読書とかいろいろ日記

読書日記を中心に、日々のあれこれを綴ります。

第519号 『光圀伝』

2012年10月07日 | メルマガお奨め本

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週刊 お奨め本
2012年10月7発行 第519号
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『光圀伝』 冲方丁
¥1,900+税 角川書店 2012/8/31発行
ISBN978-4-04-110274-9
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♪ 人生楽ありゃ苦もあるさ~ ♪

思わずメロディつけて読んでしまった方、どれほどいらっしゃることでしょう(笑)。
水戸光圀といえば、どうしたってテレビドラマの世界のイメージが強すぎる。
諸国漫遊し、悪者を成敗し、スケさんカクさんが「この方をどなたと心得る!」てなもんで。

でも現実には、光圀自身は諸国を訪ねたりしていない。
副将軍という身分は正式には存在しない。
程度のことは、まあ周知のことであるとして、ではそれ以上に何を知っている?

 
テレビドラマのおかげで水戸黄門は有名だけど、けれどドラマのイメージとは、どうやらかなり違うらしい。
新しい光圀像を、冲方丁が描き出します。


歴史に詳しい人ならば、若いころには傾奇者として市中で暴れまわったこと、詩歌に秀で、学問をよくしたこと、本来水戸家を継ぐべきは兄であった筈だとして兄の子を養子にたてて家督を譲ったこと、等々は知られた話かと思います。


発行人は歴史に弱いので、なんかどっかで読んだなあ程度にしか覚えてなくて、くわしいことはぜんぜんわかりません状態で本書を読み始めましたが、いやもう引き込まれる!
けっこう分厚い本ですが、特に後半は途中でやめられなくて、読了した翌日は仕事に差し支えるほどの寝不足に…(>_<)。

とにかく光圀が魅力的なのです。
水戸随一と呼ばれた美女の母を血を引いた端正な容姿。
父の血を引いた頑健な肉体。
「詩で天下を取る」と決意するほどの才。
人の上に立つ覚悟と、統べる能力。
広い視野と深い洞察。
未来を見据え、義を知る。
水戸家の世子でありながら、なぜ自分なのかと問いつづけ、義を求めて苦悩する。

たぎる血を抑えきれずに暴れまわった若いころ。
紅蓮の衣の兵法者に会う。宮本武蔵。「天地の狭間にあるもの、悉くが師だ」

詩歌に情熱を傾ける二十代。
天下はますます遠ざかる。遠いとわかるほどに近づいた。

二十七で妻を娶る。天姿婉順たる京の雲上人の姫君。
天真爛漫な才女。

そして義。
義は光圀の命そのものだった。

さらに史書編纂。

> 「史書に記されし者たち全て、生きたのだ。わしやお前が、この世に生きているように。彼らの生の事実が、必ずお前に道を示す。天道人倫は、人々の無限の生の連なりなのだから。人が生きる限り、この世は決して無ではなく、史書がある限り、人の生は不滅だ。なぜなら、命に限りはあれど、生きたという事実だけは永劫不滅であるからだ」(309頁)



『天地明察』の安井算哲も登場。
スケさんカクさんのモデルと言われる佐々介三郎に安積覚兵衛も。

登場人物はことごとく魅力的。光圀以外も皆。
でもやっぱり、筆頭は光圀という男。
その一生。
微笑ましいエピソード、豪快なエピソード、心打たれるエピソード。


このメルマガ原稿を書くために、ぱらぱらしているうちに、引き込まれてしまって時間を忘れて読みふけってしまった(>_<)。
あと十回読み返しても飽きない気がする。

『天地明察』を凌ぐ傑作だと思います。



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光圀伝
冲方 丁
角川書店(角川グループパブリッシング)

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