西加奈子さんの新刊、「くもをさがす」を読みました。
西加奈子さんの小説は数年前に数冊まとめて読んでとても好きになりましたが、
このところ遠ざかっていました。
先日、図書館のお薦めコーナーに飾ってあったので、「あ、久しぶりに読んでみよう」
と、借りてきたのです。
読み始めるまで、それが彼女自身の癌闘病記であることは気が付きませんでした。
あんなに元気そうな人が・・・と、驚きました。
西さんが乳癌の宣告を受けたのは、2021年の8月。
語学留学先のカナダでのこと。そう、世界中がコロナパンデミックに翻弄されて
いたとき。
現地で治療を受けることを決心した西さんが、たくさんの友人や医療関係者の
助けを借りながら、無事に手術を乗り越えるまでの日々が、書かれています。
さすが、作家! 実に丹念に記録を取っていることに驚かされました。そして、
ご自身の心の動きもとても率直に綴られています。
暗く深刻になってもおかしくない内容なのに、それを救っているのが、医療現場
のタフで愛すべき看護師さんたちの会話が、すべて大阪弁で翻訳されていること。
読んでいて、楽しかった(?)。
ずっと以前、2017年6月25日のこのブログにちょっと書きましたが、私も
癌を経験しました。
私は西さんとは真逆の闘病を選択しました。
自分が癌になったことを知らせたのはごく少数の人だけ。肉親は弟だけでした。
私の場合はそれでよかったと思っています。
おかれた環境によって癌との闘い方は違ってきます。
大切なのは、最善を尽くすことだと思います。
この本を読んで、改めて自分のことを振り返ることができました。
未だにトラウマに苦しめられることも、自分がただ弱いだけでなく、当たり前の
ことなのだと救われもしました。