光のエネルギーが集まっていきます。隊長はそれを見て、
「ショートジャンプ、スタンバイ!」
「はい!」
 一つ眼の宇宙人はエネルギーを溜めた両手を真っ直ぐ頭上に伸ばしました。次に思いっきりその両手を振り下ろし、両手が水平になったところでその動作を停止。その瞬間両掌を合わせました。すると眩いビームが発生。それがストーク号に向かって放たれました。が、寸前でストーク号は消滅。直後に一つ眼の宇宙人の真後ろに現れました。
 隊長はいよいよ決断したようです。
「仕方がないか、ビーム砲で攻撃しよう!」
 それを聞いてヘロン号の2人の隊員は、ちょっと笑みを浮かべました。
「了解!」
「ただし、出力は20%だ」
「ええっ?」
「隊長、フルで撃たせてください!」
「だめだ、20%で撃て!」
 しかし、ヘロン号の隊員は納得いかないようです。小さく「ちっ」と言いました。と、一つ眼の宇宙人は、今度はヘロン号に向かって指の光弾を撃ちました。
「おっと」
 ヘロン号はこれを魔法円で防ぎました。
「仕方がないな、とりあえず20%で撃とう!」
 ビーム砲の砲塔が一つ眼の宇宙人の方にくるっと回転し、ビームを発射。ビームは一つ眼の宇宙人に向かっていきます。が、宇宙人に当たる寸前、青白いハニカム構造の光のバリアが発生し、そのビームを弾きました。
「なんだ、バリアを張れるのか?」
「くっそーっ!」
 が、宇宙人の真後ろから同じビームが2条飛んできて、その背中を直撃しました。
「うぐぁっ!」
 一つ眼の宇宙人は、悲鳴を挙げて焼け野原に倒れました。
 2条のビームを撃ったのはストーク号でした。ストーク号の腹にはビーム砲の砲塔が2つ縦に並んでおり、それを撃ったのです。
「ナイス、隊長!」
「ふっ、バリアは一方向だけしか張れないのかよ」
 今度はヘロン号がビーム砲を発射しました。
「よーし、こっちも!」
 それが一つ眼の宇宙人のうなじに命中。
「うぎゃっ!」
 ヘロン号はビーム砲を撃ち続けます。一つ眼の宇宙人は這いずって逃げようとしますが、ビームはずーっとうなじを捉えてます。さすがに隊長の横槍が入りました。
「おい、もういいだろう」
 が、ヘロン号はなおをビームを撃ち続けます。隊員がコンソールのスライド式のボリュームを上げました。どうやらビーム砲の出力を勝手に上げたようです。一つ眼の宇宙人は断末魔の声を挙げっ放しとなりました。
「おい、いい加減にしろ!」
 隊長がついに一喝しました。
「ちっ」
 やっとヘロン号のビームが止まりました。一つ眼の宇宙人は完全にグロッキー状態です。これを見てストーク号の一般隊員は青ざめました。
「ひ、ひどいことするなあ・・・」
 と、その隊員の目の前の計器が何かに反応しました。
「む、何か来ます。これは・・・ 自衛隊のヘリコプターです」
「はぁ、自衛隊のヘリコプターだと? ふざけんな。こいつはテレストリアルガードの仕事だぞ!」
 隊長はそう言うと、目の前のコンソールのスイッチを入れました。
「こちらテレストリアルガード! こちらテレストリアルガード! 応答願います!」
 が、何も反応しません。
「ち、ホットラインに反応しない気か? これじゃホットラインの意味がないだろって!
 おい、自衛隊官房、反応しろ! 反応しないと、またあんたの孫娘が熱発するぞ!」
 すると無線から声が聞こえてきました。ちょっと焦ってるようです。
「ま、待て!」
「ようやく反応したか、このボンクラ官房!
 今未確認飛行物体墜落現場にいるが、なんか自衛隊のヘリコプターがこっちに向かってるようだが、なんのつもりだ?」
「それは情報収集だろ」
「宇宙からの侵略行為があった場合、第一に防衛責任があるのは我々テレストリアルガードだ。我々の要請がない限り、自衛隊は動かないて約束だろ?」
「戦闘には直接参加しないつもりだ。我々の目的は、あくまでも情報収集だ」
「そうか・・・ あんたの孫娘、今7歳だったっけ? ふっ、かわいそうにな」
「わ、わかった。ヘリコプターは引き返させる。それでいいだろ」
 無線は切れました。
「わかりゃいいんだよ」
「隊長・・・」
 突然のその隊員の呼びかけに、隊長は振り返りました。
「あの宇宙人の身体ですが・・・」
 ストーク号の眼下、たった今ストーク号とヘロン号に敗れた巨大な一つ眼の宇宙人の身体が消えてました。
「なんだ、消滅したのか?」
「いいえ、縮小です」
 モニターに地面に横たわる人の身体が映し出されてます。服装からして一つ眼の宇宙人のようです。
「我々と同じサイズになりました」
「今まで巨大化してたのか? とりあえず降りてみるか」
 ストーク号が垂直着陸を開始しました。しばらく降下したあたりで、隊長の命令です。
「水平停止!」
「了解!」
 ストーク号は地面から10mくらいで完全停止。ストーク号の腹のハッチが開き、そこから真下に淡い光が2条放たれました。その光がまるでエレベーターのシャフトのようになり、隊長と隊員がゆっくりと降下してきます。これもヴィーヴルから供与された技術のようです。ただ、ヘロン号にはこの機能はないらしく、焼け野原に直接垂直着陸するようです。
 ストーク号の2人は先ほどとは違うフルフェイスのヘルメットを被ってます。この2人が地面に到達しました。と同時に、光は消えました。
「よし、行こっか」
「はい」
 2人が倒れている宇宙人のところに来ました。うなじにビーム砲を喰らったせいか、長髪はボロボロです。隊長が宇宙人の首筋に触れました。
「まだ息があるな。毒と放射能は?」
 一般隊員は計測器をかざして、
「ありません」
「何かあるといけないから、ヘルメットは被ってよう」
「はい」
 そこにヘロン号の2人が到着。2人は先ほどのヘッドアップディスプレイとは違うフルフェイスのヘルメットを被ってます。ストーク号の2人と同じヘルメットです。隊長が命令しました。
「収容しろ」
「はい」
 2人は宇宙人の身体に触れました。そのとき上半身に廻った隊員が宇宙人の身体を表に返したのですが、その瞬間まぶたを閉じている宇宙人の一つ眼をまともに見てしまいました。
「うわっ、きも」
 その発言を聞いて、隊長はその隊員を横目で見ました。フルフェイスのヘルメットのせいでわかりづらいのですが、どうも怒った眼のようです。2人の隊員は宇宙人の両腋の下と両足を持ち、宇宙人の身体を運んで行きました。
「隊長!」
 隊長が振り返ると、ストーク号の隊員が無残な姿を晒した巨大な宇宙船を見ています。その近辺には2mくらいの長さの円筒形のカプセルが散らかってます。隊員はそのカプセルを見て、
「隊長、これはなんでしょう?」
 隊長は1つのカプセルの前でしゃがみ込みました。そのカプセルは一部破れていて、子どもらしき身体が見えてます。
「子ども?・・・」
 隊長は先ほどの一つ眼の宇宙人のセリフを思い出しました。
「ふざけんな! この船には5千もの難民が乗ってたんだよ!」
「この船はほんとうに難民船だったのか?・・・」
「ええ、我々は難民船を攻撃してしまったんですか?」
「ああ、ジェノサイドやっちまったようだな」