弁理士近藤充紀のちまちま中間手続14
拒絶理由 新規性・進歩性
上記刊行物1には、・・シン類汚染物を、空気雰囲気で、温 度250~700℃、あるいは400~550℃で加熱する加熱法による・・ン類汚染土壌の浄化方法が、実質的に記載あるいは開示されていると認めら れる。
したがって、本願特許請求の範囲の請求項1、3~4に係る発明は、刊行物1 に記載された発明であるか、刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易 に発明をすることができたと認められる。
一方、刊行物2の記載(段落~)からみて、・・・体廃棄物も・・シン類汚染物と云えるものであるから、当該・・体廃 棄物を上記刊行物1に記載の方法で浄化することは、当業者が容易になし得ると 認められる。
したがって、本願特許請求の範囲の請求項2に係る発明は、刊行物1~2に記 載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたと認められる。
意見書
本願請求項1によれば、出願当初の明細書の段落番号・・・の表1および段落番 号・・・の表2を参照して明らかなように、加熱温度を550~700℃にするこ とにより100%に近い除去率を実現している。これは、添付資料に示すように、220 ~537℃にわたる沸点の分布を有する各種の・・・の全てに対応できるように、 加熱温度を537℃より高い550℃以上にすることによりこのような高い除去率を達成 したものである。
添付資料を参照して明らかなように、・・・類の沸点は220~537℃ の広範囲にわたっており、引用文献1のような加熱温度が300~500℃程度の方法で は、500℃を超える沸点の・・・類を揮発させることは不可能であり、引用文献 1の方法では、高沸点の・・・類は残留することになる。
これに対して、本願請求項1では、加熱温度を550~700℃としたので、全種類の ・・・を100%近く除去することができる。このことは、引用文献1の記載から 容易に想到することはできない。したがって、本願請求項1は進歩性も有する。
拒絶理由
上記刊行物1に記載された「焼却灰の処理方法」は・・・ 類汚染物を温度550~700℃で加熱するものと云え、かつ、そのときの加熱 雰囲気は空気雰囲気であるものであるから、平成17年7月29日付手続補正書により補正された本願特許請求の範囲の請求項1及び3に係る発明と、上記刊行 物1に記載された発明とを比較した場合、両者の間に構成上の相違点を見出せな い。
したがって、平成17年7月29日付手続補正書により補正された本願特許請 求の範囲の請求項2に係る発明は、刊行物1~2に記載された発明に基いて、当 業者が容易に発明をすることができたと認められる。
意見書
本願発明は、「・・・類で汚染された焼却炉解体廃棄物またはこれを含む汚 染土壌を温度550~700℃で空気雰囲気で加熱することを特徴とする、・・・類で汚染された焼却炉解体廃棄物またはこれを含む汚染土壌の浄化方法。」である。
次に、本願発明の作用効果について説明する。
本願発明によれば、出願当初の明細書の段落番号・・・の表1および段落番号・・・の表2を参照して明らかなように、加熱温度を550~700℃にすることに より100%に近い除去率を実現している。これは、前回の平成17年7月29日に提出 した意見書に添付した資料に示すように、220~537℃にわたる沸点の分布を有する 各種のダイオキシンの全てに対応できるように、加熱温度を537℃より高い550℃ 以上にすることによりこのような高い除去率を達成したものである。
途中省略、
したがって、・・・類で汚染された土壌を浄化できるかどうかは、実際に実験を やってみない限り決して予測できるものではなく、実施例を伴わない引用文献1の記載か らは到底予測することはできない。
引用文献1では、その段落[0016]に、「バグフィルタ捕集灰を加 熱脱塩素化処理したこところ、加熱温度200℃付近から有機塩素化合物の分解がはじま り、350~400℃でほとんど全ての有機塩素化合物を分解することができた」と記載 されており、その実験結果を示す表2および表3を参照しても、加熱温度が500℃に達 した時点で・・・類はすでに検出限界まで除去されており、600℃で加熱した結 果も示されてはいるが、500℃で・・・の量がすでに検出限界にまで除去されて 目的を達した焼却灰に対してさらに確認的に加熱を続けただけのものであって、残存する・・・を除去しようというような技術上の意義を全く有しないものであり、意味が ない。したがって、引用文献1では、沸点が500℃を超えるような塩素化の程度の高い ・・・類を除去することが企図されていないことは明らかである。
以下、1ページ弱続く
補正却下の決定(17条の2第5項のため、実質的には拒絶理由の通知)の上拒絶査定
5ページほどにわたる、意見書に対する反論
数値範囲の相違のみが争点になった。途中、泥仕合のようなやり取りのうえ、結果はでなかった。
この件以降、数値範囲の相違点のみを争点にしてもほぼ勝ち目がない点を強調するようにコメントするようになった。知財の方は、なぜか、数値範囲の相違点に持って行きたがる傾向にある。
実際に実験を やってみない限り決して予測できるものではない、という反論も、この件以降しなくなった。やってみたらいいじゃないか・・・みたいな反論がされて、進歩性なしの説得力に欠けるものであるから。論理的に、「できない」という根拠を探すべきでしょう。