コニタス

書き留めておくほど重くはないけれど、忘れてしまうと悔いが残るような日々の想い。
気分の流れが見えるかな。

Blasted~イアンを生きること。

2009-06-26 10:38:15 | 
前の記事を書いてから、ネットで少し検索してみた。
公演情報は多いんだけれど、踏み込んだ批評は相変わらず少ない。

その中に一つ、かなり詳しいブログがあった。
接してくれるあなたに、ありがとう


ちょっと引用します。

イアンは人と根本的にかかわることが出来ない。外部などいらないからだ。何かをしてほしい、そう常に訴える哀れな人。外部に触れなければ、けれど愛も関係も得られない。イアンは一人だ。

兵士は自覚的にイアンと関わる。兵士は関わることがすべてレイプと死と暴力で構成されている。いや、そうでないと世界は兵士と関わってくれなかったのだ。

ケイトが帰って来る。まるで兵士のことも赤子のこともなかったかのように、シャワー室から。

イアンはケイトに初めて礼を言う。サンキューだろうか?英語だと?あなたに、感謝する。たぶんケイトじゃないかも知れない。見えない。何かを与えてくれる。接してくれるあなたに、ありがとう。

サラ・ケインファンらしい。
「未だ大学生。」って書いてる。
やるなぁ。

このブログ「ヨシナ*シゴト」では、改めてケイトの笑いの超越性についても言及している

とにかく、笑いが良かった。限界で、受け止める。彼女の手法。
俺は死ぬ俺は死ぬといって、哀れっぽく同情を引こうとするイアンと対をなす。


なるほど。
で、我々は、その情けない、受け止められないイアンだ。

しかし、イアンは、ケイトと兵士によって進化する。

イアンは、病んだ現代人だ。
言葉で理解しようとするからずれる~~あ、中島敦

前の記事で書いた、観客が自らの記憶として痛みを共有できるのか、という構造は、実は-今更言うことでもないけれど-イアンと“現実”との関係と相似形を為している。

だから、この劇を見ている我々は、兵士に犯され眼球を喰われるように、劇に犯される、はずだ。
しかし、実際に劇場に本物の兵士が乱入して我々を襲い、やがて劇場そのものが粉砕されるような危険な“演出”が不可能なことは百も承知なので……。

子供の情景」が訴えた世界の無関心。
我々は、見たくない物を、存在しない物にしようとしている。
それは、壁一枚隔てて確かにあるのに。

したり顔で世界を論じ、劇を“鑑賞”し“批評”する。

「暴力が現に存在しているにもかかわらず書き、そして愛しつづけ、希望をもちつづけようと思ったら、それを避けて通ることはできない」

「避けて通らない」ということ。
目を背けないということは、そういう“材料”を舞台に乗せるとか、言葉にするとか言うレベルの問題ではなく、自らの身体にそれを引き受ける覚悟そのもの。

だから、イアンの平安、生きる希望は、こんなところでのうのうと感想文を書いているおまえには、永遠に来ないのだよ、と。

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2 コメント

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みたかった・・・ (kanagon)
2009-06-27 19:59:08
こんにちは~

わたしも21日観る気満々だったのですが、諸事情で観れませんでした(泣)
いろいろと書いてくれてありがたいです。

spac春の芸術祭のパンフレット14ページのサラ・ケインのことが書いてある部分に、
『ダニエル・ジャンヌトー(演出家・舞台美術家)によれば、登場する兵士は、愛とは何かを教えるためにやってきた天使のような存在だという。この言葉は、極限の愛を描き続けて短い生涯を終えたサラ・ケイン自身にも当てはまるかもしれない』(コニタさんの前の日記に書いてありますが)
という言葉が最後にあって、やはり13ページにおおまかなあらすじや暴力的な表現うんぬん書いてありますが、この14ページのサラ・ケインの生い立ちや、上の文章が本来言いたい事を表しているんですね。
(この部分を読んでとても観たかったのですが)
結局観ていないので、何ともいえませんが、「未だ大学生。」という方のブログやコニタさんのブログを読んで、好きなタイプの作品だと思いました。(しかし今はちょっとアレルギー)あ~観たかった。(誤解を多くうむ作品なのでしょうね、しかし西洋の表現は極端ですね)
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おや! (コニタ)
2009-06-28 22:00:32
む~。
私が色々書いてしまったことがkanagonさんの頭の中でどんなカタチをしているのか気になりますねぇ。

“予備知識”無しで行ってしまって翌日まで“残って”しまった人も居たそうです。
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